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43話 青白いピカピカ

 レッドドラゴンは、今まで感じたことなのない痛みと衝撃に呆然としていた。顔周辺は、火傷で鱗や皮膚が焼けて爛れているようだ。更に、縦横無尽に振り回していた自慢の尻尾が斬られてしまったのだ。自分に対してここまで攻撃的な者などいなかった。はじめて感じる痛みと、それをこの小さい者どもにやられたという怒りで、どうにかなってしまいそうだ。


 しかしながら、この怪我も斬られた尻尾でさえ、多少時間を掛ければ元に戻るぐらいの怪我のはず。別に慌てるほどのことでもない。しかしながら、ここまでの攻撃を繰り出してくる人間がいたとは驚きだった。こいつらは食料であって、久し振りに食べようと様子見のつもりで街を探していたところ、発見したのがこの場所だった。ドラゴンは別に食料を必要としない。必要なのは魔力であって、それでも食べるのはどちらかというと嗜好品としてのイメージが強い。阿鼻叫喚の悲鳴をスパイスにして、圧倒的強者として蹂躙していく。これは、ちょっとした遊びであって、人間は逃げるだけのはずだった。


 グュルルルルー


 自分を囲うようにしているこの小さい者どもは逃げようとしない。それどころか、攻撃までしてくるではないか。しばらく人間を食べてなかった間に、ここまで攻撃的になってしまったのか。これではいかん。もっと、もっと、強い恐怖を植え付けてやらねばなるまい。人間がドラゴンに牙をむくことの愚かしさを理解させなければなるまい。




 ……しかし、それは体力が回復してからでもいい。止血はしているが、尻尾を斬られてしまった。万全の体制を整えてから、次こそは蹂躙してやろう。少し驚いてしまったが、注意さえしていれば自分の敵ではない。今も、囲んではいるが、そのほとんどが足を震わせている。顔面も青白く、ビビりまくっている者がほとんど。


 回復まで一か月ぐらいだろう。お前らにその間だけ猶予を与えてやる。


 グュルルルル?


 人間達の中で、妙に好戦的な者が数名いる。一人は今も私の前に立ち、何やら叫んでいる。


 さっき似たような人間を消し去ったはずだが、あれは奴の双子だろうか。痩せた中年の小さき者が何やら叫び声をあげている。きっと双子の片割れを殺されたのを怒っているのだろう。それにしても、こいつが持っている武器……血がべっとりと付いている。こんな小さな武器で私の大事な尻尾を斬ったというのか。こんな小さき者が……。




 いや、今は後回しでいい。どうせ、次回来た時に人間は全て食べ尽くすし、この街もすべて破壊し尽くす。それよりも大事なモノを見つけたのだった。思いの外、人間どもが逆らうからつい忘れるところだった。


 そう、あのピカピカだ。


 青白く光り輝く美しいピカピカ。特に青白い色は自分がもっとも大好きなピカピカの色だ。あれは大事に巣に持って帰らなければならない。あんなピカピカ、そうそう巡り会えるモノではない。今日この場所に来た一番の収穫といってもいいだろう。小さき者に酷い目に合わせられたが、チャラにしてやってもいいぐらい最高のピカピカだ。あのピカピカがあれば、回復に充てる一か月の間でも、沸々としたこの怒りも抑えることができるだろう。


 あのピカピカを持って帰って、少し休んでからまた来るとしよう。今日はもともと攻撃するつもりもなかったのだ。




 グュルルルル?



 またあの痩せた中年が走ってきた。どうやら人間は頭がとても弱いらしい。まともに戦って勝てる相手かどうかもわからないとは……。またあの攻撃がやってきた。見えない攻撃で顔周辺が爆発に包まれる。そうだ、この攻撃のせいでさっきも尻尾を斬られたのだったか。



※※※



「願いを叶えないドラゴンは、ただのドラゴンね!」


 頭部周辺の爆発による煙幕で、どうやらサバチャイさんは前足に狙いを定めているようだった。狙いやすいように一歩前に出された左足に。足元を崩して、次は翼を狙い空への逃げ道を無くしていく、きっとそんなイメージだったのだと思う。僕がサバチャイさんでもそうするだろう。予想外だったのは、レッドドラゴンがそれを読んでいたことか。


「ちっ、爬虫類にしてなかなか頭がいいようね」


 ドラゴンが爬虫類なのかはわからないけど、あの何でも斬ってしまいそうな鮪包丁がドラゴンの爪に弾かれたのは驚きだった。おそらく、レッドドラゴンが爪を魔力で部分的に強化していたと思われる。


「ぬおぉぉぉ!!」


 それでも強引に爪ごと斬ろうとしたサバチャイさんは、魔力に弾かれるようにして吹き飛ばされていった。タマに続いて、サバチャイさん二号も戦線離脱。




 そして、レッドドラゴンの狙いはやはりピカピカをまとった僕で間違いない。気色の悪い目線で、相変わらずロックオンされている。



「撃てー!」


 体制を立て直した公爵軍が、サバチャイさんがいなくなったことで再び魔法攻撃を集中させる。これは、単なる時間稼ぎだ。効かないことはわかっている。僕に残された攻撃手段はあと何があるのか……。このままでは全滅してしまう。



「ル、ルークさん!」


 しかし、考える時間もない程にその脅威は、魔法が飛び交うなか、関係なく真直ぐに僕に向かってくると、そのまま僕を咥えるようにして大空へと飛び去って行くのだった。


「こ、攻撃を止めろー!!」


 食われてはいない。ちょっとミシミシ音が聞こえるけど、大事に咥えられているようだ……。


「あー、これは終わったな……」

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