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1/9

ザ・学級委員長

 その日は朝から雨だった。


 なんとなく気分が乗らなかったので学校をサボった。


 ——夕方になって雨がやんだので、飯でも買いに出かけようとしたら……。


「「あ」」


「……浅井あさいくん」


「委員長……なんで家に」


 玄関で学級委員長の藤林ふじばやし 美優みゆとエンカウントした。


「私ん、浅井くんと近所だから先生にプリントを渡すように頼まれたの」


 ザ・学級委員長の藤林。


 今時ビシッと二つに束ねたおさげに、ロイド眼鏡。まあ、スタイルは良さそうなのだが、校則通りの着こなしでそれを上手く活かせていない。


 磨けば光るタイプだ。


「ああ……どうも」


「浅井くん、元気そうね……ズル休みかしら?」


「ん……あーその」


 あからさまに疑いに眼差しを向けられている。


「オレ、体弱いんだよ! 雨に濡れるとすぐに風邪ひいちゃうから」


 我ながら苦しい言い訳だ。つか、藤林にズル休みだってバレたところで何の問題もない。つい、反射的に嘘をついてしまった。


「とりあえず、プリント渡しておくね」


 藤林がプリントを取り出そうとしたその刹那。


「バシャーン!」


 トラックのタイヤが水たまりの水を跳ね、オレも藤林もびしょ濡れになってしまった。


「……」


 無言の藤林。レンズが濡れていてよくわからないが、泣きそうになっているようにも見えた。


「ちょ……ちょっと待って」


 でも大丈夫。


 オレの異能『無かったことにする』を使えば何の問題もない。トラックの水跳ねを無かったことにして、そのあと藤林の記憶を無かったことにすればいい。


『藤林のトラックの水跳ねを無かったことにする』心の中でそう呟いた。


 これで、藤林はトラックの水跳ねがなくなり、元通りになるはずだった。


 だが……。


 藤林は濡れたままだった。


 ……おかしい……異能が発動しなかったか?


 オレはもう1度、藤林に『無かったことにする』をこころみたが、何も変わらなかった。


「寒い……」


 藤林はブラ紐が透けて見えるぐらいガッツリ濡れていた。


「あ……そうだよな……とりあえず風呂でも入ってく?」


「うん」


 あれ……?


 今、苦し紛れに風呂入っていくって聞いたんだけど……藤林……『うん』って言ったよね?


「ごめん……浅井くん寒いの……急いでくれない?」


「あ……ああ、ごめん……とりあえず上がって」


 色々と違和感を感じたが、とりあえず藤林を浴室まで案内した。


「着替え持ってくるから、先に入ってて」


 お湯……流さなくてよかった。


 出かける前に風呂に入ったのが幸いした。


 とは言え……なんで異能が発動しなかったんだろう。


 オレは念の為、自分に異能を使ってみた。


 藤林同様、ビショ濡れだったオレが濡れる前の状態に戻った。


 異能が使えなくなったわけではないようだ。


 どういうことだろう。


 何故、藤林に異能が効かなかったんだ?


 とりあえず、脱衣所に着替えを持っていった。


「浅井くん……そこにいるの」


「あ……ああ、着替え置いとくからな」


「待って」


 うん……オレは下着は盗んでないぞ……ちらっと見たけど。


「浅井くんも一緒に入らない? 濡れると風邪ひくんでしょ?」


 え……今なんて言った?


 一緒に入らないって聞こえたけど……。


「浅井くん……私なら大丈夫だから……」


 私なら大丈夫だから……って意味が分かんないんですけど!


 でもオレは咄嗟に『無かったことにするを、無かったことにする』を発動させ、ビショ濡れ状態に戻った。


 そして「本当に、いいのか?」白々しく聞いてみた。


「うん……」


 っしゃ! オレは小さくガッツポーズをした。


 オレの見立てでは藤林は絶対に可愛い。


 髪を下ろし、メガネをとった素顔を見れるだけでも熱いって言うのに……。


 全裸だ!


 まあ風呂だから当然なんだけど……藤林はきっとスタイルも抜群な筈だ。


 もうこれ以上欲望を抑えることが出来なかった。


「お邪魔します」


 ……結論から言うと。


 藤林はオレの想像を超えていた。


 神なんてオレの異能で無かったことにしてやろうと思っていたが……。


 オレは神に感謝した。


 

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