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ヤンデレ悪役お嬢様は騎士さまに夢を見る  作者: ジーニー
騎士、学園祭への反抗期
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お嬢様、学園祭にてエンカウントする

お久しぶりです!

更新期間が空いてばかりでごめんなさい!

 本番当日、シドゥーレ王立学園はいつも以上の活気に包まれていた。学園に通う生徒達だけでなく、保護者や将来通うことになるだろう幼き子どもが来校し、俺が今まで見てきた中でもこの学園にここまで人がいるのを初めて見た。

 お祭り騒ぎ、大いに結構である。俺もお祭りとか大好きだし。でも、だからこそ思うんだ。


「何でここまで人がいる中で恥を晒しに突き進むんだろうな、俺……」

「シキ、無理強いはしないわ」


 元凶が何か言ってる。


「誰のせいでこんなことになったと思ってるんですか」

「わたくしよ」

「ですよね」


 仰る通りです。あんたのせいだよ、お嬢様。


 それにしたって、この人は俺と言い争いになった日から随分大人しくなった。あんまりにもメソメソしながら、「ごめんなさい、嫌いにならないで。でも、見たいものは見たいの……」とか訳わからんことばっかり言うもんだから、この人の情緒不安定さはひっどいものである。主張を一貫するなら態度も一貫していてくれないですかね。


「まぁ、今更ですしやりますけどね」

「本当にありがとう、シキ。あなたの晴れ姿を網膜に焼き付けるわ」

「むしろ観た瞬間から記憶を消していって欲しいんですが」


 お嬢様の頭をブン殴ったら記憶とか消えないだろうか。やらんけどさ。


「大丈夫よ、わたくしは家庭内暴力に理解があるわ」

「その理解は早急に投げ捨てるべきですよ」


 その歪みを受け止める奴はただの屑です。あと家庭内に俺をカウントすんな。


「で、今からオープニングセレモニーでしたっけ?」

「わたくしの夫はあなた以外考えられないのだから、正しく家庭だと思うの。ね?」

「お嬢様は俺の心の声としか会話できないんですか?」


 それもう会話のキャッチボールじゃないじゃん。ドッジボールじゃん。お願いだからちゃんと同じ競技をして欲しい。


「お嬢様、オープニングセレモニーですよね?」

「そうよ」


 これだけで終わる会話に何で遠回りしてるんだろう、俺たち。


「講堂に行って、退屈な話を聞いてからクラスの準備ね。わたくしたちは演目の最後だから、時間的に余裕があるわ」

「退屈な話とか思ってても言わないもんですよ」


 みんな早く始まれ! としか思ってないのは分かってるんだけどさ。それを貴族様が言っちゃおしまいだよね。


「まぁいいわ。空いた時間は一緒に出店を回るわよ」

「はいはい。シツコンの準備とかはいいんですか?」

「もう運営は他の者たちに任せてあるわ。当日はわたくしがシキと学園祭デートしたかったから、準備期間にある仕事を数多く引き受けておいたのよ」

「あぁ、だから忙しかったんですね」


 当日は発案者がいなくても回るように準備するって、相当大変だったろうに。この人のハイスペックさをそんなところで感じさせないで欲しい。具体的に何をしていたのか、俺は全く知らないけど。書類整理しかやらせてもらえなかった。お嬢様は俺をよく分かっていらっしゃる。


 講堂に到着し、着席する。講堂の席は自由なため、来校された保護者の方と一緒に座っていらっしゃる人も多くいる。ティアベル様も保護者とかいらっしゃっているんだろうか。キョロキョロと辺りを見回してみるが、特に見当たらないので、まだ来ていないようだ……って、あだだだだ!


「わたくしを隣に侍らせておいて、他の女を探すなんていい度胸してるじゃない」

「侍らせてって、言い方悪すぎませんかね!? というか耳引っ張らないで、痛い痛い!」


 何で怒ってるんだ、この人。しかも言い方に悪意がすごい。


「反省なさい」

「ちょっと知り合いを気にかけただけじゃないですか」

「次は口を塞ごうかしら」

「めっちゃ反省してます」


 絶対に口で口を物理的に塞ぐ気だ。俺、分かるんだよね。賢いから。


「いい子ね。御褒美に情熱的にキスするわ」

「ぜってぇ言うと思ったよ。いやです」

「つれないわね」


 つられてたまるか。

 こんな人が多いところでもお構いなしなのかよ。万年発情期過ぎるわ、この人。


 それにしても俺たちの座席の周り誰も座らねぇな。やっぱ怖いよね、お嬢様って。生徒はお嬢様のことをもう分かってるだろうし、巻き込まれたくねぇんだろうなぁ。


「ほら、もう始まりますよ」

「仕方ないわ、今はこれくらいで勘弁してあげる」


 今日のところはって言って欲しかったな。













「改めまして今日この日を無事に迎えられたことを嬉しく思います。シドゥーレ王立学園は幸運なことに伝統ある学び舎として、我が校を希望される方も年々増えております。御子息を進学させようとお考えになり、本日来校して下さった方々もいることでしょう。本日の学園祭を見て、その決意を一層固めることができるよう生徒たちも張り切って準備しておりました。是非、今日は楽しんでいってください」


 学園長の最後にそう締めくくると、一礼して降壇していった。周りの拍手に合わせて、パチパチと控えめな拍手を俺もした。来賓紹介の部分とか記憶が飛びかけてたな……。


 ちなみに最後の学園長の話を聞いて、生徒たちがビクッと反応していたのはちょっと面白かった。よかった、あんなんお見せしていいのかなとか思ってる奴が俺だけじゃなくて。


「次に生徒会会長の挨拶です」


 生徒会長さんって確か、入学式の日も何か話してた気がするな。確かロレーヌ大公家の方だったな。そんなことを考えながら、壇上で一礼する女性を眺める。彼女は少しウェーブのかかった金髪に蒼眼の小柄な女性だった。上品な所作に柔らかい雰囲気で、まさに淑女といった感じだ。あとおっぱいがでかい。


 うわぉ、美人だなぁ。お嬢様に負けてねぇや。いや、凄味だったらお嬢様のがあるけど。そんなことを考えていたら、足を踏まれた。いてぇ。


「生徒会長を務めさせていただいているマリア・ロレーヌです。本日は、…………」


 美人って得だな。それだけで話を聞こうって気になるし、すげぇ良いこと言ってる気がしてくる。生徒たちの多くは憧れや尊敬の入り混じった視線を彼女に向けている。お嬢様は大体畏怖の視線が集まってくるので、正反対もいいところだ。あの人が女王なら、お嬢様は女帝だな。あ、やめて。足踏まないで。


 下らないことを考えている間に、生徒会長の挨拶が終わり降壇していく。


「では、生徒の方々は準備に戻り、スケジュール通りに始めて下さい」


 そんな言葉を最後に各自クラスや舞台裏に戻り、俺たちの学園祭が幕を開けた。


「シキ、あの女に見惚れたわね」

「美人ですし」

「入学式の時は全然気にしてなかったじゃない」


 余裕なかったし、あの時。


「……シキはああいう女が好みなの?」

「そういう訳でもありませんよ。どっちかというと俺はお嬢様のが見た目は好みです」


 見た目はね。ああいう柔らかい雰囲気で高貴そうな女性はちょっと緊張しちゃうしな。ああも高嶺の花って感じだと、声を掛けることすら畏れ多くなる。その点、お嬢様なんて迫力満点だけど、その気の強そうな見た目は高圧的に来られそうで逆に楽だ。身構えられるし。

 特に深く考えずに放った言葉だったが、すぐに後悔した。あ、これあのパターンだ。


 お嬢様の高笑いが講堂に響き渡ったとさ。迂闊だった。











「お嬢様、あんな人目のつく場所で高笑いしてるとドン引きされますよ」


 俺はもちろん全力でドン引きしていた。


「問題ないわ」


 俺にはあるんだよ。一緒に居て恥ずかしいだろ。


「そんなことより早く回るわよ。昼餉を済ませたら、わたくしたちも準備を始めないといけないし、時間が惜しいわ」

「はいはい。了解しましたよ」

「はいは一回でいいわ」

「へーい」

「いけないお口はこれね?」

「はい! すぐに回りましょう! 楽しみだなぁ!!」


 ちょっとふざけただけなのにね。これは俺が悪いんだけど。罰の与え方の癖が強過ぎると思うんですよ。

 そんな風にふざけた頭の悪いやり取りをしていると、背後から声を掛けられた。


「スカーレットさん、お久しぶりですね」


 あ、さっき聞いた声だ。生徒会長の……


「ロレーヌ様……えぇ、お久しぶりですわね」


 式の後はお偉いさんに声を掛けられる呪いにでもかかってるんだろうか。入学式の時もあったよね、こんなこと。

 でも、美人さんだからオッケーだな!






 あ、だからお嬢様、足踏まないで!!


 

ありがとうございました!

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