18話 属性魔法
シャーロット様の場合だと、召喚獣が水の精霊ウンディーネなので、そのまま水属性の魔法が使用できる。模擬戦やタマに撃った魔法がそれである。
問題は僕の属性魔法が何かということだ。サバチャイさんは異世界でタイ料理屋をしている訳だけど、もちろん料理属性なんてものはない。
属性は、火・水・風・土の四大属性にプラスして特殊属性の光・闇の二属性の計六属性とされている。僕も魔力はちゃんとあるので、属性魔法が使えるはずなのだ。
「ルーク、そんなことサバチャイが知ってる思ったか。サバチャイ魔法は召喚魔法しか使えないね」
「召喚ですか……。確かにサバチャイさん何故か召喚魔法が使えますけど」
サバチャイさんの召喚魔法はいろいろとおかしい。そもそも、普通の召喚魔法は召喚獣と契約をすることで使役することができるはずなのだ。サバチャイさんの召喚魔法は契約行為が省略されている。というか、ない。
ポリスマンや、絶賛僕の足下で寛いでいるタマと召喚時に契約の話はしていない。いろいろとイレギュラー過ぎて意味不明だ。
「とりあえず、ルークも何か召喚してみたらいいね。チチンポイポイでゴーね!」
「えっ、あの呪文を言うの?」
「ルーク、恥ずかしがっていたら、いつまで経っても半人前ね。さあ頭の中にイメージするよ! 最強の召喚獣を」
もう、何がなんだか訳が分からなくなってくる。僕の召喚獣はサバチャイさんで、サバチャイさんもポリスマンやタマを召喚できて、更に僕にも召喚しろという。もう無茶苦茶すぎて頭が混乱してしまう。
「ええい、やってやろう! チチンポイポイ、強そうなの出てこいっ!」
まぁ、召喚なんかできるわけない。そう思って適当に、半ばヤケクソ気味に叫んでみたのだけど。
恐ろしいことに魔法はしっかり発動している訳で……。僕の目の前には、宙に浮かぶ小さな魔方陣がキラキラと光り輝いていた。
「さすがルークね。だてにサバチャイの召喚主やってないよ」
「は、発動しちゃったよ。ど、どうしようサバチャイさん!」
「落ち着くねルーク。そんなのサバチャイが知ってるわけないよ」
まあ、そうだろうね! 適当に召喚してみろと言われて適当に召喚したら、本当に魔方陣が動き始めているのだ。
普通は地面に魔方陣が描かれて召喚獣が呼び出される。しかしながら、この魔方陣は僕の目の前に浮かんでいる。そして、魔方陣から浮かび上がってきたのは手のひらサイズの見たことのある武器。そう、これはさっき見たばかりのポリスマンの拳銃という武器だ。
「ルーク、それはポリスマンの拳銃ね! 何で拳銃が召喚されたかわからないけど、ルーク、ズルいよ!」
「こ、これが、ポリスマンの武器……召喚獣ではなく、武器の召喚?」
ずっしりと見た目よりも重く感じる鉄の武器。かなり精巧な造りをしている。この小さな武器から、とてつもない威力の爆発が起こると思うと、緊張して手汗がひどい。
「ルーク、サバチャイ的を立ててきたね! 撃ってみるといいよ。サバチャイ狙ったら呪い殺すからな」
サバチャイさんにとっても、それだけ強烈な武器なのだろう。用心深く、僕から目を離さないし、銃口の前にはもちろん立たない。
「ところで、サバチャイさん。この武器、拳銃といったっけ? どうやって使うのかな」
ポリスマンは両手で狙いを定めながら撃っていた。この指のかかるところが怪しいのだけど、ビクとも動かない。
「鉄砲は人指し指で握ればバンッね。サバチャイが見本をみせるからよく見てみるといいよ。ルーク、銃口はこっちに向けるなよ」
やはり、異世界の武器は異世界の人に任せた方がいい。間違って作動とかしないようにソッとサバチャイさんに渡そうとした。
カチャンッ!
拳銃の落ちた音にビックリして、タマが逃げ出してしまった。といっても、魔方陣のあった場所に再び戻っただけだけど。
「どういうことね!?」
拳銃は何故かサバチャイの手をすり抜けて床に落ちてしまった。
すぐに拾おうとしたサバチャイさんの手も、スカスカと拳銃をすり抜けて掴むことすらできない。わざとではない。触れていないのだ。
「ひょっとして、これって僕以外には触れることができないのかな?」
床の拳銃に手を伸ばすと、僕にはそこにあるものとして、普通に掴むことができるのだ。
「ズルいね。サバチャイが包丁なのにルークが拳銃とかとてもズルいね。サバチャイのモチベーションぐっと下がったよ」
これはこれで、とてもいい機能なように思える。これだけの危ない武器なので、敵の手に渡ってしまったら一気に形勢逆転してしまう。
「触れないならしょうがないよ。それに、その包丁だって中級召喚獣を一刀両断してみせたんだからたいした物だと思うんだけど」
「ルークは安全なところでバンバン撃っていいね。サバチャイは味方からの鉄砲に恐怖しながら、敵と近距離戦闘で死にそうになるよ」
味方の拳銃に恐怖するのは、普段の行いの結果なのではないかと思うんだ。
ステータスが上がってめっちゃ喜んでいたのに、サバチャイさんのモチベーションが駄々下がりしているようだ。まったくもって本当に面倒くさい召喚獣だ。
「そんなことより、これの撃ち方を教えてくれませんか?」
「サバチャイ、拳銃よく知らないよ。聞くならポリスマンに聞くといいね」
「あ、あのー。ルーク様、サバチャイ様、タオルをお持ち致しました」
どうやら侍従さんと思われるタオルを持った同い年くらいの女性が訓練所へとやってきた。
なろう作家にとっての養分は、ブックマークや評価(最新話一番下からできます)で応援していただけることです。ぜひ、よろしくお願いします。