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36話 アイスアーマー

「ルーク、サバチャイの手のひらがうずいてるよ! これはあれよ、何か出ちゃうよ!?」


 これは僕でも知っている流れだ。おならでも出すんだろう。まったくもって下品な召喚獣だ。


「サバチャイさん、もう少しです。そのまま魔法陣に身をゆだねるのです」


 魔法陣に身をゆだねるって、ちょっと言っている意味がよく分からないんだけど。シャーロット様なりのサバチャイさんに向けた分かりやすい伝え方なのだろう。しかもどうやら、サバチャイさんには効果的なようで、驚くことに魔法陣がピカッと光り、登録が無事完了してしまった。


 おかしい、下ネタも下品な行動も無かっただと……。


「何よルーク。まるでサバチャイが変なことするような目をしていたね。残念ながら毎回ルークの期待に応える訳にはいかないよ」


「期待したこととか、一度もないですからね!」


「何はともあれ、収納バッグの登録はこれで無事完了したわね。ついでだからルークちゃんに防具をプレゼントしちゃうわ。ちょうど完成したばかりの試作品があるんだけど、ルークちゃんの体にピッタリっぽいのよね」


「チャップルンさんの防具を!?」


「ルンルンよ!」


「あっ、そうでした。でも何で僕に防具を?」


「言った通り、試作品なの。ルークちゃんには、実戦でこの防具の性能や感じたことを私に伝えてもらいたいのよ。都度、改良していくことにするし、メンテナンスも任せてちょうだい」


 そういえば、最初に会った時にやたら身体を触られていたけど、試作品に合いそうな体格かを確認していたのかもしれない。


「オカマの姉ちゃん、本音はどこね?」


「せっかくルークちゃんと知り合えたのに、このままお別れとかさみしいじゃなーい。メンテナンスにかこつけて、定期的に二人の時間を作り愛を育むのよ!」


 そんなことだろうとは薄々感じてはいたけども、それでもチャップルン魔法具店の防具を使えるなんてありがたい。


「ルンルン、ちなみにその試作品って購入した場合の価格はどのくらいになるのか?」


「そうね、ルークちゃんにはお友達価格でお渡しするとして、でも試作品だし二千ゴールドくらいが妥当かしら」


 二千ゴールド!? ちょっと頭がおかしくなるような金額だった。その金額出したら普通に家が一軒建つってば……。


「ちょ、ちょっと受け取れないかな。さすがに金額が笑えないですよ」


「いいのよ。こちらも試作品の性能をチェックする意味合いもあるんだから。気にしないで、ルークちゃん」


「ルーク、何を迷っているね。チャンスは掴まないと手に入らないね。バングラディッシュでは目の前のチャンスは仲間を騙してでも掴みとれってことわざがあるよ。まさに今がその時ね!」


 仲間は騙してはいけないと思うよ。それでもやはり魅力的な提案だ。いくら僕の家が裕福だと言っても二千ゴールドをポンッと用意できるほど贅沢は出来ない。これも何かの縁だと思って、ありがたく受け取っておこう。


「ルンルン、それじゃあ、お言葉に甘えてその防具を使わせてもらえるかな」


「ええ、もちろんよ。私の試作品、『アイスアーマー』よ。名前の通り火属性に対しての耐性が強い鎧よ。もちろん、物理耐性もかなり優秀だからきっとルークちゃんの役に立ってくれるはずよ」


「火属性に耐性のある鎧ですか。それって、どのくらいの耐火性があるのですか?」


「そうね、レッドドラゴンのファイアブレスでも数回は防げると思っているわ」


「レッドドラゴン!?」

「チャップルンさん!?」


「シャーロットちゃんは、レッドドラゴンを倒したいんでしょ。それなら隣には素敵な騎士様が必要じゃない?」


「それは、そうですけど。ルークの気持ちは……私の個人的なお願いのために、強制することは出来ませんし……」


「いえ、ソフィアさんが完全に石化してしまうまで、まだ少し時間がるのですよね。それならば、僕も出来る範囲で協力させていただきます。何より、その鎧があればレッドドラゴン最強の攻撃を数回防げるんですから!」


「ルーク!? 本当に手伝ってくれるの?」


「今の僕に何ができるのか、まだ何とも言えませんけど、鎧の性能をルンルンに報告することでより良い防具が完成するかもしれません。そうすれば大規模な討伐隊だって組めるかもしれませんから」


「あ、ありがとう、ルーク。何てお礼を言えばいいのかしら……」


 そう言って涙ぐむシャーロット様を見ると、本当に妹さんのことを大事に思っている気持ちが伝わってくる。僕に出来ることは限られているかもしれないけど、少しでも役に立てればと思う。


「それじゃあ、ルークちゃん『アイスアーマー』を装備させてあげるから奥へいらっしゃい。大きさは問題ないと思うけど微調整は必要よ」


「親方、では私もお手伝いいたします」


「リリィ、何度言ったらわかるの。私のことはルンルンと呼びなさい! それから私の楽しみを奪うようなことしないでちょうだい。まったく、あなたクビになりたいの?」


「あっ、すみません、ルンルン……」


 自分で楽しみって言っちゃってるよこの人。それにしても、レッドドラゴン対策の防具を試作するぐらいにシャーロット様を気づかうオネエ。きっと僕が上級召喚獣を呼んだからこそ『アイスアーマー』を託そうとしているのだろう。


 僕自身は特にたいしたことはないのだけど、それでも少しでも期待に応えたいと思う。


 そう、この気持ちをまさか数分後に後悔することになろうとは、この時の僕には想像すらできなかった。

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