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便利屋残酷物語(仮)  作者: 酔いどれ伯爵+便利屋残酷物語製作委員会
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第1話☆ 「二階級特進」

嵐の夜から一夜明け、空は雲ひとつない青空。そんな中、いかにも商社マン風の上質なスーツに身を包んだ、表情のくら〜い男、その名は御頼坂 洋平(ミライザカヨウヘイ)

彼は、爽やかな空気の朝、山手通りを代々木八幡駅から初台方面へ、とぼとぼと歩いていた。朝の通勤時間ですでに人通りの多い道なのに、なにやら1人怪しくブツブツと呟きながら…

一体、おれはどこで間違ってしまったんだろう…


おれは、代々木八幡駅と初台駅を結ぶ山手通りをヨロヨロ歩きながら、ぼんやりした頭で一生懸命考えた。一体、どこで間違ってしまったんだろう。

当年とって33歳、世界的に有名な一流商社で勤続11年、営業成績は常にトップ10入り、コミュニケーション能力もほどほどにあり、付き合いもこなし、友人もちゃんと居て、多分人望もほどほどにあるはずの自分が、一体なんで「あんな」部署に異動になるのか!?


月曜の朝、会社の掲示を見てビックリした。

何故おれが…?

何故…?


「御頼坂 洋平様

辞令 ○月○日付けで、外商部 営業課主任 の任を解き、外商顧客管理部 特務清掃課課長に任じます。今後の活躍を期待しています。」


辞令を見たときおれは昇進したと思ってた。

だが同僚は真っ先に「おまえ何やらかしたんだ!?」と怯えた声を出しやがった。

いわく、そこの部署は、「呪われた部署」だそうだ。なんでもそこに異動した奴はみんな、いきなり出社しなくなったり心に大きな傷を受けて辞めちまうんだと…


そういえば、主任から課長への一足飛びの昇進とは…軍で言うところの二階級特進…つまり、殉…うっ、頭が…

瞬間、ギクっとした。背筋をツララが撫で上げたような寒気が走る。


坂の途中で、おれはいつの間にか立ち止まり、道路を挟んで斜め前方にそびえ立つ大きなカトリック聖堂を見ながら考えこんでいた。

頭の中がぐるぐる回っている。

見上げれば、昨日の大雨が全てを洗い流したかのような真っ青な空が頭上いっぱいに広がっている。だがその空の清々しさでさえ、今のおれにはむなむなしい!


だが、それがどうした!人は物事を悪く考えれば考えるほど、悪い運命に踏み込んでしまうものだ。立ち直れ、おれ!


そうだ!!おれは確かに出世したのだ!その証拠に、同期で一番の、会社史上でも異例の33歳で課長に抜擢!

おれはすごいんだ!

うん。そうにきまってる!

例え部署名が、特務清掃課だとしても…

そうだ!おれは期待されてるからこその特務清掃課長なんだ。人事はおれが、この社の歴史を変える男だと読んだらしい!わかってらっしゃる!!!よっしゃ!行くぜおれ、足音軽く…備品倉庫へ!


おれは、坂を下りきった交番の前にある、会社借り上げの倉庫からメモを片手に備品を取り出した。

それらを運ぶのはなかなか骨の折れる作業だった。営業用のブランドスーツなんかじゃなくて作業着みたいな服装で来ればよかった。

ええと、モップにホウキにダ○ソンの掃除機に、バケツに雑巾に脚立と、電動ドリル?…え、こんな物まで使うのか?!たった一人で?いったいどんな現場なんだ?


かまうものか!


あらかじめ倉庫前に停めてあったグレーのハイエースに道具を詰め込み、特務清掃課長すなわちおれは、本日の、未知なる戦場へと向かった。


ハイエースのエンジンが唸りをあげる。

いざ、松濤へ!



みなさん、今回も最後まで読んで下さり、ありがとうございました。実は、今回陽平くんが訪れた倉庫とは、実在する初台坂下にあるレンタル倉庫です。交番の前に「あらかじめ」ハイエースを停めておいていいものかは考えましたが…まぁ、交番の死角にあったということで(笑っ)。

次回、舞台は、松濤へ!

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