プロローグ
説明チックなので読み飛ばしてもらっても大丈夫です。
下記に記載されている内容は、王立図書館にある『召喚魔法大全』の第一章、召喚魔法について初級編のページに書かれている内容である。
十四歳になる年に、召喚獣を呼び出すことで初めて魔法が使えるようになる。基準の年齢に達していることで、ある程度成熟した考えを持って魔法を行使することが許されているという判断に近いものだとされている。
召喚に使われる魔方陣は魔法学園で管理されており、入学した生徒のみが、ここで魔法の取り扱い方、対召喚獣、モンスターと呼ばれる生物との戦い方を学ぶことになる。
つまり、現代においては魔法学園に入学しなければ、召喚出来ない仕組みとなっている。
魔法学園の授業料も、それなりに高額な学費となるため、貴族の子息、お金に余裕のある商人の息子などが、魔法学園へと入学し召喚獣を呼び出すのが習わしだ。特例としては、魔力素養の高い者が奨学金制度を活用したりするケースだろうか。
つまり、学園の授業料を支払えない家では召喚自体が出来ないということになる。これは、治安維持の観点や召喚師に対して一定レベル以上の知識と教養を求める為の線引きともされている。裕福な家庭であれば、それなりの学力レベルに達しているため、簡単な線引きをしているのだ。
次に、魔法についての説明にもふれさせていただこう。魔法は、召喚獣を媒介にして発動できるようになるため、呼び出す召喚獣はとても重要となる。しかも一度その召喚獣と契約してしまうと、二度と変更することはできないので注意が必要だ。
水系の召喚獣なら水魔法、炎系の召喚獣なら火魔法といったように、使用する属性が決まってしまう場合がある。しかしながら、呼び出した召喚獣は大抵の場合において、自分に特性がある属性の召喚獣が呼ばれるケースが高いと言われている。
それでは、呼び出した召喚獣のクラス分けについても話を進めよう。
呼び出される召喚獣は、大きく三段階に分けられるが、そのほとんどが下級クラスの召喚獣となる。
つまり、中級以上の召喚獣を呼び出すことは一つのステータスとなる。中級クラスの召喚獣では全体の二%程度まで減少。上級クラスの召喚獣では目にすること自体が難しいレベルで、その割合はなんと一%を切ってしまう。
ただ、下級召喚獣を呼び出したからといってもすぐに諦める必要はない。召喚獣の成長によっては中級召喚獣へと進化を遂げる可能性が残されているからだ。またそれは、中級から上級へも然りだ。
召喚には魔力量が呼び出す召喚獣の目安となるため、血筋の由緒正しい貴族のご子息、ご令嬢ほど有利とされている。しかしながら、昨今の研究においては魔力濃度によっても高位の召喚獣を呼び出す可能性があるのではと言われている。
呼び出した召喚獣や、その成長によっては国を守るための国家召喚師として高給で雇われることになる。多くの者が安定した厚遇を求めて国の召喚師を目指す訳であるのだが、それはとても狭き門とされている。
その道はとても険しく、学園を卒業する優秀者が僅か数名選ばれる程度である。国の召喚師が難しくても、貴族お抱えの召喚師として雇われれば安泰であろう。
それ以外となると、召喚師をあきらめて実家の家業を継ぐ者、職人など生産系の職業に回る者、または夢を追い冒険者として、その日暮らしを行う者などに分かれるが、そもそも召喚獣、魔法を扱えるということがある種ステータスであることは間違いない。
以上が、第一章に記されている召喚魔法について初級編に記載されている説明である。
※※※
そして、今日その年に十四歳となる一人の若者が魔法学園の最初の授業に臨もうとしていた。学園始まって以来の豊作と言われた、奇跡の世代。
この物語は、その中でも代表格である異端者と呼ばれた召喚師ルーク・エルフェンとその召喚獣の物語である。
彼の生まれは商人の次男坊。跡継ぎでもなければ、特に何かを期待されていた訳でもなかった。
魔力量こそ平均より高い程度の生徒であったわけなのだが、彼の呼び出した召喚獣がとにかくヤバかった。
毎年、イレギュラーなケースはあるものだが彼の呼び出した召喚獣は、その何というかとにかく規格外だった。
……そう、とにかくヤバかったのだ。