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 教室に戻ると、藤林は教室中の注目を集めた。


 ザ・学級委員長の藤林が、こんなにも可愛くなったんだ。


 コイツらが驚く気持ちはよく分かる。


 それにしても現金なものだ。


 藤林が可愛いと分かったもんだから、男子たちはあからさまに熱い視線を送っている。


 それに反比例するかのように、女子たちからは冷ややかな視線が送られている。


 藤林に『やっかみを無かったことにする』を使ってみたが、あいかわらず異能は効いていない。


 効く時と効かない時の条件が謎だ。


 この条件が分かるまで、俺も藤林には迂闊に手が出せない。


 だが、俺の目論見通り、例の神隠しが藤林を狙えば何か手がかりが掴めるかもしれない。


 藤林には悪いが俺にとっては一石二鳥だ。




 ——昼休み、オレは藤林を目立たせるため中庭に誘った。


 ここで、弁当を食べるのだ。


 藤林の弁当を。


 目立つようにイチャラブして。


「浅井くん……本気でお弁当もって来てなかったのね」


「ああ」


「猛アプローチね。そんなに私の事が気にいったの?」


 なんだ、藤林のやつ……外見が変わったら態度まで変わりやがって。


 まあ、そっちの方が好みだからいいけど。



「藤林、あーん」


「本気なの?」


「当たり前だろ」


「仕方ないわね」


 取り敢えずオレは、目立つように目立つように振る舞った。



「あれーなんかこの辺、砂糖がまかれてるよ」


 茶化してきたのは生徒会、副会長の星田だ。前髪をネジネジする仕草が、ウザい。


「あースミマセン、なんか今日はそんな気分なんで」


「君、何年生? 誰ちやん?」


 星田はオレを無視して藤林に話し掛けた。


 今度は上の方をネジネジしてやがる。やっぱウザい。


「……副会長……藤林です」


「え! マジで藤林さんなの!」


 顔見知りのようだ。


「知らなかったよ、こんなにも可愛かったんだね、今度遊びに行こうよ!」


 こいつ……完全にオレを空気扱いしている。


 もしこいつが犯人だったら今はもめたく無いが……。


「おい、なに人の女ナンパしてやがんだ? 消えろよ、お呼びじゃねーんだよ」


 何もしないのも逆に不自然だ。


「ん……なに君、彼氏なの?」


 髪をかき上げてからの、後ろ髪ネジネジ……本当ウザい。


「ああ、もう一緒に風呂に入った仲だ」


「ちょっと、浅井くん!」


 嘘の中に真実を入れる事で、オレのハッタリの真実味が増す。


 ちょっと顔が引きつりやがった。悔しがっている証拠だ。


「ふーん……彼氏ね……」


 舐め回すように見られた。可愛い女の子ならまだしも……こんなやつに……気持ち悪い。オレもこれから気を付けよう。


「釣り合って無いね」


 余計なお世話だ。


「まあ、いいよ邪魔したね、また放課後」


 良くはないが見逃してやった。ヤツが能力者でも能力者じゃなくても、髪の毛を無かった事にする。そう決めた。


 でも十中八九ヤツは能力者だ。普通のやつなら男付きの女をナンパなんてしない。何か特別な力をもっているからだろう。

 

 しかし、なかなかムカつくやつだった。

 

「ねえ浅井くん、彼女って……」


「ああ、すまない。迷惑だったな」


「ううん」


 うん……?



「藤林?」


「迷惑なんかじゃないよ?」


 目を伏せて頬を赤らめる藤林……ヤベ……今オレ、ときめいた。



 ……でも、藤林は能力者だ。


 ことが、終わったら異能も記憶も……場合によっては藤林の存在自体を『無かったこと』にするかも知れないのに。



 ……胸が苦しくなった。



 オレは自分の感情を無かったことにしようかと思ったが、思いとどまった。




 ——放課後。


「ねー藤林、副会長が生徒会室に呼んでるよ」


 藤林に副会長からお呼びがかかった。


「なあ藤林、オレもついていっていいか?」


「え……」


「アイツ、藤林のこと狙ってたろ……だから心配で」


「う……うん……ありがとう」


 来るのは分かっていた。ヤツはまた放課後と言っていたのだから。


 オレは藤林と一緒に生徒会室に向かった。


 

 ——コンコン「失礼します」


「何かご用ですか、副会長」


 前髪をネジネジしながら迎える星田。


 あからさまに嫌そうな顔だ。それに何だ……この匂い? お香か?


「藤林さん、よく来てくれたね。お呼びでない輩もいるけど」


 いちいち癇に障るヤツだ。


「これから放課後デートなんだよ。それに昼間彼女をナンパしたヤツのところに1人で行かせる方がおかしいだろ?」


「あは、確かに君のいう通りだね」


「副会長……」


「でも、君が来たからって何ができるのかな?」


「何?」


「あ……浅井くん……私……」


 藤林がオレにもたれかかり意識を失った。


 そうか、この匂いが……!


「く……お前……何を……」


 オレは藤林を抱きしめ、わざとらしく意識を失ったフリをした。


「フフフ……僕の世界に本当は男はいらないんだけどね……でも特別君は連れていってあげるよ……何もできないまま、自分の彼女がめちゃくちゃにされるのを見ているがいいよ」


 ……僕の世界……空間系の異能か。


 言っていることは気に入らないが、オレも連れていってもらえるようでラッキーだ。


 煽った甲斐があったってもんだ。


 藤林をめちゃくちゃにするだと……させるわけないだろ。


 めちゃくちゃになるのはお前だ。


 

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