表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
便利屋残酷物語(仮)  作者: 酔いどれ伯爵+便利屋残酷物語製作委員会
3/3

第1.5話☆それはヒバリ?と、スズメが言った

じつは今更ですが、この小説は、「ジャンル」「登場人物」「ストーリー」の多くの部分を、某SNS内に開設したコミュニティ「なりゆきラノベ研究所」の参加者にノリで決めてもらってます。

ていうか、参加者に決められた設定は、守らなければならないという縛り(笑)のもとでこのラノベは書かれています。

まず、参加者にジャンルを募ったところ、「ゴミ拾い」という吃驚な回答があり、なんやかんやで「ゴミ屋敷掃除モノ」という、なんか初めて接するジャンルになりました。正直もう、どうやって進めていいかわかりません(w)


しかも登場人物決めようとしたら、その前に「主題歌を作る!」という意見が出ちゃった。本文を1行も書いてないのに、主題歌書けとか言われちゃったよ(w)

しかし、出たアイデアは全部実現させるというのが、このラノベのコンセプト。

ええ、作りましたよ、主題歌。

序章の前書きにある「民主主義がやりたいからさ」がソレです。実はメロも作りました、譜面書いてないけど。いつかお知り合いになることがあったら、口三味線ででも披露いたします(w)


で、登場キャラクターもかなり設定お腹いっぱいな人々ですが、はっきりいってこの設定、全部消化出来る自信はありません(w)


それでも頑張ります。起承転結とか綺麗な形にまとまらないとは思うけど、それでも私はがんばる。だって、これがラノベ処女作!最終回までは、グダグダでも血ィ吐きながらでも、がんばります!

陽の光を受けて、庭の木々に昨夜の名残の水滴がまるで緑色の宝石のように輝いている。

嵐の夜が明け、穏やかな朝が、ここ松濤の奥屋敷にも訪れていた。


ここはお屋敷の中のとある南側の部屋。黒いお下げ髪をボンネットから垂らし、白いエプロンに紺色のワンピース姿の年若いメイドが1人、足音を忍ばせてふらりと入ってきた。彼女は、部屋の南側にある出窓のカーテンをゆっくり開けた。柔らかな朝日がフワフワと部屋の中に差し込む。


メイドは、壁際に寄せてある天蓋付きのベッドの足元の台に女性ものの衣類を置き、一度部屋を出るとすぐにティーセットの乗ったトレイを持ってよろよろと部屋に戻って来た。

するとベッドから微かな声がした。


「ああ…ひばりが鳴いているね。」


その声は仔猫か小動物のように愛らしい、少女のそれであった。


「…いいえ、あれはひばりじゃないわ。夜をつげるナイチンゲールよ……んあ、ふあぁ。」


小さな欠伸と、ふぁさっ、と柔らかい布団に落ちる音が聞こえ、再び大きなベッドの中から、安らかな寝息の音が規則正しいメトロノームのような音を奏でる。


若いメイドは呆れたように言った。

「もう、お嬢様!ひばりでもナイチンゲールでもありませんよ!ありゃスズメです!さぁ観念してくださいまし!」


彼女は別の大きなフランス窓を勢いよく開け放ち、外の空気を部屋に呼び込んだ。この寝起きの悪い女主人を起こすには、部屋中を朝にしなければならない。


「むうう。…人間生まれて来た時に泣くのはな、この阿呆どもの舞台に引きずり出されたのが悲しいからだ…」ベッドの中からはなおも眠たげな声がする。


「シェイクスピアのセリフなんて引用したって誤魔化されませんよ。」

メイドはおぼつかない手つきで紅茶を淹れた。

「なんでございますか、今日は客人が来るから早起きして下さいって、3日前から言ってるじゃありませんか。」

「だって…眠いものは眠いのだよ、ばあや」

「だーーれがばあやですか!!ワタクシまだ20になったばかりですよ!ほら、今日の紅茶は、お嬢様のお好きなアールグレイ・インペリアルですよ!これ召し上がって目をお覚まし下さい。」


馥郁たる紅茶の香りに誘われて、1人の少女が、天蓋の中からふらふらと寝惚け眼をこすりこすり出て来た。

白いレースのネグリジェを纏った彼女は、透き通る陶磁器のような白い肌で、西欧人形かと見紛うあきらかに美しい顔立ちをしている。サラサラの長い髪の色は、日本人離れした栗毛色とでも言うのか、色の濃い金茶色である。とても愛らしい。ただし、絶えず変わらない仏頂面を除いては。


少女は紅茶の香りを嗅いで一言、

「ふぅむ。…よい出来だのう。」

声は仔猫のようだが、少女らしからぬ口調だ。メイドは笑顔で答えた。

「紅茶だけは失敗しません。毎日暇な時間を見つけて練習しているんです!」

少女はベッドの端に腰掛け、マホガニー製のサイドテーブルに置かれたティーカップを手に取った。

「しかし、残念なところがある。」

「なんでございましょう?」

「なんで茶器がロイヤルコペンハーゲンなんだ?お前はよく割るからIKEAでよいといつも言っておるだろうが?」

メイドは更に得意げにそばかすのある鼻を上向きにして答えた。

「茶器を割らない奥義を身につけたでございますよ!毎日頭の上にお湯を入れたティーカップを乗せながら廊下を往復してですね…」

「あーわかった。…その先は聞きとうもない。」少女は紅茶を一口啜った。

「ふぅむ。いつも思うが、アールグレイには妙な覚醒作用があるのう。…眠れなくなりそうだ。」

「いいことです。お茶がお済みになったら、用意した服にお召替えくださいませね。」

メイドは台の上の服をベッドの上、少女の傍らに置いた。


少女は、用意された紅色のワンピースの片袖を持って無造作にぶら下げた。

「またなんだこれは?…見合いでもさせようというのか?」


メイドは、女主人の飲み終わった茶器を片しながら、

「そのような服装でお見合いなどしません、少なくともお嬢様のようなお立場の方は。これはただの、来客を迎えるための服ですよ。」と言った。

「ジャージで充分だ。」少女はむくれながら言った。

「なりません!迎える相手は便利屋でも、お嬢様が便利屋の格好をする必要はないのです!…もう、この会話、何回目ですか!」

「"どうせ便利屋"であろう、牡丹?便利屋ふぜいをどうして盛装して迎えねばならんのか、いささか理解に苦しむぞ、牡丹。」


牡丹というのがこのメイドの名前らしい。

牡丹という艶やかな名前の割にはひょろっとして地味な印象の女性であるが。


「まぁお嬢様は、いつも通り1日しかお会いなさらないと思っておいででしょうがね。…ええ、ワタクシもです。残念ながら。」

「何故残念なのだ?」お嬢様がサラリと言った。そこで牡丹は、はああ、と深い溜息をついた。


「お嬢様のお父様…ご主人様がですね、いたくご心配なのですよ。お母様…奥様もね!まぁ、将来のお嫁入り先はお家柄でなんとかなるにしても、お嬢様、もう5年間もろくろくお外に出ていらっしゃらないじゃないですかって。」

お嬢様はむくれた。「5年ではない。4年8か月と18日だ。大したことなかろう。」


牡丹はまた大きな溜息をついた。


「あのですね。ご主人様と奥様が、この…現状をご覧になったら、どう思われますか。」

「問題ない。秩序は保たれておる。一部屋を除いては」

「その"一部屋"を、"一般人"が立ち入れるレベルに復旧せよ、というのが、今回のご主人様のご命令です。なお、今回は御一族のグループ会社の役員たるお嬢様への社命でもあるとのことです。」


お嬢様は、ぶんむくれた。「あやつらめ、ついに権力に打って出よったか…」


そこで、牡丹は、してやったりと笑った。このお嬢様から一本取るのは、毎朝お嬢様のお支度を整えるような気心知れたメイドにも難しいのだ。

「はい。そういうわけで、ふさわしい身なりでお出迎えくださいまし。相手はお嬢様の会社の社員なのです。」


お嬢様は、空になったティーカップを牡丹に手渡しながら

「社員か…」と呟いた。

「社命か…」

と、お嬢様は、そこでいきなり「うはははは!」と大きな声をたてて笑った。


「ひゃ!」とっさに牡丹は空になったティーカップを床に落としてしまった。が、毛足の長いカーペットにティーカップは護られ、割れはしなかった。お嬢様はそんな牡丹に目もくれず、ますます得意げになっていった。


「いいだろう!それなら社員殿を盛大におもてなししようではないか!結構だ!大変に結構だ!」

お嬢様の目が、徐々にらんらんと輝き始めた。


「はぁ…」その光景を、牡丹は呆然と見守るしかなかった。


「ふはは、漲ってきたぞ!私は決して負けぬ!バーナムの森がダンシネーンの丘に向かって来ぬ限りはな!さあ、ばあや!着替えをよこせ!」

「だっからばあやじゃないですってば!」

「手厚くお迎えしてやろう、ふふふ。その社員とやらが生まれてこの方遭遇したことのないお迎えをな!」


ついに、お嬢様はビクトリア調風の緋色のワンピースに脚を通した。そのワンピースは思いのほか小さかった。お嬢様は、同年代の女性より相当小柄な体型だったのである。


その不敵な笑いの前で、牡丹は再び溜息をつくしかなかった。

窓際のテーブルの上には、ゴツい電気釜のような機器、俗にいう「電動調理鍋」が置かれていた。


「ふふふ…ふふふ…ぐっふっふ、ぐぁーっはっはっは!!!」


徐々にクレッシェンドしつつ、最後はどこかのラスボスみたいな笑い方の女主人に、メイドは少々ドン引きつつも、


「ご朝食はいつも通りダイニングです。焼きたてのパンが冷めてしまわないうちにお召し上がりくださいまし。」

そう言うと、そそくさとドアの向こうへ去って行った。まるで、何かに巻き込まれるのを恐れているように。


お嬢様は仁王立ちになり、やおら壁際の電動調理鍋を指差して宣言した。


「よかろう、社員よ!来るがいい!目にも見よ!あの我が魔法鍋による、我が最高傑作の特製昼餐にておもてなししてくれよう!そっ首洗ってやって来るがいい!!!うぁーっはっはっは!」


そのセリフは、さながら悪の組織の総裁のようで迫力満点であった。

…が、残念ながらお嬢様は小さかった。


そして、屋敷の廊下にまでお嬢様、もとい小さな大総裁の笑い声は響いていた。

ドアの外で牡丹の発した大きな、大きなため息は、当然ながらその笑い声にかき消されてしまったのであった。


電動調理鍋は、フランス窓が送り込む朝日の逆光で、不気味にどす黒く佇んでいた。その中身は…今はまだ、明らかにされない。


お嬢様の手料理を食する資格のある者とは…それは、選ばれし勇者なのだから。

次回、「二階級特進課長」と、松濤の「残念お嬢様」との邂逅!そして、謎の電動調理鍋「ヘル◯オ」の中身が明らかに!そのお味は…?

ミライザカ君、生きておうちに帰れるか?!?




お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ