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ヤンデレ悪役お嬢様は騎士さまに夢を見る  作者: ジーニー
騎士、学園祭への反抗期
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お嬢様、HRにて悪魔の提案

よろしくお願いします!

 始まりはいつものお嬢様の戯言だった。


 新学期が始まり、少し経った頃にクラスでは学園祭の出し物について話し合いが行われていた。そう学園祭である。シドゥーレ王立学園では、毎年この時期になると学園祭が開かれる。これは貴族社会にいずれ飛び込むであろう学園生達が生徒会主導で企画、運営を行い、社会経験をしようという意図の元で行われる催しだ。したがって、教師は殆ど手を出さずに学園生のみで取り仕切られる。


 そして、この時ばかりは学園を一般開放してストーカの住民を中心に次代の貴族達の手腕を見届けつつ、楽しむことができる。いずれ入学をと考えている貴族も幼い息子、娘を連れてやってくるのだ。そこで、学園生の姿を見て、この学園を志す子どもも多いとか何とか。


 ともあれ、そんな祭りを前にお嬢様のクラスもクラス委員を中心にワイワイと企画をどうするか話し合っていたのだ。


「では、ウチのクラスの出し物は今出ている意見の中から選ぶこととします」

「他に意見はありませんか?」


 出ている意見を眺めると演劇やミュージカル、喫茶店などが出ている。喫茶店って貴族様が給仕すんの? マジで? 接客されたがる庶民とか絶対いないよ?


「どれでもいいわね……」

「お嬢様、喫茶店は絶対無理ですって」

「どうしてかしら?」

「いや、貴族様は給仕とか絶対しないでしょう?」


 そりゃあ無理だろ。何で自分がこんなことをとか言い出す人たちが容易に浮かぶんだけど。


「給仕する側の気持ちを理解するいい経験になるかもしれないわ。最悪、執事たちにやらせればいいのだし」

「それ、学園祭でも何でもないでしょ」


 俺たちの仕事増えてるだけじゃない?


「まぁ、所詮はお遊びよ。そこまで深く捉える必要もないわ」

「そうなんですけどね……」


 まぁ、俺たちが手伝うのは既定路線だし、どれになっても裏方をやるだけだからいいんだけどね。


「では、多数決を取ります」


 そうして、順当に劇を行うことが決まった。題材等はこれからだが、まぁ何でもいいや。皆さんが頑張るだろうし、俺たちもサポートすれば相応の出来で終わることができるだろう。

 そうここまではよかったんだ。普通に学園祭にむけて準備をしていくだけのことだったんだ。


「では、次に学年の催しについてです。これは各クラスで出た案から学年の委員達で選ばせて頂きます」

「何かありませんか?」


 パラパラと出る意見はミスコンだったり、学年展示の作成だったりと普通の案が多かった。多かったのだがお嬢様の燦然と輝く右手が唸った時、俺はヤバいと即座に直感したね。


「ス、スカーレット様? 何か御意見が……」

「えぇ、ありますわ」


 美しくピシッと挙げられる右手にクラス委員の方も流石にたじろいている。ちなみにクラスの他の方々は息を殺してお嬢様を見ている。一目で分かるこのヒエラルキーには参るよ。


「わたくし、執事女装コンテストを開催してはどうかと思いまして」

「…………へ?」

「もちろん、メイド男装コンテストも同時開催していいと思いますの」

「…………は、はぁ」


 もうドン引きだよ、周りの人達の顔色をもう少しだけでいいから伺って下さい。堂々と言い切るお嬢様に、クラス委員の方どころか全員がえぇ……という顔をしている。


「そ、それはどういった企画なのでしょうか? 教えていただきたいのですが」

「構わなくてよ」


 自信満々なお嬢様の様子に、もうみんな不安だらけだった。そうだよね、遠征授業の時もあの人突拍子もないこと言い出すもんな。


「まずシキ含めて執事は全員化粧をしてフリフリのドレスを着るわ」


 はい、ワンアウト。


「そして、ステージでその美しさを競い合い、あざとくて可愛い台詞やポーズを決めるの。それを監修するのはもちろんそれぞれの主人達よ」

「…………………………なるほどぉ」

「色んなお題を用意するといいですわね。もちろんわたくしの発案なのですから、わたくしが企画・運営はします」


 絶句である。皆、まだまだお嬢様のこういったぶっ飛んだ発言には対応し切れないこともあるらしい。


「どうかしら?」

「……あ、はい。意見に書き加えさせて頂きますね」

「決定ではないのですわね、まぁ、仕方のないことですけど」


 残念そうなお嬢様の顔に全員がうっそぉと言いたげな顔をしている。今の俺たちの心は1つだ。


「シキ、そういう訳だから帰りに採寸するわよ」

「しませんよ」


 そもそもまだ決まってもないだろ。


「今に分かるわ」


 分かるか。他の意見になるに決まってんだろ。


「貴方のスリーサイズが」

「しねぇって」


 そっちかよ。にしても俺のスリーサイズとかお嬢様知ってそうなもんだけど、そこは知らなかったのね。ちょっと意外だ。


「上から言いましょうか?」

「知ってるんじゃないですか」


 それはそれで何でなの? それと知ってるなら測る必要ないだろ。


「わたくしの趣味よ」

「それ言えばいいと思ってません?」


 何だこのやりとり。そんなどうでもいいことこの上ない話題はそこそこに、平静を取り戻したクラス委員の方が再び司会を始める。


「ま、まぁ学年の出し物案は次の時間に決めましょう」

「そうしましょう! 皆さん、どの案に決めるか考えておいて下さい」


 そう言うと、チャイムが鳴り休み時間になるのだった。


「シキ、少し喉が渇いたから茶を入れなさい」

「このタイミングでお嬢様から目を離せと?」

「ずっとわたくしを見つめていたいのも分かるわ」


 違う、そうじゃない。


「根回しとか脅しをするのかと思ったんですよ」

「まさか、そんなことはしないわ。皆さんの意思を歪めるのは望むところではないもの」


 ほう、お嬢様にも人の心があったのか。やはり、なんだかんだと言ってもお嬢様は心優しいお方だ。そういうことであれば、喜んで茶を入れる準備をしておこうじゃないか。


「んじゃ、行ってきますよ」

「えぇ、行ってらっしゃい」


 全くお嬢様も成長されているんだなぁ、皆さんはきっとあんなトチ狂った意見を選ばないだろうし、安心だよね。そう考えて俺は美味しいお茶を入れようと準備に動き始めるのだった。
















「……では全員一致で執事女装コンテストということになります」


 まぁ、オチは見えてたよね。 お嬢様以外、全員俯いてんじゃねぇか!

 そして、学年のクラス委員の集まりでもお嬢様が演説をした結果、全員俯いたまま同意し、執事女装コンテストは可決されたのだった。やだ、この学園ってば本当に権力が強いんだから、もう。


ありがとうございました!

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