第25話 こうなったら殺ッてやるよ!熊殺しだ!!
怪力熊と呼ばれるモンスターの変異種を討伐するためにやって来ておいて、返り討ちにあったらしく逃げ帰って来た帝国の騎士達。
その騎士達を追って、その件の怪力熊の変異種が村へと迫り、そのまま勢いよく飛び上がり、俺や騎士達、そして村人達が見ている中、門を超えて俺達の着地して、その姿を現した。
あのくそったれたハイオーガも無駄にデカかったけど、この怪力熊の変異種もデカい。
パッと目算だが4メートルはあるだろう。
黒い毛皮をしているが、身体の所々の毛が灰色となっており、頭部を見ると額に縦に開いた三つ目の瞳がある。
やっぱりモンスターだけあって、ただのデカいだけの熊の姿と言う訳では無いようである。
グルルルと唸り声を上げて俺達を見回す怪力熊の変異種。
しかし、イーニャを見た途端、怪力熊の変異種は見回すのを止めた。そして三つの瞳の瞳孔を細め、口を僅かに開けた。その姿はまるで狙っていた獲物を見つけて喜んでいる様な仕草だった。
イーニャは、この怪力熊の変異種が自分を見て動きを止め、三つの瞳の瞳孔を細め、口を僅かに開けた姿を見て愕然とした表情となった。それは恐怖よりも驚愕から来る様に見えた。そして怪力熊の変異種と目が合った瞬間、彼女の表情に恐怖と憎しみが加わり叫んだ。
「こ、こいつよ!!3週間前に村付近に現れ、村の人達を!お父さんを殺したのは!!」
その言葉に、このような状況とは言え「ほ、ホントなのかイーニャ?!」「えっ!?この化け物が村を襲った犯人なの?!」と騒ぎ出す村人達。
どうやら、村人達の様子では村を襲撃したモンスターの様子は知らなかった様である。そう言えば俺もターニャから『大きくて凶暴なモンスターが村付近に出て』としか聞いておらず、モンスターについての詳しい事は聞いてなかったな・・・。そこに
「静まれ!!」
と相方の女騎士から”ジーク”と呼ばれた騎士が叫んだ。
「このモンスターは我々が引き付ける!!その間に村人達は逃げろ!!」
そう叫ぶと同時にジークは手のひらの上に拳大の炎の塊を出現させ、それを怪力熊の変異種に放ち、透かさず騎士の女も怪力熊の変異種に手を翳すと、同時に三日月のような風の刃が放たれ、女神官も杖を翳すと、その先からやや青みがかった発光した拳大の球体を放った。
どうやら騎士の二人は魔法も使える様で、三人の放った魔法は怪力熊の変異種に直撃し、炎と青みがかった発光した球体が怪力熊の変異種の身体を焼き、風の刃が斬り裂いた。
「ぎゃううう」と短い悲鳴を上げながらよろめく怪力熊の変異種だが、すぐに立ち直り、どうやら怒ったらしく、先程よりも獰猛で凄みと威圧感のある唸り声を出し、その直後、大声を上げて咆哮した。
その怪力熊の変異種の言動を見て、ジークが「しまっ!!」と短い悲鳴のような声を出すと同時に片膝を着いて蹲ってしまい、それは女騎士も女神官も同じであった。
それだけでなく「うわぁ!!」「ひいっ!!」と村人達が短いを悲鳴を口々に上げたので、何事かと思い、首を巡らせて見ると、ターニャも含め、その場にいたターキ村の村人全てが蹲ったり、尻もちを着いたりして動けなくなっている。
この場で立っているのは俺だけとなった。
おいおい、マジかよ?!何がどうなってんだよ!?
俺の心を読んだ様にジークが叫んだ。
「モンスターの中には、凄みと威圧感を出しながら咆哮する事によって、自分より格下の相手の動きを委縮または腰を抜かして行動不能にするスキルを持った者もいる!!怪力熊はその一種だ!!」
ジークの説明通りなら、俺以外は皆、先程の怪力熊の変異種の咆哮によって行動不能にさせられてしまったと言う訳か!!
ジーク達も村人の何人かも、しばらくしたら動ける様になるだろうが、その前に怪力熊の餌になる可能性が高い。
つまり、ここにいる者達の命運は俺に掛かっていると言う訳じゃねーか!!チクショウ!こうなったらやるしかないじゃないか!!
本来、討伐に来た騎士達達であるジーク達もそれを理解している様で、俺に逃げろとは言う気配がない。その代わりなのか、代わりに戦えと命ずる事もなかったが・・・。
動けなくなったジーク達や村人達を見て、怪力熊の変異種は絶好の機会と思ったのか、自分に攻撃を仕掛けて来たジーク達には気にも止めない様子で、一直線にターニャに向かって駆けだした。どうやら、この怪力熊の変異種はターニャを獲物として狙っていた様である。
そのままの勢いで、動けないターニャの頭を噛み砕こうと、口を大きく開けて飛び掛かかり、母親のイーニャを始め、村人達からも悲鳴が上がったが、間一髪、俺は相棒の鉄棒を両手で持って怪力熊の変異種の口に入れ、嚙みつきを受け止めた。
次の瞬間、両腕そして瞬く間に全身に、怪力熊の変異種の体重と勢いによる衝撃が走り、足元が少し地面にめり込んだ。
しかし、この身体になって俺の身体の総合能力が、この世界の住人の平均的な総合能力の約4倍になっている事に、この時、心底感謝した。
でなければ、怪力熊の変異種の噛みつきなど受け止めることが出来ず、そのまま押し切られて俺の頭が噛み砕かれていたか、その巨体の体重で押しつぶされていただろう。
とは言え、このまま力比べをしていたら間違いなく俺の方が先に負ける。しかも怪力熊の変異種の噛みつき具合を見るに、鉄棒が噛み砕かれる可能性もある。
如何するべきかと必死に考えたが、その間にも段々と押され始めて、怪力熊の変異種の顔も段々と近づいて来た。
こいつはマジでヤバいぜ!!
その時、何故かこの時、昔読んだ漫画の内容を思いだした。ホント、マジで唐突だった。その内容とはツッパリものの漫画で、主人公の祖父が熊と戦い、最後はアイアンクローで倒したと言うモノだった。
その瞬間、俺の身体は動いた。考える間もなかった。
『!?』
いきなりの行動のジーク達や村人達、そして怪力熊の変異種も驚く中、俺の右手は近づいていた怪力熊の変異種の頭部を掴み、そのまま握りつぶさんばかりの勢いで締め上げた。
当然、怪力熊の変異種は暴れまくり、俺もあちこち、負傷したが、それでも頭部を掴んだ手だけは離さず、やがて、怪力熊の変異種の動きが緩やかになり、最後はとうとう三つの目を剝いて気絶してしまった。
俺はそこで手を離すと、怪力熊の変異種は倒れた。
皆が唖然と俺と怪力熊の変異種を見つめる中、俺は息たえたえになりながらも立ち上がり、そのまま俺の前に横たわっている怪力熊の変異種の首元により、そこで皆の方を向く様に振り返り、左腕を怪力熊の変異種の首に回し、抱える様にして首の下から左腕を出し、それを右腕で掴むと、次の瞬間、
「オラァ!!!」
と叫びながら俺の全力の筋力と体重と勢いをつけて怪力熊の変異種の首をへし折った。
この場にいる全員が絶句し、俺を色んな意味で信じられないと言う表情をしながら凝視する中、俺は首から手を離し、込み上げてくる勝利を噛み締めながら右手を突き出して叫んだ。
「しゃあ!!熊殺し!!成してやったぜ!!」
勝利の雄叫びを上げながら、俺は勝利と満足感とターニャを何とか守る事が出来た安堵感に満たされた。
全く、この俺の身体の総合能力にはホント、感謝しかないぜ・・・。
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