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第27話 熊殺しをした後で 2

また、間が空いてしまいました。申し訳ありません!!

俺とのちょっとしたやり取りをしている間に、怪力熊の変異体の咆哮による”状態異常”が動ける様になったジード達。

 

 村人達はまだ動けない様なので、彼らの”状態異常”回復は出来そうな感じのするジーク達に丸投げにする事にした。

 と言うか出来るよな?

 まぁ、とにかく頼んで見ようと思い、


 「あ~、動ける様になったのなら、悪いが村の人達の”状態異常”回復を頼んでも良いだろうか?」

 

 俺は左親指で後ろにいる村人達を指差しながら尋ねると、ジーク達は「ああ、任されよう。」と頷き、神官のリィアが村人達の元に行き、呪文を唱え魔法を発動させると、村人達は動ける様になり、皆が皆、動ける事もそうだが、怪力熊の変異体が討たれ、助かった事に対して喜び合った。


 それを俺がジーク達の近くで見ていると、ターニャが「カズサさん!!」と凄い勢いで抱き着いて来た。


 「ゔゔ~、カズザザん、あびばどう、ひく、ばたじを守っでぐれた上に、ひく、おどうざんのがだぎもゔっでぐれで~~~!!」


 俺に抱き着き、泣きじゃくりながら叫ぶ様に言うターニャ。

 彼女からしてみれば、怪力熊の変異体は自分の命を狙っていただけでなく、3週間前に村を襲撃してきたとき、彼女の父親を殺した仇でもあるから、他の村人達よりも感慨深いモノがあるのだろう。

 母親のイーニャも含めて村の人達も、それを理解している様で、すまなさそうに俺を見つつも、ターニャを咎める事はしなかった。

 

 俺は彼女を無理に引きはがす事などせずに、落ち着いて泣き止むのをしばし待った。

 ・・・まぁ、そのため、ターニャの涙と鼻水で服の一部がドロドロになったが、まぁ、仕方がねぇはな・・・。




 「・・・すいません、いきなり抱き着いて泣きじゃくった上に、服まで汚してしまって・・・。」

 「あ、まぁ、それはいいさ。ターニャの状況を考えたら、仕方がないだろうし・・・。」


 泣き止んで気持ちも落ち着くと、少し照れた様子ながらも、申し訳なさそうに謝ってくるので、俺はそう返しておいた。

 そこで、怪力熊の変異体を殺る前にターニャと村人達のやり取りに疑問を感じた事があったので、その事を尋ねる事にした。


 「ところでターニャ、この熊公が襲撃してきた時、こいつが村を襲撃した犯人だと叫んだ時、他の村人達は驚いていたようだが、他の村人達はこいつが襲撃犯だと知らなかったのか?」

 「あ、はい、このモンスターは深夜に襲撃してきたので・・・。」


 ターニャの説明によると、この熊公は深夜にターキ村に襲撃し、その時、一番近くにあった村人の家をを襲い、その騒ぎで出て来た村人達を次々と死傷させていったのだが、その所為で村人達がパニックを起こし、松明を付けるなどの明かりをつける事をしなかった上に、この熊公が二本足で立ったり、四つん這いになったりしたりして、より姿が確認しにくくなったそうである。

 ターニャがこの熊公の姿を見たのは両親が外に出た時、自分も気になって遅れて出た時、たまたま、この熊公が二足歩行で立って、両親を襲撃したところを目撃した時、月明かりに照らされて姿を朧げながらも目撃したからだそうである。


 ターニャの説明に俺だけでなくジーク達も村人達も聞き入り、


 「成程、この村がモンスターの襲撃を受けたと言うのは、この地域の警備を担当している警備隊から報告を受けていたが、どういうモンスターに、どの様に襲撃を受けたかまでは受けていなかったのだが、そう言う事か・・・。確かに深夜で灯りも無い状態で、その様な動きをするモンスターが襲撃して来たら詳細な情報が無いのもやむを得ないな・・・。」


 ジークが納得した様子で言った。


 「まぁ、何はともあれ、怪力熊の変異体は死んだから、これで安心、この辺りの治安も回復するんだろう?」


 俺が尋ねるとジークは深く頷いた。

 それを確認してから、今度はターニャを見、


 「これでターニャのお父さんの仇も討てたな。」

 「はい、ありがとうカズサさん!!」

 

 まだ目を腫らしながらも、微笑みを浮かべながら答えるターニャ。そこに「私からも礼を言います。」と、母親のイーニャが少し覚束ない足取りでこちらに歩いて来る。


 「お母さん!!」

 「ああ、ターニャ!無事でよかった!!」


 ターニャが母親イーニャの元に駆け寄ると、ターニャを抱きしめながら、安堵の声を上げた。


 「よかった、よかった」と涙声になりながら、しばし、何度も繰り返し、ターニャも母親の気持ちが理解しているのか、嫌がる素振りなどは見せず、母親の行為を受け入れていた。

 俺達もイーニャの気持ちもターニャの気持ちも理解できたので、落ち着くまで母娘の抱擁を見守った。


 やがて、イーニャの気持ちが落ち着き、ターニャを離すと、娘同様、目を赤く腫らしながらも俺を見ると深々と頭を下げ、


 「カズサさん、娘の命も含め、村の危機も救っていただき、心から感謝致します。ありがとうございました。」


 礼を述べて来た。それに連なる様に村長や他の村人達も皆、礼を口々に述べて来た。


 「い、いや、俺は依頼人を守っただけだから、そう、礼を述べられても・・・。」


 俺の今までの人生、この身体になる前の地球での人生を含めて、こんなにたくさんの人に感謝された事などないので、心地よい気持ちもあったが、物凄く照れくさくもあったので、つい咄嗟にこういう返しをしてしまったが、ターニャ母娘も含め、村人達は気にする者はなかった。

 

 ジーク達は、神官のリィアも含め、俺の心中を理解しているのか、どこか楽し気にニヤニヤと見つめている。


 俺のような善良な小市民を守るのが仕事なのに、何て奴らだ。神官のリィアと言う女もそうだ。神官ならば困っている俺を助けろよ。


 そう思った時、俺はふとイーニャがまだ足を負傷が原因で四苦八苦しているのを思い出し、思わずリィアに尋ねた。


 「あの、すんません。アトレイアさん。」

 「あ、はい、何でしょう?」

 「・・・この娘ターニャのお母さんが、前にあの熊公が襲撃してきた時に、足を負傷してその後遺症で四苦八苦しているので、回復魔法で治療する事って出来ます?」

 「ええ、大丈夫ですよ。・・・そうですか。前の襲撃の時に負傷を・・・。分かりました。では彼女に回復魔法を掛けて治療致しますね。」

 「お願いします。」


 そしてリィアは、当人のイーニャが何か言う前に彼女に手を翳し、魔法を発動させると、イーニャの全身を柔らかな光が包み込み、ほどなくして弾けて消えた。


 それと同時に引きずる様にしていたイーニャの足が常人と同じ動きに戻った。


 「お母さん!足が元に戻っているよ!!」


 とても嬉しそうに言う娘に、イーニャも嬉しそうな表情になったが、すぐに表情を生真面目なモノに変えると、深々と俺達に頭を下げて礼を言って来た。


 「神官様、足の治療、誠にありがとうございます。カズサさんも村と娘を助けて頂いただけでなく、私の足の治療まで神官様にお願いして頂き、誠にありがとうございます。」

 「い、いえ、俺は神官の彼女に頼んで見ただけなので、感謝は神官の彼女にしてください。」

 「いえ、感謝だなんて・・・、エデン教の神官として傷ついた人々に救いの手を差し伸べる事はエデン教徒として当然の務めですから・・・。」


 俺がリィアに振ると、彼女はシレっと微笑を浮かべながら返した。


 俺としてもあんまり感謝されてもむず痒いので、この場の空気を変えるためにも、気になった事を尋ねる事にした。


 「ところで、この熊公、俺が殺ったのは良いが、ギルドにその証拠を提出しないと、俺の功績とならないので、死体は取り合えず、ここに置いておいていいか?」

 

 俺の問いにジークが「いや」と首を横に振った。


 「悪いが、この怪力熊の変異体は、今までにこのような例がない故に、亡骸は調査する事になっているのだ。故にこの亡骸は我々、帝国が持っていかせてもらう。」


 有無を言わせないジークの言葉に、


 「熊公の亡骸を国が持っていくのは良いけど、じゃあ、この場合、俺がこの熊公を殺った事を、どうやってギルドに証明したらいいんだ?」

 「それについては、後で帝国がギルドにちゃんと報告する。」

 「そうか、それならば良いのだけれど・・・。」


 それを聞いてから、今度はターニャに依頼を完遂させたと言う証拠に、依頼書にサインをしてもらおうとしたところで、ふと思いついたので、俺は今回の依頼書を出してジークに、


 「すまないが、この依頼書に、俺があの熊公を殺った事を証明すると言う記載を、あなたの実名入で記入してくれないか。そうすれば、これを提出すれば、俺が口頭で報告するよりも証拠となる。」

 「・・・ちゃっかりしているな。まぁ、ギルドも含め、相手に口頭だけで伝えたところで、信じてもらえるかどうかは分からない以上、小生達のような公の人間の実名入の署名は何よりの証拠となるからな。・・・貴公は有能な冒険者となりそうだ・・・頭の回らない者はそういう事は考えつかないからな。」


 ジークは苦笑しながら、俺が差し出した依頼書を受け取り、携帯しているペンとインクを出して、すらすらと依頼書に、今回の事と俺が怪力熊の変異体を討った事を記載し、後日、詳しく国から説明に赴く趣旨を記載し、最後に自分の名前と相方のカタリーナと神官のリィアにも署名させてから俺に返して来た。


 「これでギルドも、貴公が怪力熊の変異体を討伐した事を受け入れるはずだ。まぁ、その前に貴公がこの村での本来の依頼主に、依頼の完遂のサインを貰い忘れなければだが。」


 皮肉る様に言うが、おどけた様子からしてジークの遊び心なのだろう。俺は礼を言ってから今度は本来の依頼主であるターニャに依頼書を渡し、サインを貰った。


 これで今回の薬草採取の依頼は完遂である。


 「カズサさん、今回は本当にありがとうございました。」

 「いや、俺も良い経験になった。」


 ターニャが可愛らしく頭を下げてお礼を言ってきたので、俺もそう返すと「カズサさん、カズサさん、ちょっと」と俺を呼ぶので何だ?と思いながら顔を近づけると、次の瞬間、チュッとターニャが俺の頬にキスしてきた。


 びっくりして思わず、キスされたところに手を当てながら体を起こすと、


 「依頼だけでなく、私の命やお父さんの仇を討ってくれた事も含めて村を守ってくれた事や、お母さんの怪我の事も含めて、そのお礼だから。カズサさん、物凄く綺麗で、とってもかっこよかったから。」


 ターニャは顔を真っ赤にしながらも、そう言うと薬草の入った篭を持って一目散に家へと駆けて行き、程なくして家の中へと姿を消した。


 そんな俺とターニャのやり取りを村人達やジーク達も優しい目で見ており、ターニャの姿が消えた後、

ジークは真面目な顔になって俺を見て、


 「そういえば、貴公の名を聞いていなかったな。悪いが教えて頂きたい。」

 「・・・怪力熊の変異体を討伐しに行く前に、部下の方にギルドカードを渡したはずだが・・・?」

 「いや、その時は小生は見ていない。故に教えて頂きたい。貴公の口から・・・な。」

 「・・・上総心だ。」

 「・・・上総心・・・か。」


 「上総心」と噛み締める様にもう一度、俺の名を呼ぶと、


 「その名前、確かに覚えた。では、我々も怪力熊の変異体の亡骸の回収の手続きやジード達、部下の警備隊が亡くなった事への報告もあるので、先に失礼する。」

 

 そう言ってジーク達は馬に乗り、一足先に村から出て行った。

 

 さぁ、俺も依頼をこなしたし、明後日、ペパー商会に卸すためのポーションの素材を手に入れたからコナタへ戻るとするか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 投稿待ってましたっ! こういう戦闘が終わった後の細かいやり取りを読むのも面白いです。自分はまだまだ不馴れでさっぱりした文章になってしまいますので勉強にもさせて貰ってます。 立ち位置として…
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