第33話 エリカと初の冒険2
当たって欲しくない予感が当たり、野盗達と遭遇してしまった俺達なのだが、俺とエリカがリュックボックスを前にかがんでいる時、野盗達からニヤニヤした笑みを浮かべている気配が伝わって来たのだが、振り向きながら立ち上がって連中をと対面した瞬間、野盗達は俺を見て目を見開き、次に困惑した表情になっている。
まぁ、首から上は儚げな美少女なのに、首から下は筋骨隆々の屈強な漢の腕や胸板がレザーのジャケットから見えていたら、初対面の者はそうなるだろうな・・・。
野盗達も困惑のあまり、
「なんだよありゃあ。」
「俺が知るかよ。首から上と下がおかしいだろ。」
「と言うか、あの筋肉、俺達よりも凄くね?」
「おい、ヤバい奴に声掛けちまったんじゃねーか?」
「色んな意味でヤバいな。」
「顔があんな女顔だから、実は男が趣味とか言うんじゃねーだろうな!?」
「マジかよ?!あいつ、ウホッな奴なのか!?」
「マジ、やべーのに声掛けちまった!掘られるぞ!!」
互いに好き勝手な事を言い始め、しまいには俺が同性愛者扱いされてしまっている。
ふざけてんのかこいつら!!
しかし、もっとふざけてんのは、こいつらの言う事を真に受けたのか少し引いているエリカだった。でも少し顔を赤くしている。ひょっとしてエリカってそういう趣向でもあるのか!?
「カ、カズサさんって、その、ウホッな趣味の持ち主何ですか・・・?」
「・・・そんな訳ないだろ。ちゃんと女が好きだ。」
「あ、そうですか・・・そうですよね。」
何でちょっとがっかりした雰囲気も出すんだよ・・・マジでそういう趣向でもあるんだろうか・・・?
しかし、このままでは話が先に進まないし、俺がウホッな趣味をしていると見られるのも面白くないので、その見た目からして用件は予想できたが、一応、尋ねる事にした。
「そんな事よりあんたら、俺達に何か用か?」
俺の質問に野盗どもは最初の用件を思い出した様で、
「て、てめぇら、有り金とそっちのシスターを置いていーぷぎゃあ!!」
やっぱり予想通りだったので、俺は野盗の話を聞くのを止め、いつぞやの様に足元にあった石を全力で、喋っている野盗の頭に蹴り飛ばし、次の瞬間、野盗の頭部が爆散した。しかし、爆散した野盗の奴、俺達に脅しをかけてきた時、声が震えており、腰が引けていたな。ビビってるならば脅しなんかしなければいいのに・・・。
そんな事を思いながら、別の石を俺から見て左隣の仲間がいきなり殺られて動揺している野盗の頭部に、同じく石を蹴り飛ばし、粉々にすると同時に野盗達に駆け出し、最初に殺した野盗の右隣にいた野盗の頭部に鉄棒を勢いよく振り下ろして粉砕し、そのまま横にいた野盗の首を鉄棒でへし折り、その勢いを殺さないまま、右側の野盗達を蹴りや拳で殴り殺した。
「ひ、ひいいいっ!!」
最後に残った一番左側にいた野盗は情けない悲鳴を上げ、尻もちをつきながらも、震える手で胸元から小さい笛の様なモノを取り出し、勢いよく吹いた。
ピィィィと音が森の中に響いたので、どうやら、仲間を呼んだみたいである。もっとも笛を鳴らした次の瞬間、最後の野盗の頭部も鉄棒で粉砕してやったが・・・。
「・・・カズサさんって、お顔は女である私でも見惚れるぐらいに綺麗なのに、お身体は凄い筋肉をしているだけあって、とっても強いんですね・・・。」
俺が瞬く間に野盗を殲滅したのを見て、目を丸くして感嘆の声を出すエリカ
「まぁ、この筋肉はハッタリじゃないのは確かだからな。それより仲間を呼ばれたから、すぐにでも他の野盗達がやってくるだろうから、直ぐに逃げるぞ!」
「えっ!?このままやって来た奴らも、ぶっ殺さないんですか!?」
ぶっ殺さないんですかっておみゃ、それ、シスターのいう言葉じゃーねーぞ・・・。
エリカの殺る気満々の発言に少し俺の方が驚かされながらも、
「野盗達がどれくらいの規模か分からない以上、過信はしない方が良い。実際、この依頼を受ける時、すでにCランクの冒険者パーティー1つと帝国の警備隊の1部隊を返り討ちにしていると聞かされただろう。ましてや俺もエリカもEランクの新人冒険者なんだ。過信は命取りになりかねないぞ!」
俺の説明に、エリカもハッとなった様で、「そ、そうですね。調子に乗ってすみません。」と力が無い声で謝ると、俯いてしまった。
新人が怒られて、シュンとなる光景は、地球で会社に勤めていた頃にも何度も見たので、
「まぁ、そんなに落ち込む事はないさ。新人なら、こういうミスはある事だから気にするなと言うのは、まだ無理かもしれんが、何時までも引きずっていては、他にもしなければならない仕事にも影響が悪影響が出てくるぞ。ほら、俯いてないで顔を上げて・・・。」
会社でしていた様に、そうフォローしながら、エリカの頭に手をやって、顔を上げさせた。
顔はまだ元気がなさそうだったが、無理矢理でも顔を上げさせてやると、気持ちも多少は上がったのか、先程よりはマシな顔となり、
「さぁ、何時までも、そういう辛気臭い表情をしてないで、こうやって無理にでも笑え。」
「ちょ、ちょっとカズサさん?!」
エリカの口元に指をやり、いきなりの事に慌てる彼女を無視して端を持ち上げて無理矢理、笑っている様な表情にしてやる。
「ほら、こうやると笑っている表情になるだろう。」
「分かりました!元気もやる気も戻りましたので、手を離してくださいカズサさん!!」
異性に触れられて恥ずかしいのか、赤面しながら慌てふためきながら、叫ぶ様に言うエリカ。
どうやら、先程までの落ち込み様は吹き飛んだみたいである。
これならば、大丈夫そうなので指を口の端から離すと、
「うう、私が悪い上、顔はとても綺麗とは言え、男の人にいきなり口の端を持ち上げられるとは思いませんでした・・・。」
口元に手を当てながら、ちょっと睨むほどではないが俺をジト目で見るエリカ。
「元気もやる気も戻ったのならば、さっさとここから逃げるぞ。」
「・・・は~い、了解しました。」
そんな彼女を無視して話を戻して指示を出すを俺に、少し不満そうな声色を答えるも素直に指示に従うエリカ。しかし、遅かった様で、
「あっ!!あいつらの死体がある!さっきの呼び笛を鳴らした奴を殺ったのはあいつらだなってなんだよ片方の姿は?!」
森の奥から手に安物の剣や斧を持った野盗達が10人ほど駆けて来たが、俺の姿を見て先頭の男が困惑の表情を浮かべ、足を止めた。
まぁ、あの野盗の困惑も分からないでもないが、こちらにとってはチャンスなので、近くに落ちていた野盗の剣や、合計4本を急いで拾い、スキルを使って鉄の槍を製造すると、そのままの勢いで足を止めた先頭の野盗目掛けて、全力で槍を放り投げた。
「え?」
この世界の平均な総合能力の四倍の俺が投げた槍は凄まじい速度と速さで先頭の野盗に向かい、自分に向かって来たモノが何か理解できない声を出した次の瞬間、この男の上半身は爆散し、その後ろにいた六人以上、野盗も巻き込んで粉砕し、そのまま遥か後方へと消えて行った。
「え、ええ~~~~~っ!?」
生き残った野盗だけでなく、味方のエリカまでドン引きした表情で絶叫する中、俺はまだ生きている野盗達に襲い掛かり、手にした鉄棒で頭部を粉砕し、先程笛を吹いた野盗の様に腰を抜かしている野盗一人を残して殲滅してやった。
「な、何なんだよ?!何なんだよお前ら!?まさかS級冒険者のパーティーか?!それとも帝国が誇るシュバルツァーナイツか!?」
腰を抜かし、明らかに混乱して喚き散らす野盗の胸元を掴んで無理矢理立たせ、
「ただのEランクの冒険者だよ。」
「Eランク?!Eランクの冒険者だ!?ふざけてんじゃねーぞ!!Eランクの冒険者にこんな芸当、出来るモノか!!」
「実際、やってるだろうが。まぁ、そんな事はどうでもいい。お前らって後何人ほどいるんだ?アジトは?すでにCランクの冒険者パーティー1つと帝国の警備隊の1部隊を返り討ちにしたと聞いたが、数の力で返り討ちにしたのか?どうなんだ?」
「な、何で俺がテメェの質問に答えなければならねーんだ!!言う訳ねぇーだろボケが!!」
これだから見るからに頭が悪そうな馬鹿は嫌なんだ。状況が全く理解できていない。
仕方が無いので、軽く拳を顔面に3発叩き込んでやると、鼻がつぶれ、歯も3~4本折れて血まみれになったがおとなしく素直に答えてくれる気になった様だ。
こういう輩にはやっぱり身体で教えるのが一番の様だな。
「お、俺達は頭を含めて30人近くいたんだが、あ、あんたが大半を殺してしまったから、あ、後は頭を含めて5人程くらいしかいないはずだ。」
「お前らのボスを除いた、その4人が側近って訳か?」
「そ、そうだって言っても別に俺達よりも使えると言う訳じゃなく、単に頭に取り入るのがとてもうまいだけなんだが・・・。」
不快気に言う様子から、この男も内心、不満に思っていた様だ。
「で、そんなお前らがどうやってCランクの冒険者パーティー1つと帝国の警備隊の1部隊を返り討ちにしたんだ?数の力か?それとも多少は頭が回る奴がいて罠にでもハメたのか?」
「ち、違う、返り討ちに出来たのは”赤い狼”がいたからだ。」
「赤い狼?何だそりゃあ?」
いきなり出て来た固有名詞に俺は首を傾げたが、エリカはそこそこ驚いた様子を見せたが、直ぐに納得した表情になり、野盗の男に代わって俺に説明してくれた。
「あ~、どうやらカズサさんは知らない様なので、説明しますと”赤い狼”は名前通り赤い毛並みをした狼のモンスターで、狼よりも倍の大きさをしているのですが、走る速さはなんと3倍の速さで、ヒット&ウェイを得意とするそうです。S、Aは勿論の事、B級の冒険者ならば手こずる相手ではありませんが、C級の冒険者パーティーならば厄介な敵となるでしょうね。更にその上に野盗達も10人以上で攻めてくれば返り討ちに合っても納得です。」
どうやら、聞いているとその”赤い狼”と言うモンスターは新人からそこそこのレベルの冒険者にとっては厄介なモンスターらしい。
しかし”赤い狼”と言う名前に3倍の速さで動くなんて、某機動兵器が活躍する宇宙の世紀に長く登場する仮面のイケメンかよ?!
内心で盛大に突っ込んだ俺だったが、まだ尋問の途中だったので会話を続けた。
「それで、お前らはその”赤い狼”をどうやってか手懐けたと言う訳か?」
「お、俺達じゃなく頭だ。元々、頭はこの奥にある帝国が70年以上も前に建てられ、とっくに放棄されて朽ち果てかかっていた小さな砦を根城にしていた数名を従えていた賊だったんだ。
それがどういう経緯で手に入れたか知らないが、そこそこのクラスのモンスターを従わせることが出来る首輪を手に入れ、偶々、根城を襲って来た”赤い狼”をその時の手下のほとんどを犠牲にしながらも、生け捕って首輪を装着させて従わせることが出来たんだ。
そっからだ、その”赤い狼”を使ってこの辺りの同業である最初、俺がいた山賊団などを潰して自分の軍門に下らせてデカくなり始めてきたんだ。」
「そこで俺達が来て、大半を殺っちまったと言う訳か。それにしても帝国にはそういうモンスターを御せる道具があるのか?」
「えっ?いや、それを私に訊かれても、ちょっと分からないです。」
まぁ、こういう質問を教会から俗世に出てきたエリカに尋ねても意味ないわな。
訊く事は訊いたし、これからどう行動するかと思案しようとしたところで、野盗の男が卑屈な笑みを浮かべながら、
「な、なぁ、俺はアンタらの質問に答えたんだ、た、助けてくれるよな?」
そう命乞いしてきたので、一瞬どうしようかと思ったが、話をしている間に殺す気が薄れたのは確かなので、殺すのはやめる事にした。間違っても情が湧いた訳じゃないんだからね!!いや、これは本当に、単に殺すのが面倒になっただけだから。
「助けてやるけど、お前、お縄な。エリカ、こういう犯罪者は何処に連れて行ったらいいんだ?」
「警備隊のところですね。」
「ま、待ってくれ、そうなったら間違いなく死刑で斬首になっちまう!!見逃してくれよ!!」
俺達のやり取りを聞いていた野盗がいきなり大声を出して喚き出してきやがった。それにしても死刑だ?何だ?こいつ、相当に罪状があるのか?
「おい、下手したら死刑って相当に罪状があるって事だろ。お前の犯った事、言ってみろ。」
「な、何でそんな事、あんたらに言わなきゃならねーんだよ。」
震えた声で反抗してくる野盗に、俺は面倒くさくなったので、足元に落ちていた石を拾い上げ、目の前で握りつぶして見せた。
ビクッと恐怖に固まる野盗に一言「言え」と命じると、野盗らしく色々とやらかしている。
移動中の商隊や巡礼中の神官一行などを襲って殺戮略奪は勿論の事、女性への強姦、更に誘拐拉致による強姦の後の殺害や奴隷商人への売り飛ばしなど、聞いているこっちの方が不快になってくるぐらいである。
確かにこれならば死刑になるのも当然だわ。
しかも、こいつの話によれば、こいつらの親分と4人の側近は今も攫って来た女性達を犯して盛り上がっている様である。
訊き終えると同時にエリカが「カズサさん、カズサさん」と呼び、彼女を見ると実にいい笑顔で、
「取り合えず、こいつは殺っちゃいましょう。」
と首を掻っ切るジェスチャーをしながら、そう言って来る。
中々、良い性格をしているシスターである。エリカの言葉を聞いて野盗は「な、話が違う!ふざけんな!!」とまた喚き出したので、
「助けると言ったな。あれは嘘だ。」
そう言うと同時に力を込めて野盗の男の首に手刀を叩き込むと、野盗の首は変な方向に曲がり動かなくなった。
これで喧しい喚き声を聞かなくてすむぜ。
そのまま野盗の死体を放り投げるとまたエリカが「カズサさん、カズサさん」と呼び、彼女を見ると今度は縋る目で俺を見ながら、
「あの、危険だと言うのは理解しているんですけど、このまま野盗の住処に行って、囚われた女性達を助けてあげる事は出来ないんでしょうか?」
そう尋ねてくる。どうやら、今も囚われて慰み者にされている女子達を案じている様である。
「・・・賊のほとんどを殺ったので、助けに行けない事はないが、今聞いた通り、一番厄介な”赤い狼”がまだ残ってるぞ。」
「解っています。カズサさんも私も危険である上に、間違いなくカズサさんに大きな負担が掛ると言うのも理解してます。でも囚われている女性達を見捨てることが出来ないんです。今回の依頼報酬は全部、カズサさんが受け取ってもらって構いませんからお願いします!」
叫ぶ様に言いながら勢いよく深々と頭を下げるエリカ。
俺一人なら、このまま退いただろうが、このまま無理矢理退かせても彼女の性格からして間違いなくトラブルだろうし、下手したら一人で突っ込みかねない。
彼女も新人とは言え、もういっぱしの冒険者なのだから、そこまで気にする必要もないのかもしれないが、レオン達からもよろしくと言われた事もあるし、その前に地球で仕事をしていた時から得た事だが、世の中、助け合いなのも確かなのである。
しばし、思案した後、
「分かったよ。このまま助けに行こう。」
「本当ですか?!ありが「ただし!今し方言った様にまだ一番厄介な”赤い狼”がまだ残ってる。最悪、俺は殺られて、エリカ、あんたも捕まって慰み者にされる可能性も十分にある事は覚悟しておけ!!とう・・・は、はい、分かってます。そうなっても恨み言は言いません!!」
感謝の言葉を言おうとしたのを遮って、そう言い切るとエリカは強張った表情になりながらも強く頷いた。
一応、覚悟は出来ている様である。
なら、もう言う事はない。俺達は残った野盗どもを殲滅して、囚われた女性達を救出するため、奥にある野盗の根城へと向かった。
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