第34話 エリカと初の冒険3
気候の変化で少し体調を崩し、投稿が遅れました。
皆様、体調にはくれぐれもお気をつけくださいませ。
「やっぱりカズサさんの筋力って、その見た目通り凄いんですね・・・。」
敬意と驚きと若干の呆れが入り混じった声を上げるエリカ。
何でそんな声を上げたかと言うと、野盗の根城と思われる70年以上も前に造られたらしい帝国の小さな砦を目視しできる程の距離まで近づいたところで、入る為の門口の少し横の壁に、俺が錬金して向かって来た野盗達目掛けて放り投げた槍が深く突き刺さっているのが見えたからである。
もっとも、そのため頭を含め砦に残っていた賊達が全員、槍が突き刺さった壁の周りに集まって騒いでおり、赤い毛並みをした狼のモンスター赤い狼も野盗達の頭の側にいる。
どうでもいいが、野盗の頭はイメージ的に背が高くて強そうと言うイメージがあるが、この野盗の頭は残った5人の中では一番背が低く、小太りだ。よく、あんな見た目で野盗とは言え、トップに立てたな・・・。
咄嗟にエリカと共に木の陰に隠れ、「これからどうしますカズサさん?」と彼女が尋ねて来たので、どう行動するべきか思案しようとしたところで、赤い狼が吼えだした。
狼のモンスターと言うだけあり、鼻が利く様である。臭いで俺達に気付いたのだろう・・・。
「んあ?何だ赤いの、もう腹が減ったのか?ほらよ、しっかり食えよ。」
しかし、野盗の頭は赤い狼がエサの催促をしたと受け取ったらしく、懐からそれなりの量の干し肉を出して、赤い狼の近くに放り投げた。
すると赤い狼は吼えるのを止め、尻尾を振りながら干し肉を咀嚼し始めるではないか!!
ええ?!あの狼が吼えていたのって俺達に気付いたんじゃなくて、エサの催促だったの!?
ひょっとして、あの狼、バカ犬ならぬバカ狼なのでは・・・?俺がそんな事を思っていると、
「チッ、あいつら遅ぇな、応援の合図を聞いて行ってからどんだけ掛ってんだ?」
「ひょっとしたら、捕えた相手が良い女で楽しんでんじゃないですかね?」
「ああ?もし、そうなら、あいつらがヤリ過ぎて壊れちまったらどうすんだ!売ればよい金になるのかもしれないのによ!」
「全くそうですね。これだから考える頭のない奴らは駄目なんですよ。だから何時まで経っても程度の低い賊どまりなんですよ。」
「全くだな。俺達みたいにしっかり脳みそを使わねぇとデケェ事は出来ねぇよな。ハッハッハッ」
端から聞いてると、どちらも程度の低い馬鹿なやり取りにしか聞こえず、所詮は低レベルな賊の集まりの様である。
それから間もなく、しびれを切らした賊達が砦の中に戻り、砦の要所に見張りを立てるような気配すらない。
どうやら、この砦を根城にしている残った賊達は赤い狼も含め、バカしかいないらしい。
よくこんなのでCランクの冒険者パーティーと帝国の警備隊を返り討ちに出来たモノである。
それだけ戦闘になると赤い狼が厄介という事なのだろう。
「カズサさん、どうします?このまま踏み込みます?」
思案しているとエリカがどうするのか尋ねて来たが、尋問した野盗の証言通りならば、未だ囚われている女性達がおり、こういう連中はヤバくなった間違いなく女性達を人質にするだろう。
その前に、正面から踏み込んだら待ち構えていたなんて事もゼロとは言えないから、まずは砦の周りを探索して、別の場所から忍び込めるところが無いか調べてみようと提案してみた。
エリカも俺の案に賛同してくれたので、まずは砦の周りを調べてみる事にした。
周りを回って一通り目を通すと、砦の正面から見て左側の奥で大きな大木の枝が砦に近づいているのを確認した。
それ以外、これと言ったモノは見当たらず、当然ことながら忍び込めるような場所はなかった。
「・・・これは正面から突入しないといけませんね。」
すでに決死の覚悟を決めた様子のエリカが、そう言ってきたが、
「いや、ここは先程、見た砦の奥でかなり育っていた大木を利用して、そこから砦の最上階に忍び込む。」
「え?!あそこからどうやって砦の最上階に忍び込むんですか!?」
俺の発言に、エリカは目を丸くして驚いたが、百聞は一見に如かずで、俺は彼女を連れて砦の左奥に向かった。
その場に来て、エリカは大樹と砦の距離や最上階の距離を見て、
「やっぱり無理ですよ。いくら大樹でそれなりに太い枝が砦近くまで伸びており、その先の最上階の部屋の窓があると言っても、常人が跳んでいける距離じゃありません。」
「まぁ、常人じゃ確かに無理だろうな。常人じゃ」
俺は常人のところを強く主張しながら肩を竦めた。そんな俺の様子にエリカは困惑した表情になったが、次の瞬間、俺は「失礼」と一言詫びを入れて、彼女を俗に言うお姫様抱っこで抱え上げ、彼女が何か言う前に砦の壁へと勢いよく跳んで壁を蹴って大樹の方へと跳躍し、今度は大樹の中部を蹴って、砦の上部の壁へと跳躍し、同じ要領で大樹の砦に向かって伸びているそれなりに太い枝の上へと跳び、そのままの勢いで最上階の窓へと跳躍し、そのまま俺達は最上階の部屋へと入った。
この世界の常人の4倍の能力がある俺ならば、こんな忍者のような事ができるのではないかと思ったが、やっぱり出来た様である。しかもエリカと言う女性一人を抱きかかえていても難なく出来た。
そう考えると、神々が意図的に与えたチート能力ではないが、この常人の総合能力4倍と言うのも十分に凄い能力である。
事実、抱きかかえたままの状態のエリカが信じられないと言う表情で俺を凝視している。
正直に言うと、今の俺の身体能力も含め、全ての能力が4倍ならば出来るのではないかと思ったが、こうも容易く出来るとは思わなかった。
何時までもエリカを抱きかかえている訳にはいかないので「エリカ、降ろすぞ。」と一声掛けると彼女も我に返り「お、お願いします。」と返して来たので、彼女を降ろす。
「それにしても凄いですね。私を抱えた状態であんな風にぴょんぴょんと壁蹴りをして登ってしまうなんて・・・ひょっとしてカズサさんって東の方で活動していると言うニンジャと言う存在なのですか?」
「いや、違うが。」
「じゃあ、超人的な強さで自分の肉体を武器に戦うケンポウカと呼ばれる人なのでは?」
「いや、それも違うが」
否定するとえぇ~と釈然としない表情になるエリカをよそに、忍者と拳法家と聞いて、この世界にもこの二つが存在するんだと、どうでもいい事で少し驚いた。
「それはともかく、砦に侵入したのだから、まずはこの部屋を調べてみよう。」
俺は周りを見渡しながら言うと、エリカは「えぇ~、ともかくってそれですませていいのかなぁ~???」とどうも釈然としない様子ながらも、俺の提案自体には拒否はないようだ。
部屋を見渡して気付いたが、部屋の中、結構金や売ったら、それなりの価格になりそうな金目のモノなどが置かれている。
後はいくつかの酒瓶や食い終わった後のゴミなどが散らかっている。
あれ?ひょっとしてここはこの野盗達の頭の部屋ではないのか?
俺は、そんな事をふと思ったのだが、エリカも
「カズサさん、この部屋ってあの野盗達の親玉が私用している部屋ではないでしょうか?」
そう言って来るのだから、この部屋が野盗達の頭の私室で間違いないだろう。
悪党の親玉は一番上にいるのがお約束と言うが、その通りの様である。
まぁ、折角、野盗達の頭の私室に忍び込んだのだから、家探しさせてもらいましょうか
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