26話 ランドルフ戦2
「ポリスマン、拳銃の使い方を教えて。三分で!」
「おお、まぁ、撃ち方は簡単だ。側面の安全装置を外す」
「こ、これですね」
「次に、このハンマーを下ろす。これで準備は整った」
「はい、出来ました」
「銃身の上にポッチが二つあるだろう。手前と、銃口の先に。この二つと目標を直線上に揃えて右手を握りこむようにしてトリガーを引く。撃つときは左手でグリップの下を押さえてブレないようにしろ」
「それだけなの?」
「それだけだ。とりあえず試しに撃ってみろよ。一応、一発だけだからな」
「撃てって言われても、何を狙えば……」
「いや、今は戦ってるんだろ。あのキツネを狙えよ」
目の前では時間を稼ぐようにウンディーネと一角ウサギが雷獣の気を引いている。確かに動き回っている雷獣に標準を合わせられるかといえば難しい。
「やるだけやってみます。シャル、フィオレロ、召喚獣をいったん下げて!」
「了解よ」「かしこまりました」
ウンディーネと一角ウサギが雷獣から離れた瞬間を狙って、僕は雷獣を狙い引き金を引く。
「うわぁっ、反動がすごい」
轟音と共に、拳銃からは勢いよく弾が撃ち出されていく。
「ちゃんと押さえてねぇーから上にいくんだ。でもまぁ、初めてにしては悪くねぇんじゃねーか。次は当てろよ」
何か来ることは想定していた雷獣だったが、目で追えないレベルの攻撃が自分を襲うとは思っていなかったのだろう。その焦った表情から鑑みるに、自分のスピードに自信を持っていた雷獣も驚きの速度だったようだ。
「お、おしいわ!」
「あと、少しでした」
雷獣の頭上を通過するようにして、後ろの壁は豪快に抉られ、爆発により大きく破壊されていた。
「あのキツネ、ビビって動けねぇーんじゃねぇか」
「な、なんだ! なんだその攻撃は!? つうか、壁が壊れただと……」
ランドルフさんが激しく狼狽している。見たことのない、とんでもない攻撃が繰り出されたのだ。しかも、その武器と思われるものが、ポリスマンと僕の手に二つ握られているのだ。
「降参するなら、今のうちね。サバチャイ、そろそろ本気だすよ。今の攻撃程度でビビってるなら、ランドセルにはまだトムヤムクン定食は早いねっ!」
サバチャイさんが、ランドルフさんを煽っている間に、もう一度、簡単に打ち合わせを済ます。
「ウンディーネと一角ウサギは、少しでも雷獣の動きを止めて。ポリスマンは僕の少し後ろから来てください。それから弾を一つは残しておいて」
「私はどうしますか?」
「シャルはポリスマンを魔法から守ってもらいたい」
「了解したわ」「オーケーだ」「かしこまりました」
「では、作戦開始!」
再び、ウンディーネの魔法と一角ウサギの回り込むステップで雷獣が身動きとれないように徐々に壁際へと追い詰めていく。
警戒するのはランドルフさんの魔法。雷魔法を撃ってくるはず。僕とポリスマンは狙いづらいよね? というか、狙わないでください。本当にお願いします。
「ルーク、魔法がくるわ! 気をつけて」
ランドルフさんは、おそらくポリスマンか一角ウサギを狙うはず。でも、ポリスマンが召喚獣というよりか、人にしか見えないので撃ちづらいであろうとは思っている。
「ふっ、サンダーボルト!」
なんと狙いは、ポリスマン。
「ウォーターバリア!」
くっ、あのギルドマスター、躊躇なくポリスマンを狙ってきやがった……。
シャーロット様の放った水の防御魔法で、なんとかサンダーボルトは相殺されているようだ。
そして、魔法を見るように雷獣の動きが止まっている。今だっ! 僕は、照準を雷獣に合わせると、多少逃げても当たるように大きく円を描くようにして四連発を叩き込んだ。
「キ、キュイーン!?」
雷獣が叫び声をあげた。あ、当たった。しかしながら、左足を僅かに掠めた程度。これは外れたといった方が正しい。
「サンダーソード!」
ランドルフさんが自らの剣に雷を帯びさせ、雷獣の側に駆け寄ってきた。この人、さっきの拳銃の凄まじい攻撃をちゃんと見ていたのだろうか。顔が笑っているんだけどヤバい人だよね……。
しかし、すぐにポリスマンが援護射撃を撃ってくる。一発、二発目。ここで、剣で上方にそらすようにしてカバーしてみせたランドルフさん。しかしながら、勢いのまま吹き飛ばされていった。っていうか、何でその剣は何ともないの!?
続けざまに、三発、そして四発と。しかしながら動き回る雷獣に当てることは出来ず、惜しくもかわされてしまう。
そして、雷獣は僕の目の前に迫ろうとしていた。
「残念だったな。まずは一番近くにいるルークのお腹の召喚獣からだ。いけっ、雷獣!」
すぐに起き上がったランドルフさんが雷獣に指示を出す。吹っ飛ばされはしたけども、どうやらピンピンしているようだね!
飛びかかる雷獣が目の前に来た時にトラップが発動。
トラップ 足吊りロープ
僕に飛びかかろうとした雷獣は、突如、宙から現れたロープに足を縛られて吊らされてしまった。
よし、タマの新しいトラップが発動してくれた!
「ポリスマン!」
「待つね! サバチャーイ、キーック! アバババババババババ」
もちろん、絶縁体を持たないサバチャイさんが、無事なはずもなく感電してして倒れてしまった。何故にそんな無茶を……。
「何がしたいんだよ、サバチャイさん。じゃあな、キツネまた何処かで会おう」
ポリスマンはゆっくり引き金を引くと、その前に雷獣の姿は消え去ってしまった。
「あっ、てめぇー、逃げやがったな!」
「実戦じゃねぇーんだ。わざわざ止めをささなくてもいいだろう。俺の負けだよ、負ーけ」
「いや、いや、いや、あんた俺に躊躇なくビリビリ魔法使ってたよな? ああーん?」
「覚えてねーな。つか、何だよこのロープは?」
ポリスマンとギルドマスターが喧嘩をしそうな程に顔を近くで見合わせているが、本当の喧嘩にまでは発展しないことを祈りたい。どちらもいい大人なのだから……。
「あっ、フィオレロさん。サバチャイさんの回復を……」
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