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ヤンデレ悪役お嬢様は騎士さまに夢を見る  作者: ジーニー
騎士、学園祭への反抗期
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ウサ耳メイド、地獄にてただ1人正気を保つ

よろしくお願いします!

「でもでもぉ、お嬢様ってばひど〜い! いきなりこんな格好させるんだから、シキちゃんびっくりだぴょん!」(裏声)

「これは……なんと惨い」

「可愛いわ、シキ」

「やるじゃねぇか、シキ! 完璧なウサ耳メイドだぜ!」

「いい仕事しました!」


 頼む、誰か殺してくれ。この裏声きっついぞ。


 お嬢様のクラスに戻り、色とりどりのメイド達(元執事)の姿に男性貴族の方々はドン引きしていた。ちなみに御令嬢方はかなり楽し気にこちらを眺めている。やめて、写真を撮らないで。


「さて、これでシツコンは問題ないわね。アーシャさん、本当に良くやってくれたわ」

「本当だぴょん! これなら皆楽しむことができるぴょん!」(裏声)

「えへへ、私皆さんのお役に立てて嬉しいです! それじゃあ、私も自分のクラスに戻りますね!」


 ティアベル様、何でそんなイキイキしてんの。そんなに俺たちのことが嫌いか。


「あぁ、では俺たちも失礼するとしよう。い、いくぞ、ジェフ……」

「分かったぜ、若旦那ぁ!」

「お前、その格好なのに口調はそのままなんだな……」


 それぞれがクラスに戻って行く、その姿を見て俺は悲しみで胸がはち切れそうだ。ジェフ、お前も強く生きろよ……。


「お嬢様! それよりぃクラスの出し物の準備をした方がいいんじゃないんですかぁ?」(裏声)

「それもそうね。ディアナさん、台本の進捗はどうかしら?」


 あ、ディアナ様がクラスの出し物担当なのね。シツコン関係の時も真っ先にお嬢様へ意見を出していたし、こういったお祭りの頼れる御方なのかもしれない。


「あ、はい! 一通り過去に使われていた小道具の確認も済みましたし、必要なものを作る作業に入ることができると思います」

「そう、優秀ね。では、執事達はディアナさんの指示を仰いで作業に取り掛かりなさい」

「「「「「は〜い♡」」」」」(野太い声)


 何て汚い声の塊なんだ。俺もその一員なんだけどさ。

 しかし、まさかこの姿のままで本当に作業をさせられるってお嬢様の頭ってば、やっぱりおかしいわ。


「後は配役決めね、これは基本的にクラスの皆さんで決められることだから、さっさと考えてしまいましょう」

「では、配役の一覧表は机に置かせていただきます」

「ノーティスさん、どうもありがとう」


 俺達が言い渡された小道具の準備に取り掛かろうとしていると、そんな声が聞こえてくる。いいね、こういう皆で目標に向かって努力する感じ。俺は好きだよ。俺が女装させられてこんな喋り方を強要されていなければの話だけど。


「私たちはぁ、まずは材料の準備からしないといけないわねぇ」(野太い声)

「そうねぇん、確かあれよね。最近流行ってるやつよねぇ……どんなお話だったかしら?」(地声)

「確かぁ、平民の女の子と貴族のやんごとなき方のラブストーリーだったぴょん!」(裏声)


 それを貴族学園でやっちゃうんだ。いいの、それ。せめて貴族の中でも身分の低いお嬢様とかにしとけばいいじゃん。


「そうだったわねぇ。あたしも貴族様と結ばれたいわぁ。ヴェルク様とかすごくタ・イ・プ♡」(ねっとりした声)


 心まで乙女になっていやがる。頼む、正気を失わないでくれ。


「分かる! あたしもヴェルク様のあの鍛え抜かれた肉体に包み込まれたいわ」(低い声)


 お前の体格だと包み込むだろ。ヴェルク様の顔も引き攣るわ。


「わたしは断然ウーサー様よ! あの優美なお顔だけでご飯が進むわぁ」(舌舐めずりしながら)


 やめとけ。あいつはヤバいから。あと、君たち本当に学園祭終わってから、元の生活にちゃんと戻れるの?


「ぴょん! それより早く必要な材料をリストアップすべきだぴょん!」(裏声)

「はっ、そうねシキちゃん……ちょっとトリップしちゃってたわ。まずはご主人様たちに尽くさなきゃ!」


 こいつら忠誠心は変わらないで、職務に一生懸命なのタチ悪いな。厳しいこと言えねぇ。

 とにかく気を取り直して、必要な資材を確認して発注するものを選んでいく。まぁ、今日の作業でできるのはこれ位か。


「配役の方はどうなったのかな……ぴょん」


 この口調無理あるわ。やめたい。むしろ逃げたい。何で俺だけウサ耳付いてんの? おかしくない? 他の人達は全員メイド服なだけなのに、何で俺だけ属性増えてんの。


 お嬢様たちの配役の進み具合を見に行くが、どうにも主演で揉めているようだ。他は名前が埋まっているのだから、後は消去法だろうに。一体、何が原因でそんな揉めているのだろうか。


「わたくし、こんな役柄はやりませんわ」


 お嬢様が原因かよ。いや、薄々分かってはいたけどさ。あの人、いっつもトラブルの渦中に身を置きすぎじゃない?


「で、ですがスカーレット様、やはりここはスカーレット様が主演を演じていただくのが、最も舞台で映えると言いますか……」

「いやですわ。そもそもわたくしが庶民を演じるというのは、無理がありませんこと?」

「それは……そうなんですが……」


 まぁ、あの人に庶民役は無理だわな。見た目と性格からしてどっちかと言うと、ヒロインに意地悪する悪役どころが似合い過ぎる。というかあの悪役って意地悪しないだけで、まんまお嬢様だし。


「ですから、わたくしが悪役をやりますわ。そちらの方が適役ではなくて?」

「…………………………」


 黙っちゃったよ。まぁ、大公家ともあろう者が悪役をやるとか下手したら非難浴びそうなもんだから、なんとかヒロインにしたかったのだろうけど。でも、お嬢様はどう考えても悪役だよ。儚げな美少女ってことは絶対にないわ。仕方ない、ここは俺がサポートするかね。あー、あーオホン!


「お嬢様ってば、悪役やるのかぴょん!?」(裏声)

「えぇ、そうよ。シキぴょん」


 やめろ、会話のテンポを一言でぶっ壊すな。思考が止まったじゃねぇか。


「確かに似合うぴょん! お嬢様ってとっても悪役面だぴょんね!」(裏声)

「シキぴょん、燃やすわよ」


 しまった、本音が。


「そうじゃなくてぇ、お嬢様がヒロインやったら、どうしてあの人が意地悪されてんの? むしろあの人百倍にしてやり返しそうとか観客に思われちゃうぴょんね!!」(必死の裏声)

「シキぴょん、燃やされたいの?」


 あぁ、もう無理だ! サポートどころか逆鱗に触れちまったぁ!


「じょ、冗談だピョーン」(震え声)

「あら、可愛い。これはもうシキぴょんがヒロイン決定ね」


 めっちゃ怒ってらっしゃる。俺の精一杯のぶりっ子ポーズも空振りに終わってしまった。俺がヒロインとかそりゃ、貴族様と結ばれそうになったら虐められるわ。むしろヒーロー役も手を差し伸べないわ。


「お、お嬢様の冗談は面白いぴょん! そんなことあるわけないぴょん!」(必死)

「どうかしらディアナさん、もういっそコメディ路線で行くというのは?」

「……ありですね」


 ありな訳あるか。なし寄りのなしだわ。


「そう、ならラブストーリーにシキを関わらせるわけにもいかないから、ヒーローも無しね」

「それってシキちゃんがただひたすら虐められるだけってことぴょん?」(半泣き)


 誰も見ねぇわ、そんな陰惨なコメディがあってたまるか。


「違うわ。虐められ続けるシキぴょんが誰にも手を差し伸べられず、それでも立ち上がるヒューマンドラマよ」

「さっきコメディって言ってたぴょん?」

「コメディヒューマンドラマよ」


 劇の演目で初めて聞いたわ、そのジャンル。


「いえ、スカーレット様の言うことには一理あります」

「一理もないぴょん!!」(迫真の裏声)


 一理もあってたまるか。


「例えば、シキぴょん1人がヒロインで、ヒーローが現れなければ舞台は盛り上がりません」


 シキぴょんの呼称を定着させようとしないで。っていうか、ディアナ様も呼ぶんかい。


「ですが、同じように女装をした執事たちが友情でシキぴょんを支えようとしたら、状況は変わります」


 地獄に面舵いっぱい切ろうとすんな。


「その手があったわね! やるじゃないの、ディアナさん」


 ねぇよ。


「ありがとうございます。筋書きはこうです。まず貧乏な庶民シキぴょんはひょんなことから学園に入学します。しかし、その特異な容姿からスカーレット様を筆頭に虐められてしまうんです。それでもシキぴょんは、持ち前のウサ耳パワーで逆境に立ち向かいます。そして、同じ女装仲間たちに助けられて成長していく……。最後はスカーレット様もそのシキぴょんの健気さに胸を打たれて友情が芽生えるんです!」


 やめろ、脳の処理が追いつかない勢いでとんでもないストーリーを構築していくんじゃねぇ。


「い、いいかもな」

「うん、シキぴょんの力を貴族の皆が認めていくって展開、熱いかも!」


 熱くねぇ。頼むから皆目を覚ましてくれ。正気に戻ってくれ、全員の目がグルグルしてんぞ。貴族の御子息たちが謎の熱に冒されたかのように、次々と賛同していく。お嬢様もうんうんと頷いている。


「ディアナさん、わたくしどうやら貴女の力を見縊っていたみたい。ごめんなさいね」

「いいえ! スカーレット様の御意見があってこそ、このアイディアが溢れてきたんです! 皆さん、私に一日時間を下さい! きっと素晴らしい脚本を仕上げてみせます!」

「あぁ、頼むぜ!」

「楽しみにしてるね!!」

「フフ、あたしワクワクしてきちゃった」


 クラスが一つになる感覚、その感覚が全員に伝播していく。気付けばそれは熱狂的な渦となり、俺の声はもう届くことはなかった。周りを見回せば、執事たちも舞台に上がることに感激しているようだった。

 やだ、俺だけこのノリについていけないの?













 その日の使用人寮の空気は非常に重かったことだけはお伝えさせて頂きたい。

 あるよね、我に返って死にたくなる時って。 

ありがとうございました!

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