第15話 レオン達と互いの状況確認も含めて自己紹介をする俺
ハイオーガを始末し、三人の冒険者達を見ると、三人とも信じられないモノを見る目で俺を見ている。
この見た目で男である事が信じられないのか、それとも見た目、弱そうな俺があんなに荒々しくハイオーガを殺った事が信じられないのか、それとも別の理由なのか俺には彼らの心情は理解できないが、別に理解する必要も無いので、話のきっかけを掴むためにも彼らの安否を聞く事にした。
「あなた方、特にそこの戦士とシスターの方は無事ですか?」
現段階での彼らはジャン達やミントと出会った時の様子とよく似ているので、向こうの警戒心を少しでも和らげるために、俺は敬語で接すると、
「あ、ああ、それなりの負傷は負わされたが、何とか生きてる。アレッサとマリアはどうだ?」
「私は足を負傷いたしましたが、今のところ命に別状はありません。寧ろレオンさんが一番の重傷者だと思うのですが、アレッサはどうですか?」
「私は見ての通り、問題ないわよ。それよりもあんた、助けてもらっといて何だけど何者なの?」
アレッサと呼ばれた女魔術師は鋭い視線で俺を睨む様に見ながら尋ねてきたが、質問が抽象的だったので取り合えず、
「”コナタ”の冒険者ギルドで登録し終えたばかりのEランク冒険者です。」
と返しておいた。
俺の返しにアレッサだけでなく、マリアと呼ばれたシスターもレオンと言う名前と思われる戦士も目を丸くして驚いている。
「は?登録し終えたばかりのEランク冒険者?あんたふざけてんの?ハイオーガを容易く倒せるような奴がEランクの新人冒険者な訳ないでしょうが!!」
最後は怒鳴って来たアレッサの言動に、そんなこと言ったって、その通りだからしょうがねぇだろ!と内心、悪態を突きながらも俺の言ってる事が事実だと理解してもらうためにも、俺はズボンのポケットからギルドカードを取り出して、アレッサに突き出した。
「な、何よ?」
「ギルドカードです。あなたの目で見て確かめてください。」
俺の有無を言わせない気配に飲まれた様で、渋々の様子で俺のギルドカードを受け取ると目を通し、
「嘘!本当に今日登録したばかりの新人Eランク冒険者じゃない?!しかも何!職業、錬金術師って!錬金術師は一対一でハイオーガを倒すような前衛戦闘職じゃないわよ?!それに性別欄を見たら男ってその見た目でやっぱり男なの!?あんた、色んな意味で可笑しくない?!」
俺のギルドカードを見て、更にキンキン声を上げるアレッサ。
だいたい、可笑しくないと言われても、ギルドカードが示している通りなんだから仕方がないだろうが!!と内心言い返していると、そこに「や、やめろ!アレッサ!!」とレオンが彼女を制止すると、傷む身体に鞭打って上半身を起こすと、俺をまっすぐに見て、
「す、すまん。アレッサも悪気はないんだが、ハイオーガとオーガの主従との戦闘で俺達が全滅し掛けたので、気持ちがまだ不安定状態なんだ。アレッサの言う事は聞き流してくれ。」
レオンがアレッサに代わって俺に謝罪すると、
「アレッサ、冒険者ギルドは賞金首など今でも重犯罪者でなければよほど可笑しな事を登録の時に書かなければ、過去は問わないんだ。登録したばかりの新人Eランクと言えど全員が全員弱いと言う訳じゃない。」
「そうですよアレッサ。それにそれは錬金術師にも言えます。神官でも魔術師でも戦闘技術を習得して並みの戦士よりも戦える神官戦士も魔法戦士もいます。これだけ戦える錬金術師がいても可笑しくはありません。」
「そ、それはそうだけど・・・」
「自分の常識から色々と外れている人がいても、そんなに突っかかってはトラブルばかり招きますよ。あなたは元々、そういう所がありますから・・・。」
仲間であるレオンとマリアに言われ、アレッサは「わ、分かったわよ。私が悪かったわ。あなたも悪かったわね。あなたの事に突っかかって・・・。」としぶしぶながら謝罪したので、俺もこれ以上、波風と立たせたくなかったので「いえ」と返しておいた。
「じ、自己紹介がまだだったな。俺はレオン、そっちの魔術師は先程聞いていた通りアレッサと言う。そこのシスターが」
「マリアです。」
「俺達はアンタと同じ”コナタ”の冒険者でBランクに成りたての冒険者チームだ。」
Bランク、それならば成りたてとは言え、魔術師のアレッサが上級複合魔法「エクスプロージョン」を放る領域にいてもおかしくはない。
「俺達はギルドの依頼でこの森の調査に来たんだが・・・」
レオンの説明によると、最近、この森に住み着く低ランクのモンスターが付近によく出没し、商隊などに被害が良く出ている上に、たまに森の奥から聞きなれないモンスターの雄叫びも聞こえてくると言う報告も受けていたので、そのための調査としてレオン達のチームに依頼が来たそうである。
「まさかオーガを4体も従えたハイオーガがいるとは思わなかったが・・・。」
苦虫を噛み潰した様に説明を続けるレオン。
元々、オーガ自体、この辺りのモンスターも含めて下級モンスターの中ではトップクラスの強さである上に人間の幼児ぐらいの知恵もあるのでやっかいだそうである。
その進化種であるハイオーガはその強さも中級モンスターでもトップクラスとなり、知恵も人間の13~4歳ぐらいになるのでよりやっかいなモンスターとなるらしい。
「ハイオーガ一体だけならば俺達三人の敵ではないんだが、さすがに4体のオーガを含めた5体のオーガ種を相手にするのは俺達できつかった・・・。」
レオン達はハイオーガ達と遭遇した時点では自分達の勝ち目が低いので戦うつもりはなかったそうだが、撤退しながらもオーガを2体倒した時点で、ハイオーガが激怒した上に、アレッサとマリアに目をつけて執拗に追って来たそうである。
そして結果的にここでレオンとマリアが負傷した事でアレッサがエクスプロージョンを使い、この辺り一帯を吹き飛ばしたが、ハイオーガが部下のオーガ二体を盾にして生き残ったところに俺が駆け付けたと言う事らしい。
俺が駆け付けたのは彼らからしても危機一髪だったと言えるだろう。
「それでアンタはどうして、この森にいたんだ?」
レオンの問いに俺はアイテムボックスの事だけは言わずに、俺が倒したモンスターの亡骸をこの森に置いていたので、ギルドでリヤカーを借りて、この森に戻ってリヤカーに詰めて戻ろうとしたら、日が落ちて暗くなり、森に迷った事を伝えた。
それを聞くとレオンとマリアは何とも言えないと言う表情になり、アレッサは明らかに呆れの表情となった。
「・・・あんた、こういう深い森に来るなら、もっと日が高い時に来なさいよ。まぁ、そのお陰で私達は助かったんだけど・・・。」
「そのリヤカーはこの近くに置いてあるんですか?」
マリアの問いに俺は「ええ」と肯定し、アイテムボックスからリヤカーを出すためにも置いてある所に行って来ても良いかと尋ねると、
「そ、それは構わないんだが、もしポーションを持っているのならばマリアに使ってくれないか?」
と苦しそうな表情で頼んでくるレオン。
レオンも明らかに重傷だが、シスターのマリアが動けるぐらいに回復すれば神聖魔法でレオンを治療できるそうである。
俺はズボンのポケットの中に手を入れて、そこでアイテムボックスからポーションを1つ取り出すと、一番距離が近いアレッサに渡した。
「・・・ポーションをもらっといて何だけど、何で私に渡す訳?」
「あなたが一番距離が近いからです。」
「・・・」
アレッサの問いにそう返すと、何とも言えない表情になったアレッサだったが、俺はそれに構わずアイテムボックスからモンスターの亡骸を詰め込んだリヤカーを取り出すために、リヤカーを取ってくる振りをして回れ右をし、元来た茂みの中に入って数歩歩いてからアイテムボックスからリヤカーを取り出して、それを引いてレオン達の元に戻った。
これで歩けるようになったレオン達に着いて行けば”コナタ”に戻れそうなので、とりあえずは一段落・・・か?
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