第23話 依頼主のターニャの家で・・・。
ターキ村はパッと一目見た感じ、のどかな村と感じたが、やっぱりその通りだった様で、俺は難なく村に入れた。
と言うよりも村自体、木壁で取り囲んではいるが、コナタと同じで村の門は開けっ放しで、門番が立っている事もなかった。
これで大丈夫なのか?と思ったが、まぁ、この村はこれで問題ないのだろうから、余所者である俺が気にする事じゃない。
村に入ると、村人達の視線が一斉に俺に集中する。そしてこの身体になってから起きている定番で、老若男女問わず息を飲んだり、顔を赤らめている。
ここまで来るとやっぱりこの見た目の美貌もチートだわ・・・。
そんな事を思いながら、俺から見て一番近くにいた女性の村人に、
「あの、すいません。」
「は、はい、何でしょう!?」
「この村のターニャさんの依頼を受けてこの村に来たんですけど、ターニャさんは何処に住んでます?」
「ターニャ?イーニャさんのところのターニャちゃんかしら・・・?」
「そのターニャちゃんと、ギルドに依頼を出したターニャちゃんが同じ人物かどうかは、俺にはちょっと判断がつきませんね。ギルドで説明を聞くと、依頼を出したターニャちゃんは14歳の少女だと聞いたんですけど・・・。」
「あ、それなら間違いなくイーニャさんのところのターニャちゃんですね。まぁ、この村にはターニャと言う名前の娘はその娘だけなんだけど・・・。」
「そのターニャちゃんのお宅は何処なんでしょうか?」
「ターニャちゃんは、あの家に住んでますよ。」
見た目、絶世の美少女が自分の事を俺と言った時、目の前の女性を含む、周りの村人達が驚いた表情になりながらも、話を続け、住んでいる家を尋ねると村の中にあちこちに立ち並んで建っている山小屋風の家の1つを指差して教えてくれた。
俺は礼を述べてその家に向かい、呼び鈴らしきものは無かったので、そのまま木製のドアを”コンコン”と二回ノックし、
「すいません!コナタの冒険者ギルドに依頼していた案件を受けて来た冒険者なんですけど、依頼主であるターニャさんはいますか?」
遠目から見ている村人達にも聞こえる様に大きな声で来訪した用件を伝えると、
「あ!冒険者の方ですか!今開けます!」
とドアの向こうから少女の声が聞こえて来た。
どうやら、この声の主が依頼主のターニャの様である。
間もなく、ドアが開き、そこから150程の身長をした、髪は明るい茶色の髪をショートカットにした動きやすそうな服装をした少女が出て来た。
肌も色白い俺と違って日に焼けて実に健康そうである。もっとも向こうはドアを開けて俺の顔を見た途端、呆けたような表情となり、顔も少し赤くなっている。
端から見たら、何だか百合っぽい空気になったと感じるかもしれないが、残念、こう見えて俺は男だから百合もクソもない。更に言うなら、そんな空気も読むつもりもないので
「あなたが依頼主のターニャさんですか?」
とさっさと尋ねた。俺の質問に彼女は我に返り、
「あ、は、はい、私が依頼を出したターニャです。」
と返した。
「依頼内容は依頼主であるあなたと一緒に薬草採取をして欲しいとの事ですが、間違いないですか?」
「はい、私だけじゃ採取出来る量が限られていますから・・・。それに、」
「それに?」
「それに私一人だとモンスターに襲撃された時、対応できないので・・・。」
俯く様に言うターニャ。つまりは一緒に薬草採取する傍ら、実際はその時、モンスターが襲撃してきたら守って欲しいと言う護衛の依頼と言う事である。
そういう事は依頼書に記載されていないが、恐らくギルド側も察して暗黙の了解であり、だから冒険者達も依頼内容を見て察し、利益にならないと判断して受けなかったのだろう。
まぁ、俺の場合は彼女の依頼は俺の目的に都合が良いから受けたのであって、報酬の多い少ないは最初から意に返していない。
だから俺は彼女に対し、全くに気にしていない仕草で返した。
「分かりました。じゃあ、一緒に薬草を採取する傍ら、モンスターが襲撃してきたら、あなたを守って討伐したら良いのですね?」
「え、あ、はい、そうですけど・・・。」
ターニャは俺が依頼内容が依頼書に記載されているモノだけではなくとも、あっさりと受けた事に戸惑っている様子だった。
きっと彼女の中では、ごねられるか最悪、断られるかもしれないと思っていたのだろう。
が、俺は彼女の心情まで配慮する気はなかったので、
「それで、薬草採取は今から行くのですか?」
とさっさと話を進めて、次の行動に移る事にした。
「あ、少し待ってもらっていいですか?薬草採取をするための用意をしないといけないので・・・。」
「はい、分かりました。じゃあ、村の入り口辺りで待っておきますね。」
「あ、よろしかったら家にお入りください。」
「よろしいのですか?」
「はい、お茶はなどは出せませんが、水ぐらいならば出せますので」
「いや、そうゆうのはお構いなく。」
俺はそう言って折角、ターニャから提案してくれたので頑なになって断る程の事でもないので、彼女の家に上がらせてもらう事にした。
家の中に入ると、すぐ脇には土を突き固めた場所に火を炊く為の石組みがあり、その上に鍋が吊り下げられている。他にもいくつかの木製の食器類が簡易的な戸棚に並べられて整理されており、その戸棚の奥に大きな水瓶が蓋をされて置かれている。
奥には木製の家財道具、手前にテーブルと椅子四脚、奥にベッドが二組と衝立が配置されている。
ターニャに進められて椅子に座ると、彼女が水瓶から水を掬い、それをコップに入れて俺に出してくれた。
ここまでされて飲まないのは逆に礼に失するので、素直に飲む事にした。
すると衝立の奥のベッドから一人の女性が少し覚束ない足取りでこちらに歩いて来る。ターニャと違い、金髪でそれを長くした髪を後ろで束ねて肩口から垂らしている。
年齢は見た目、俺より少し上ぐらいの30代前半ぐらいである。
そんな彼女も俺を見た瞬間、目を見開きしばし呆けた様になった。
村に来た時の村人達の反応と同じで俺の美貌に驚き、心奪われたのだろう。
ターニャに「お母さん」と声を掛けられて我に返り、羞恥を隠す様に慌てて自己紹介をした。
「ターニャの母のイーニャと言います。この度は娘の依頼を受けて頂けるそうで、ありがとうございます。」
「どうも上総心です。あ、こちら側の言い方だとシン=カズサとなりますか。縁あってご息女のターニャさんの依頼を受けさせていただきました。」
俺は軽く会釈しながら自己紹介を返すとイーニャは意外そうな表情で軽く驚いた表情になった。
どうしたんだと思い、「あの、何か?」と返すと
「あ、いえ、冒険者の方は、その、荒っぽい方が多いと聞きましたので・・・。」
イーニャの言葉にああと俺は理解した。つまりは俺が礼儀正しく自己紹介をした事に驚いたと言う訳だ。
まぁ、確かに、冒険者に登録した時に絡んできたダートの事を考えたら、イーニャの驚きも理解できる。
低ランクの冒険者ってチンピラや破落戸と変わらないのも多いからな・・・。
それに見た目、絶世の色白美少女の俺が冒険者をしていると言うのも驚いたのだろう。まぁ明らかに一般の冒険者のイメージと違うからな・・・。
とは言え、何も返さない訳には行かないので、「まぁ、他の依頼人の方にもよくそう言われます。」と当たり障りのない無難な返答を愛想笑いと共にしておいた。
それと足が悪そうだったので、座る事を勧めるとイーニャは「ありがとうございます。」と礼を述べて座った。
それからイーニャが準備を整えて奥から出てくるわずかの間、俺達は共に無言だった。
俺としてはイーニャが明らかに足が悪い事は理解できたが、いちいちその事について尋ねようとは思わなかったし、向こうもその事に触れて欲しくないだろう。
イーニャはイーニャで、依頼を受けて来た冒険者が、予想していたのとは全然違い、見た目、凄く綺麗なターニャより少し上の少女が来るとは思ってもおらず、しかもその少女は座ってから一言二言話した後、ずっと無言故に話し掛けづらく、結果、お互い無言のまま時が過ぎた。
「あ、あの準備が出来ました。なので薬草採取の依頼、お願いします。」
ベッドが置かれている奥からそれなりに大きな篭を背負って慌てる様に出て来たターニャ。間違いなく奥の部屋で、準備している間、俺と母親の無言の困惑した空気を感じて急いで用意して出て来たのだろう。
「あ、いえ、こちらこそ。」
俺はそう言って、母親のイーニャに一礼して立ち上がり、ターニャと一緒に家を出ようとしたところで「娘の事、よろしくお願い致します。」とイーニャが立ち上がり、頭を下げてお願いしてきた。
「はい、心得ております。娘さんの護衛も俺の仕事の内ですから。」
そう言って俺は、今しがたの俺の返答にきょとんとしている親子の娘の方を促し、
「じ、じゃあ、行って来るねお母さん!」
「え、ええ、気を付けて、カズサさんに迷惑を掛けては駄目よ!」
と娘を送り出した。
それにしても二人とも、見た目、絶世の色白美少女が自分の事を”俺”と言った事に戸惑いを感じている様だな。
これで男だと分かった時は、今までの様に驚愕するんだろうな・・・。
そう考えたら、ホント、厄介な見た目になってしまったもんだぜ・・・。
面白いと思いましたら、感想または評価をお願いします。




