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21話 紅いペンダント

 サバチャイさんが消えると同時にタマも消えてしまった。やはり、召喚主がいなくなると召喚獣も戻されるということなのだろう。


「サバチャイ様、行ってしまいましたね……」


「うん、なんというか、一週間ぐらい一緒にいたようなとても濃い時間だった気がするよ」


「不思議な人でしたね」


「ええ、とても」


 召喚してから、おおよそ四時間か。サバチャイさんの世界で、そこまで時間が経過してなければいいのだけど。そこそこ時間が経過していたら、さすがに何度も召喚に応じてもらえない可能性がありそうで困る。いや、召喚は出来ちゃうんだけど、早く帰りたがるというか、モチベーション的な意味でね。


「それにしても、召喚獣には召喚獣の世界があるのですね。お風呂に入っている時とか召喚されたら困りますよね」


 裸のサバチャイさんが現れたら大変だ。念のため、こちらで服も用意しておいた方がいいのだろうか。今後、いろいろと詰めていくことが多そうだけど、今はちょっと頭を休めたい気分だ。


「いろいろと考えることが多そうですね。今はとにかく、異世界との時差がそこまで無いことを祈るばかりです」


「時差ですか。確かに仕事中とかだと困りますものね」


「サバチャイさんが召喚したポリスマンが、ほとんど時差がないと話していたから、サバチャイさんもそうだといいんだけどね……」


 僕にとっては唯一の召喚獣だから、いざという時に呼べないのは就職にも影響が出てしまう。誰だって、ランチとディナーの時間帯を避けないと召喚できない召喚師なんてお呼びではないのだ。


「ルーク様は国の召喚士を目指しているのですか?」


「そういえば僕、別に召喚士目指してなかったんだよね」


「で、でも、上級召喚獣ですよ!」


 そう、何故か上級召喚獣を呼んでしまったことで、今後の人生設計を考え直す必要が出てきたかもしれない。でも……


「上級召喚獣といっても、前例のない召喚獣だけに、もう少し見極める時間が必要かな」


「確かにそうかもしれませんね。でも、ルークさんに勝てる召喚士が、私には想像できませんけどね」


 確かにサバチャイさんは、めちゃくちゃな召喚獣だ。召喚獣なのに召喚もできてしまうし、分身もできる。さらにレベルが上がったらどんな魔法を使えるようになるのか、とても気になる。


「そういえば、この拳銃は消えなかったな」


「一角ウサギがいなくても私も魔法は使えます。先生も言ってましたが、契約してパスが繋がった状態なら召喚獣がいなくても魔法は使えるようですね」


「なるほど。つまり、この拳銃も五発使いきるまでは手元に残しておけるということですか」


「しかも、その拳銃を使いきっても魔力が残っている限り、また再度拳銃を召喚することができるのですね」


 拳銃の威力はとんでもない。これを常に使えるというのはありがたい。しかも、僕の魔力はまだ全然残っている感じだ。まだまだ何回でも召喚出来そう。


 というかサバチャイさんの召喚主が、ヤバい思想の持ち主だった場合、相当危ないことになっていた可能性もあったわけだ。こういってはなんだけど、僕みたいな普通の人でよかったのかもしれない。


「ルーク、お待たせてしまいました。随分とフィオレロと仲良くなったようですね。私も仲間にいれてください」


 お風呂あがりのシャーロット様とジゼル様が訓練所に戻ってきた。よくよく考えてみると貴族のご令嬢に囲まれて訓練するとか、今までの僕からしたら考えられない。しかも、風呂上がりのご令嬢……。なんだか、僕の知らないとてもいい香りがしてくる。


「まったく、ひどい目にあったぞ。それで、タマちゃんはどこにいったの?」


 サバチャイさんをいったん異世界に戻したことと、それに伴ってタマも戻ったらしいことを二人に伝えた。ジゼル様が少し寂しそうにしていたが、そんなにタマに触れたかったのか。


「そのペンダントは召喚石ですね」


 自分でも気がつかなかったのだけど、いつの間にか僕の首には紅い石のペンダントが掛かっていた。


「次回からは、その石に触れて願うだけで召喚されるはずですわ」


「おー、それは便利ですね」


「ところで、フィオレロはルークと対戦したのよね? 結果はどうだったのかしら?」


「はい、それはもう全く相手になりませんでした。スピードで翻弄しようと思ったのですが、一角ウサギがタマのトラップで、あっさりとやられてしまいました」


「タマちゃんのトラップって攻撃的なのもあるの?」


「鉄の鎧のようなものがシュパッと現れて、一角ウサギをパカッと包み込んでバシュッと……」


 フィオレロさん、擬音が多いな……。まぁ、何となく通じているんだけど。


「よくわからないけど、エゲつないトラップが発動したのでしょうね。ジゼル、落とし穴でよかったわね」


「よくないわよ!」


「それで、その拳銃といったかしら。それを何故ルークが持っているの?」


「僕の属性魔法のようで、異世界の武器を召喚できるようなのです」


 シャーロット様もジゼル様も絶句している。拳銃を持っているだけでも凄まじい戦力なのに、ポリスマンと合わせると計二つ使用できるのだ。


「……ちょっと、私にも撃たせてもらえないか?」


「ジゼル様、それが僕以外の人は触ることも出来ないんですよ。サバチャイさんも触れませんでした」


 ジゼル様は怪しむように近づいてくると、僕の右手にある拳銃を掴もうと手を伸ばした。


「うわっ、本当に掴めないよシャル。ルークばっかり、ルークばっかりズルいぞ!」


「ちょっ、ジゼル様、やめてくださいって……」


 そういって僕の首に腕を絡めるようにして、頭をグリグリとしてくるのだけど、胸が、ジゼル様の胸があたってますから。


「なんだかルーク、楽しそうね。最初に友達になったのは、私なのになんだかズルいわ」


「いえ、シャーロット様。その、どちらかというと困っているような気がしますけど……」


 フィオレロさんの言う通りでございます。貴族との接し方がいまいちよくわからなくなってきている。僕はこの環境に慣れるのだろうか……。

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