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32話 ソフィアの呪い

 なんとなく親子の関係が気まずくなったところで、公爵様には無事手紙を書いて頂いて、僕たちは先に魔法具屋さんへと向かうことになった。


「妹さんの体調がよろしくなかったのですね」


「ええ、二年前に公爵家の馬車がモンスターに襲われたことがあったの。その時に、モンスターからソフィアは、呪いを受けてしまったのよ」


「この辺りでは珍しい、バジリスクの群れに遭遇してしまったようなのです」


 バジリスクには、石化の呪いがあると言われている。死の間際に近くにいる者を呪いをかける場合があるという。ソフィア様は運悪く呪われてしまったということか。


「そんなことが……」


「ですから、シャーロット様は呪いを解くために強い召喚獣、そしてルーク様のような強いお仲間を探していたのです」


「フィオレロ」


「あっ、申し訳ございません」


「呪いのせいで体調がよろしくないのですね。その呪いを解く方法は見つかっているのですか?」


「可能性が高そうな物は見つけたわ。でも、今の私には到底届かないの。今は治癒術士が定期的に魔法で進行を遅らせているけど」


「そんなに時間がないんですね」


「残念ながら」


「レッドドラゴンの牙なら、どんな呪いでも解けると古文書に書いてありました」


 レッドドラゴン。それは言わずもがな、あらゆるモンスターの種族でも一番と言われている至高の一族。伝説的な生物であり、畏怖の象徴である。


「それは、なんとも……」


「さすがにレッドドラゴンはね……。もちろん、他にも手段がないか探しているわ」


「何か僕でも手伝えることがありましたら、何でも言ってください。そ、その、レッドドラゴン以外ならば……」


「ありがとうルーク」


 なんとも湿っぽい話しになってしまった。そんな話をしていたら、いつの間にか魔法具屋さんに到着したようだ。




 収納バッグには魔力で個人を判別できる仕組みがあるようで、登録した魔力以外の人が収納バッグを取り扱えないようになっている。つまり、その変更登録を行うために魔法具屋さんに向かっているのだ。


 僕が収納バッグを手に入れたことを知ったら、父は泣いて土下座することだろう。エルフェン商会用として利用することは難しいと思うので、ただ悲しませるだけだとは思うのだけど。


 簡単に増やせるからといって、増やしていい物とダメなものがある。収納バッグの値段なんてプライスレスだし、そもそも持っている人が少な過ぎるので想像もできない。そんな物を簡単に増やしてはいけないし、追加で十個とかお願いしても、公爵様の許可は下りないだろう。


「魔法具屋さんって、あの有名なチャップル魔法具店だったんですね」


「レイクルイーズ家の御用達ですのよ」


 このチャップル魔法具店、王室御用達のお店で、一般人がお店に入ることすら、遠慮してしまうような高級店なのだ。価格はさることなから、その品質は王国一との呼び声高い。


「いつもは、新作アイテムをお屋敷まで持ってきてもらうのですが、今回は収納バッグに登録が必要ですからね」


「さすがですね。お店の方から来てくれるとは、さすがレイクルイーズ公爵家です」


 僕とサバチャイさんの魔力認証を、収納バッグに登録するには、お店でないと出来ないらしい。その為、公爵様の手紙と共にシャーロット様にも同席頂く。そりゃ、僕とサバチャイさんだけでお店に行っても、通報されるだけだからね。


「そろそろサバチャイさんを呼んだらいかがですか?」


「そうですね、そろそろ一時間ぐらいですか。サバチャイさん、どんな装備品を持参してくるのかな」


 紅いペンダントを握りながら、再びサバチャイさんを召喚する。


 すると、細長い包丁を持ったサバチャイさんが現れたのだった。


「おー、さすがルーク。ナイスタイミングだったね。ダッシュで合羽橋に来たのは成功だったよ」


 やはりカッパ・バシ氏の作品のようだ。見るからに期待が出来そうな逸品だ。包丁と比べてそのサイズは刃渡りだけで八百ミリはありそう。これならば、ある程度距離をとりながら戦えるだろう。


「刃の鋭さが禍々しいですね。どうやったら、そのような鋭さが出せるのでしょう」


「これは、合羽橋で一番長いマグロ包丁ね。店主に触らせろってお願いしてたよ。召喚のタイミングバッチリだったね」


 どうやら買ったものではないらしく、触らせてもらっていたタイミングで召喚されたらしい。本人が狙ってやっていたところが、たちが悪い。


「これも分身してしまったら、増えてしまうのですね」


 シャーロット様も、さすがに呆れているようだが、サバチャイさんは気にすることなく、流れるような動きで気持ち悪くヌルっと分身し、装備品と財布を増やしていた。


「サバチャイさん、他の装備品は?」


「よくぞ、聞いてくれたよルーク。先ずはキツネ向けに調理場の白いゴム長靴を用意したよ。これは電気を通さないね」


 雷獣に対しての恨みを忘れていない。雷属性攻撃を防げる防具があるとは、さすがサバチャイさんの世界は凄まじい。その品質には驚かされる。


「分身を解除して、ポリスマンを呼んでもう一回分身っと! おっと、財布が四つになったよ」


 何故か、ポリスマンが呼ばれると、サバチャイさんは迷うことなくポリスマンを掴んだまま分身してみせた。


「うおっ! また召喚かよ。つか、敵はいねぇーのか? って、お、俺が二人いるだと!?」


 いきなり召喚されて分身されたら、そりゃ驚くだろう。驚かない方がおかしい。隣に、自分がいるのだから。


 というか、人が分身してしまうことが、いきなり立証されてしまった。いや、分身出来るのは召喚獣だけかも知れないから、まだ報告の必要はないか。


「ポリスマン、防弾チョッキを脱ぐね。これから、サバチャイの防具として使わせてもらいたいね」


「なるほど、そういうことか。そうすると、この拳銃も使えるのか?」


「あ、あの武器が、また増えてしまうのですね……」


 フィオレロさんも絶句していた。この武器が更に増えるというのは戦闘力が倍以上の計算で増えていくことなのだから。


「なるほど、ついにサバチャイにもチャカが手に入る時がきたよ。さぁ、ポリスマンそのチャカをよこすね!」


 ポリスマンのチョッキを手に入れたサバチャイさんは続いて拳銃をもらおうと手を伸ばしたのだが……。


「こりゃ、どういうことだ?」


「さ、触れないね! ルーク、何でサバチャイ拳銃持てないよー!?」


「いや、そんなこと僕に聞かれてもですね……」


「うーん。ひょっとして……」


「なんね。白い姉ちゃん! 何かわかったね?」


 首を可愛らしく傾けながらもシャーロット様は、自分の仮説を語りはじめた。


「一つの可能性としてなのですが、この召喚には優先順位があるのではないかしら」


 シャーロット様が言うには、僕が親で、子がサバチャイさん。親が召喚したものは子が召喚出来なくなるのではないかということだった。


「だとしたら、ルークが拳銃持っているのに、ポリスマンが拳銃持っているのはおかしいね」


「いえ、ルークさんとポリスマンは親子関係ではありません。ポリスマンと親子関係なのはサバチャイさんですわ」


「……つまり、ルークが召喚した物はサバチャイ使えなくなる可能性があるということね……」


 もしもそれが正しいのなら、サバチャイさんに先に拳銃を持たせなくてよかった。


 それにしても、この召喚獣というかサバチャイさんの謎が多すぎる。

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