第26話 熊殺しをした後で 1
そこそこの間が空いた上に短いですが、キリが良かったので投稿します。
俺が怪力熊の変異種を倒し、勝利の余韻に浸っていると、声に力のないジークの呟きが耳に入って来た。
「し、信じられん・・・変異種とは言え怪力熊を素手で倒すだなんて・・・しかも、それを成したのが、あんな儚さそうな見た目をした少女だなんて・・・。」
声も震えている気がするが、まぁ、客観的に見たらジークが言う通りだろう。
まぁ、ジークの声を聞いたお陰で、何時までも勝利の余韻に浸っている訳にはいかないと気づいたので、まずは、あり得ないモノを見たような呆けた表情で座り込んでいるターニャの元に駆け寄り、
「大丈夫か?怪我はないか?」
と声を掛けると、ターニャは我に返り「う、うん」と頷いた。
ターニャの様子を確認してから今度は村人達に声を掛けると、村人通しで顔を見合せ、
「あ、ああ、あの怪力熊の咆哮で腰を抜かした時に臀部を強く打ち付けた奴は何人かいるが俺達は大丈夫だ。しかし、あいつらは・・・。」
そう言って答えた村人が首を動かし、俺も含めて、その場にいる者達がそちらの方を見ると、怪力熊の変異種がこの村に跳躍して押し入って来た時、踏みつぶされた三人の村人の亡骸があった。
その遺体を見て嗚咽を漏らす村人が何人もいた。
それを聞き、何とも言えない気持ちになりながらも、最後にジークの元により「あんたらも大丈夫か?」と訊ねた。
「・・・ああ、気づかいに感謝する。しかし、よくそんな細身の身体で怪力熊を仕留めたモノだ。まさか最初に見た時は儚げな見目麗し気な美少女にしか見えなかったが、今は貴女が口調も相まってアマゾネスに見える。」
「・・・悪いが、こんな時に言うのもなんだが、俺は男だ。アマゾネスだの美少女だの言うのは止めてくれ・・・。」
『えっ!?』
ジークの言葉に、俺がそう返すと、ジークだけでなく、この場にいる全員が声を一致させながらギョッとした表情で俺を見た。
「は、ははっ、面白い冗談だとは思うが、こういう場面で言うのはどうかと思うのだが・・・。」
「・・・冗談じゃないぞ。これなら納得するか・・・。」
ジーク達だけでなく、村人達も見れる様に上の服を脱いで、上半身裸になると、
『!?!?』
この場にいる全員がまた目を見開いて驚いた。辛うじてジークが、
「お、驚いた。貴殿、本当に男なのだな・・・。」
震えた声で俺が男だと認める発言をしたので、俺は「ああ、見ての通りだ。」と返して上の服を着直した。
そんな俺を見て「しかし、ギルドカードを見た時は錬金術師と記載されていたが、凄い筋肉だな。騎士である小生よりも鍛え抜かれているぞ。」と感心半分、呆れ半分、僅かな疑心の色を込めて言うジーク。
「まぁ、こんな見た目だからな。パッと見たら見た目の良い儚げな少女にしか見えないから、その所為で起こるトラブルを回避するためにも強靭な筋力は必要なんだよ。」
「・・・た、確かにな・・・。」
俺の返答にジークは物凄く納得した。俺の見た目から同じ男に女と見られて襲われるところを想像したのだろう。顔が引き攣っている。
「・・・話を戻すが、奴の咆哮で動けなくなった身体はもう動くのか?」
「・・・いや、小生も含め我々三人が動ける様になるには、まだしばらく掛かる。」
「・・・ポーションならあるが、それを飲んでもダメなのか?」
「いや、これは”状態異常”となるので、体力を回復させるポーションを飲んでも意味がない。」
「・・・こんな時に尋ねるのも何なんだが、こういう場合、どうすれば元の状態に戻るんだ?」
「確かに危機が去ったとは言え、こういう場面で尋ねる事ではないな。」と苦笑しながらも、説明はしてくれる様で、
「こういう”状態異常”を治すならば、魔法ならば”ファイン”と呼ばれる魔法を掛ける、回復薬で直すならば、その時の”状態異常”に適した回復薬を飲ます事だな。例えば毒に犯されているならばその毒に適した解毒薬を飲む、身体が麻痺しているのならば麻痺取り薬を飲ませると言った感じだ。ちなみに今の小生達も一種の麻痺だから麻痺取り薬を飲めば治るぞ。」
なるほど、”状態異常”とやらはいくつかのパターンがあり、魔法ならば”ファイン”と言う魔法で一発解決だが、薬の場合は状態によってそれぞれ違うと言う訳か・・・。
俺が感心しているとジークだけでなく相方の女騎士も女神官も俺をジッと見ている事に気付いた。思わず「何か?」と尋ねると、
「いや、これらの知識は冒険者でなくとも、それなりに魔術師や錬金術師をしていたら知っている事だが、そうでないと言う事は貴殿は冒険者だけでなく錬金術師としても歴が浅いのだなと思っただけだ・・・。」
「・・・まぁ、モノづくり関係の仕事はしてましたけど、正式な錬金術師ではありませんでしたから。」
嘘をつく必要もないで、そこは余計な事は言わず、地球にいた頃の情報を伝えると向こうも納得した様で「成程」と頷いた。
「おっと、話をしていたら咆哮による痺れが無くなった様だ。」
そう言ってジークは立ち上がり、相方の女騎士も女神官も立ち上がった。
「そう言えば、貴殿にはまだ名乗っていなかったな。小生はシュバルツァー帝国近衛騎士に所属するジーク=トリファーだ。で、こっちが」
「同じくシュバルツァー帝国近衛騎士所属のカタリーナ=エアハルト。」
「私は”エデン教”の高司祭で今現在はシュバルツァー帝国に力を貸しているリィア=アトレイアと申します。以後見知り御気を。」
彼らの所属や名前を聞いても、転生させられた時に備え付けられた知識の1つに”エデン教”の事はあったが、それでもこの世界で幅を利かせている4大宗教の1つという事ぐらいしか知らず、ジークとカタリーナの所属する”シュバルツァー帝国近衛騎士”というのが帝国内でどれくらいの地位なのか知らないので、俺はピンとこなかったが、彼らの名乗りを聞いて村人達の息を飲むのが聞こえたので、結構なえらいさんと言うのは理解できた。
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