第24話 ターニャと一緒に薬草採取のために森へ
身体が不調な上、リアルで色々とトラブルが起きて更新が遅れました。
ターニャと一緒に彼女の家を出て、村の出入り口に進んでいると、ポツリとターニャが言った。
「カズサさん、依頼を受けてくれてありがとう。お母さん、見て分かる様に足に怪我をしているからたくさんの薬草が必要だったの。それに」
「それに?」
「私のお父さん、3週間前に大きくて凶暴なモンスターが村の付近に出て、その時、村にそこそこの死傷者が出て、お父さんもその時の死者の一人になっちゃった・・・。お母さんもその時に足を怪我しちゃって・・・。だからお母さんに変わって私が畑を耕してるんだけど、生活が大変だから、お母さんの分とは別の薬草も採取したかったから。薬草はポーションの材料となるので、近くのコナタに持っていけば、そこそこの値段とはいえ、買って貰えるから、お母さんに少しは楽させてあげられるかなって・・・。毎年お父さんと薬草を採って、ポーションにしたりして売りに行ってたから、それで・・・。」
そこまで言うとターニャは亡き父親との日々を思い出したのか、俯いてしまった。
間違いなくターニャの中では、まだ父親がモンスターに殺された時の悲しみが残っているのだ。だが、それも当然だろう。
俯くターニャに慰めの言葉を掛けようとしたが、肝心の慰めの言葉が1つも出てこない。
ああ、何て事だ。三十年以上も生き、社会で会社員でボロボロになる程の過重ワークもこなしてきた俺だが、こういう時、父親を理不尽に殺されて哀しみを未だ、心に強く残している少女に慰めの言葉1つ掛ける事が出来ない何て・・・。
「・・・ならば、お母さんの為にも薬草はたくさん採取しないといけませんね。それでその採取場所は村から近いのですか?」
結局、俺がターニャに掛けた言葉は彼女の言葉の肯定と採取場所を問うと言うモノだった。
「あ、これから行く森は、北ラーシア山脈の南東の麓に広がる森で、まだ麓は山脈に比べたらモンスターも弱くて危険は低いんですけど、それでもモンスターが多いのも確かですから、一人で薬草を採取するために長い時間いると危険なんです。」
俯いていた彼女が、これから行く場所の説明をするために顔を上げた時、目が潤んでいた事に俺は触れずに彼女の説明を聞いた。
彼女の説明が終わったところで丁度、村の出入り門に付近に来たのが、村の門付近で村人と一目見ただけで上物と分かる鎧に身を固めた騎士と思われる深緑の髪をした見た目30前後の男1人と薄紫の髪をセミロングにした20代中頃と思われる女1人、逆にランクが落ちる鎧(と言ってもこの世界の防具屋で売られている一般の鎧と比べたら上物だが)を着た一般の兵士と思われ、同じぐらいの年齢と思われる男達が3人、最後に前者の男女と同じ上質な法衣と杖を身に纏っている薄ピンクのロングヘヤ―の20代前半の女が一人の計6人の集団が話し込んでいる。
そんな六人の内、ランクが落ちる鎧を身に着けているメンバーの中で一番背が高く筋肉質だが、あまり品がなさそうな一見して破落戸に見える20代後半の男(と言っても他の二人もどこか小悪党のような感じがするが)が村人と話をしているが、村人の方は少し怯えている様子で、それを上物と分かる鎧に身を固めた男と法衣を着た女性がフォローしながら話をしている。
そんな連中が、出入り門を通る為近づいてくる俺達に気付き、話し込んでいる村人は勿論の事、騎士と兵士の6人全員も俺達を見て、騎士と神官の3人は魅了された様に俺を見、ガラの悪そうな兵士3人は好色な下卑た表情で俺を見、一番背の高い兵士がヒューと口笛を吹いてから声を掛けて来た。
「おいおい、こんな上玉がこの村に住んでるだなんて聞いた事がねぇから、ねぇちゃん、お前、他所もんだな。何が目的で何処から来たよ?あん?」
側の悪い兵士の男のいきなりの問いに何でそんな事、言わなければならないんだと内心、ムッとしながら思ったが、敢えて声に出してトラブルを招く必要もないので、素直に答えた。
「・・・コナタから来た冒険者で、依頼主である隣の彼女の依頼を受けて、今から薬草採取に一緒に行くんですけど・・・。」
俺の言葉に我に返った騎士と神官の3人は怪訝な表情になり、騎士の男が代表で尋ねて来た。
「コナタから?コナタの冒険者ギルドには怪力熊の変異種が出没した件で、ターキ村の依頼は暫くの間、受けない様に通達を出したはずだが・・・?」
「怪力熊の変異種が出没した・・・?いや、依頼を受けた時、ギルドからは何も言われなかったんですが・・・。」
「あ~、と言う事は情報の行き違いになってしまったか・・・。」
顔に手を当ててあちゃ~と言う仕草をする男に変わり、騎士の女が話を続けた。
それによると、ここ最近、このターキ村の近くの山中で怪力熊の変異種が出没し、進化種である剛力熊程ではないが、通常の個体より数段強いらしく、近隣の安全と治安の事も考慮し、帝国から討伐隊である彼らが変異種を倒すまで、念のため冒険者ギルドにターキ村の依頼をこなさない様に通達を出したらしい。
「朝にはこの通達が届く様にはしたが、それまでに依頼を受けてしまったら、流石にどうしようもないわね・・・。」
騎士と神官の3人は仕方がないかと言う様にため息をつき、兵士の3人の内、まとめ役と思われる背の高い筋肉質の男が、ニヤニヤ笑いを続けながら、
「取り合えず、お前が本物のギルドの冒険者かどうか確かめたいから、ギルドカードと依頼書を見せろや。」
高圧的に言って来る兵士の言葉に、俺は内心、不快感を感じながらも、事情が事情なら仕方がないかなと納得もあったので、二つを出して目の前の兵士に出すと、男は依頼書を一瞥すると、正規のギルドの依頼書と理解できた様で、つまらなげに鼻を鳴らし、騎士達に渡し、俺のギルドカードをマジマジと見、
「ふ~ん、上総心ねぇ~、ランクはEの駆け出しか・・・。まぁ、こんな辺鄙の田舎の、しかも薬草採取だなんてチンケな依頼をこなすなんて駆け出しぐらいなものだわなぁ~。」
明らかに馬鹿にした様子で言う兵士の言動に、俺だけでなくターニャや周りの村人もムッと不快感を示し、騎士の男が「ジード!!」と叱責した。
どうやら、この目の前のぼんくら兵士はジードと言うらしい。どうやら、鎧の質で予想がついたが、騎士達の方が兵士達よりも偉い様である。
叱責されても謝る気配のないジードに変わって騎士の男が俺達に頭を下げた。
「申し訳ない!この者達に代わって謝罪する!こんなのでも帝国の辺境の村々を守る警備隊の兵達ゆえに、この村の付近の安全を脅かしている怪力熊の変異種は必ず討伐する故、この者達が言った事は聞き流して頂きたい!」
騎士の男だけでなく、相方の騎士の女や神官の女も同じ様に頭を下げて謝って来たので、俺も含め、村人達も怒りを納めた。
その後、騎士の男はジードに、俺にギルドカードを返す様に命じ、ジードは面白くなさそうな顔で俺に投げつける様に返して来た。
ここでまた、ひと悶着起きたが、また騎士の男が頭を下げ、何とか事なきを得た。
その後、騎士達はジード達がこれ以上、余計な事をしでかさない様に、急ぐように村を出て行き、出る前に騎士の女が、
「ギルドの正式な依頼であるから、あなた達の行動を遮る事は私達には出来ないけど、今、ターキ村の周り、特に近くの山中はとても危険だから、しっかりと警戒していきなさい。」
と俺達に注意を促して去って行った。
しかし、あのジードと言う男もパッと見た感じ、ハイオーガの時に知り合ったレオンと同じくらい強く、あの騎士二人は更に段違いに強いのが、感覚的にだが、感じ取れた。
あの神官もレオンに同行していたマリアと同じくらいの実力があると感じた。
そんな精鋭たちが来ると言う事は実際に今、ターキ村の周りはヤバい事になっているのは間違いないだろう。
これはしっかり気を締めていかねば・・・。
それはそれとして、あの騎士達、誰一人自分から名前を名乗らなかったな・・・。
それから俺はターニャと一緒に村の外へと出、村の外壁に沿って北側へ移動し、しばらく彼女の案内に従って進むと辺りは段々と雑木林になり、奥へ行く程に森が深くなってくる。
当然、その過程でモンスターも何度か俺達を襲撃し、その都度、俺は相棒の鉄棒でなぎ倒してやった。
そんな俺の戦う姿を見て、
「カズサさんってとっても綺麗で儚げに見えるんですけど、戦い方は物凄くワイルドなんですね。」
ターニャは驚きと呆れと多少の憧れを込めて言う。
そりゃあ、ターニャには言ってないけど今の俺は見た目は儚げな美少女だけど、服の下はガチムキの漢だし、元々の中身が30過ぎの男だから戦い方がワイルドと言うか乱暴になるのは当然だろう。
口には出さないが、内心でそう思いながらも「そうですかね?」と言葉は濁しておいた。
「そうですよ~、あ、着きました!」
ターニャが足を止めて、そう言い、俺もつられて周りを見渡してみると、確かに周り一面に薬草が生えている。
これだけ一面に生えていれば、ターニャの背負って来た篭にもいっぱいに出来るだろうし、俺がミント商会に卸すためのポーションを製作するために必要な薬草の数も揃うだろう。
俺とターニャはお互い目の入る位置の範囲で分かれて薬草を採取し始めた。
そしてターニャが地面に置いた篭にお互い薬草を入れる傍ら、俺は自分がポーション製作に使う使う数の薬草を手に入れるため、彼女に気付かれない様に採取した薬草のいくつかをアイテムボックスに入れて数を揃えて行った。
当然、ここでも途中、何度も虫や小型の動物型のモンスターが襲ってきたが、それらも鉄棒で、それでも間に合わない時は拳や蹴りで返り討ちにしてやった。
もっとも動物型のモンスターの顔面を拳で陥没させて仕留めた時は、流石にターニャも目を丸くして驚いていたが・・・。
それから数時間経ち、ターニャの篭に入れた薬草も満杯となり、
「篭も満杯となったので、カズサさん、そろそろ戻りましょう。」
と言って来たので、依頼者の意向の上、俺自身も目的とした数を超える薬草を採取出来たので異論はなかったので、ターキ村に戻る事にした。
ターニャでは薬草が満杯に入った篭は重いだろうと思い、俺が変わりに背負って帰る事にした。
ターニャは随分と遠慮していたが、中身が30過ぎの大人の身としては、多少は子供に気を遣ってやらないと・・・ねぇ・・・。
「騎士様達がおっしゃっていた怪力熊の変異体に出くわさなくて良かったですね。カズサさん。」
帰る道中、ターニャがそう言って来たので、
「そうですね。とは言え村に戻るまでは安心出来ませんが・・・。」
「あ、そうですね。まだ村に着いた訳じゃないですよね。」
ここで大丈夫だなんて思うと変なフラグを立ててしまうかもしれないので、ターニャにまだ気を緩めない様、やんわりと伝え、俺達は互いに気を引き締めて帰る道を歩んだ。
「問題なく帰ってこれましたねカズサさん。」
俺達はあれから何度かモンスターの襲撃にはあったが、全て難なく返り討ちにして、今しがたターキ村に戻り、村の門を通って村に入ったところでターニャが俺にそう言って来た。
「ええ、これで一安心ですね。」
ターニャにそう答えたところで、近くを通りがかった村人の男が、
「お、ターニャ、無事、戻ってこれたか。朝を少し過ぎたあたりで、騎士のえらいさん達が来て、怪力熊の変異種が出て来たので、自分達が討ち取るまで気をつけろと言っていたので、大丈夫か?と思っていたんだが・・・。」
「ありがと、おじさん!熊に出くわす事もなく、薬草を採りに行く道中も、採取している間もカズサさんが、全部、難なくやっけてくれたから、大丈夫だったよ♪」
「へ~、実に奇麗な別嬪さんだが、こう言っちゃなんだが荒事には不向きに見えたんだが、やっぱり冒険者ギルドから来た正式な冒険者なんだな・・・。」
ターニャの言葉に、男は俺をマジマジト見ながら、感心した様に言い、
「あんがとよ嬢ちゃん、ターニャをちゃんと護衛して薬草の採取も手伝ってくれて。」
「いえ、それが俺の受けた依頼ですから・・・。」
「いやいや、以前、コナタに行った時に聞いた話では、冒険者もピンキリで、不真面目な奴は受けた依頼もいい加減にこなすって聞いたからな。ちゃんと真面目に依頼をこなして来た嬢ちゃんは礼を受けてもいいぜ。」
男の言葉に俺はダートの事を思い浮かべながら、
「成程、なら、ここはどういたしましてと返しておきます。」
と答えると、
「おう、それでいいと思うぜ。しかし、自分の事を”俺”と呼ぶとはその見た目で男っぽんだな。正直、意外だな。」
と男の感想に俺は曖昧に笑みを浮かべるだけだった。
「まぁ、いい。ターニャ、早くイーニャさんのところに行ってやりな。間違いなく心配しているだろうからな。」
「うん、おじさん、ありがとね。」
男の言葉にターニャが礼を言うと男は「応」とだけ返し、俺達はターニャの家に向かおうとした時だった。
「おい!騎士様達がお戻りの様だが、どうも様子がおかしいぞ!!」
俺達に声を掛けて来た男とは別の村人の声に、俺達は門を見ると、前方から馬に乗った騎士の男女、そして女神官の3人がこちらに向かって駆けて来た。
残り3人の兵士達はどうしたんだ?と思ったところで、彼らの乗った馬が門に近づいて来たので、急いで道を開けて少ししてから騎士達3人の馬が駆けて入ると同時に、騎士の男が叫んだ。
「全員、この村に住んでいる者達は直ぐにコナタに非難せよ!!」
いきなりの避難勧告に俺達は何事かと顔を見合わせると、
馬を止めて降りて来た騎士の男が続けて叫んだ。しかし、その姿は鎧のあちこちが傷ついており、ところどころ、あちこち負傷している。それは相方の女も神官もそうだった。
「怪力熊の討伐は失敗した!ジード達3人も既に奴に殺られた!そして熊は我々だけでなくこの村の住民も標的にしている!!今、村に留まれば間違いなく全員、食い殺される!!故に皆、すぐにコナタに非難せよ!!」
騎士の男の言葉に、一瞬、沈黙がこの場に下りたが直ぐにパニックが起きた。
「どういう事なんですか!?」
「熊の討伐に失敗とは!?」
「逃げろと言われても、着の身着のままで逃げる訳には!!」
騎士の男の叫びに、家にいた村人達まで出てきて詰め寄り、この場が騒然となった。
騎士の男が、何とか村人達を落ち着けようとしたところに、騎士の女の叫び声が響いた。」
「ジーク!!奴が追って来たわ!!」
その叫び声に俺達は思わず門の先を見ると、黒い大きな塊が、こっちに向かって凄い勢いで向かっており、それはいきなりその場で飛び上がり、そのまま村の門を超えて、それを呆然と見ている3人の村人の上に落ち、そのまま3人の村人を押し潰して着地した。
そして、それは獰猛な叫び声を上げながら二本足で立ち上がった。
所々、毛の色が灰色になっている4メートルはある大きな黒い熊だった。
森の中で熊に出くわす事はなかったが、こうして村で出くわす事になってしまった・・・。
森でのターニャとのやり取りはやっぱりフラグだったのか!?チクショウ!!
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