騎士とお嬢様、海辺にて夏満喫
お久しぶりです、よろしくお願いします!
分割したので、またすぐに投稿します!
隊長と別れて数日後、俺はスカーレット家の屋敷にて仕事を終えて修行に励んでいた。先日の戦闘では、第二王子に手も足も出なかったという事実が俺を焦らせる。このままの俺では勝てない。そうした厳然たる事実は俺の心に重いプレッシャーとなっていた。
お嬢様もあれから魔術の勉強に一層精を出している。そう思っていた矢先にお嬢様の思いつきが飛んできた。
「シキ、海へ行くわよ」
「えー」
俺、修行したいんですけど。
「ダメね、それより休みらしいことをするべきよ」
「結構遊んだ気がするんですけど、気のせいですかね」
俺としては第二王子のこともあるし、修行だのなんだのをしておきたいところなんだけど。お嬢様もそうでしょ。
「遊んだといっても、山に行って川ではしゃいだり、王都でショッピングしたり、祭りに出掛けたりした位じゃない」
「割と遊んでますよね?」
意味の分かんない撮影会とかもしたし。それで良くない? 何であんな事があって、この休みが終わる間際まで遊び尽くす気満々なの、このお嬢様。
「イチャイチャが足りないわ」
「した覚えもありませんしね」
「あら? わたくし、一回もシキとなんて言ってないわよ?」
ぐう。
ぐうの音が出るくらい正論である。クソ、俺もいよいよヤキが回ってきてんな。酒とか呑んだ覚えはないんだけど。ニヤニヤ笑っているお嬢様の顔がムカつく。ようやく染まってきたわねとか言いそう。
「ようやく染まってきたわね。もちろん、わたくしとシキのことよ」
ほら、言ったよ。しかも当たってんのかよ。
「それよりもやっぱり身体を鍛えたり、情報収集したりする方が大切なんじゃないんですか?」
「それも正論だわ。だけど思うのよ」
憂いを帯びた顔でお嬢様は神妙に話す。まさかお嬢様は最近思い詰めつつある俺の様子を心配して、息抜きをしようと言い出したのではないか。だとしたら、主人に心配を掛けてしまった俺は騎士失格だ。こうなれば、俺もお嬢様の提案に乗ってあげるべきか……。
「わたくしはそれよりも欲望に正直でありたいと」
「俺のモノローグを返せ」
そんな訳で、海に遊びに行く事になりました! なんでだよ!!
結局、海に来た。細かい道中については語ることを控えさせて頂きたい。そうして、1日かけて訪れたのはスカーレット家の保有するプライベートビーチである。無論、プライベートビーチなので人気はない。無いのだが、それにしたってこれは酷いと思うんだ。
「シキ、どうかしらこのわたくしの美しき裸体は? 興奮した?」
「頼むから水着を着て下さい」
何で裸なの? 本当に頭おかしい露出狂だよ。お願いだから恥じらいをもって。さっきから終始、目を瞑ってるんだけど、俺はどうしたらいいの。
「あら、どうしたのかしら? 鼻血が出てるわよ」
「そんな訳ないじゃ無いですか、俺は一切目も開けずにいるのに、何を見て興奮するんです?」
「最初に別荘から出てきたわたくしを見たでしょ?」
チラッとね。目に入っちゃたら仕方なく無い? ズルい、ボンッ、キュッ、ボンはズルい。初心な俺の気持ちをもう少し分かって。刺激が……刺激が強すぎる……! 青い海、青い空、白い雲、そんな最高のロケーションで俺の視界はずっと真っ暗闇である。目を開けたい。何ならお嬢様の裸もちょっと見たい。ごめんなさい。最近、謝ってばっかなんですけど。
「きゃっ、バランスを崩してしまったわ」(棒読み)
「グアァァァァ!」(迫真)
や、やめろぉ!! 俺の心を惑わせるんじゃない、この魔女め! やったー! 絶対屈してやるもんか、紳士的に受け流してやる! やったー! ここはしっかりとお嬢様を立たせて、優しく服を着せてやるんだ! やったー! さっきから心の声がうるせぇ!!
煩悩まみれだよ! 弱いな……俺。でも、どうか男なら分かって欲しい。俺だって思春期の男の子なんだよぅ。
「……お、お嬢様、まずは距離をとって服を着ましょう。可愛い従者からのお願いです」
「わたくし、最近気付いたのだけど、結構意地悪なのよね」
常識的な提案を拒否すんな。あと結構じゃなくて物凄く意地悪な人だと思います。しかも、最近気付いたって嘘でしょ。
「鍛えてる身体って良いわね。安心感があるわ」
「胸を撫でないでください」
やらしいですよ。どこ触ってんですか。
「わたくし、煩悩が多いの」
「知ってますが?」
「シキも触る?」
わーい! 負けんな、俺。でも……わーい! 負けそう。
最近はお嬢様の意味不明さにも慣れてきちゃったから、普通に容姿が美しくて困る。前は綺麗とか可愛いとか思う前に怖いだったのに、最近は意味不明な怖さよりもそっちに目が行くんだよなぁ……。
しかし、ここで負ける訳にはいかない。普通に海を楽しむんだ! こんなこともあろうかと、事前に話は通してあるんだ。
「シアさーん! セバスさーん! 助けてくださーい!!」
「無理です」
「無理ですな」
あの2人、割とあっさり俺を諦めるよね。
「お嬢様、あの2人も居ますし、こんな所で裸はやはり不味いのでは……」
「あのね、シキ」
何とか説得を試みようと、正論を投げ掛ける。目は瞑ったままだ。いつになったら開眼できるんですかね。どうせビーチに来たのなら、早く俺泳ぎたいです。
「あの2人に裸を見られるとか今更なのよ」
終わった。そりゃそうだわ。着替えとかそこら辺の世話とかもシアさんならするだろうし、セバスさんはセバスさんだし。
「さて、そろそろ目を開けなさい。そして、目に焼きつけなさい。あとわたくしに日焼け止めを塗りたくりなさい」
無理無理無理、気絶しちゃうわ。どうしよう、どうしたら、どうすればいいんだ……! 思考がグルグルと回る、ダメだ、何考えてんのかも訳分かんなくなってきた。
「……お、俺!」
「何かしら?」
「お嬢様の水着姿を見たいです!!!」
着替えてくれました。
「シキ、シキが見たがっていた水着姿よ。感想を述べなさい」
「大変良く似合っております」
「もっと具体的に褒めなさい」
要求のハードルが高い。
それ絶対難しいやつだろ。それより泳ぎましょうよ。
「まぁ、やっぱりお嬢様は赤が良く似合いますよね……髪色とか雰囲気と合ってて、綺麗です」
「そうね」
どうやら俺の答えは正解だったらしく、お嬢様は得意げに微笑んでいた。よし、じゃあ泳ぐか!
「早速ですがお嬢様、あの島まで泳ぎましょう!」
「嫌よ、どれだけ距離があると思っているのかしら」
分かんないけど、凄く有意義だと思うんです。遠そうだしね。
「じゃあ、セバスさん達も入れて何かしますか」
「そうね、適当に遊びましょ」
4人で遊ぶ事になって、ホッとする。まぁ、これで惨劇が起きることもないだろう。砂遊びとかかな?
「シキとわたくしを砂で埋めるわ」
「その発想はちょっとなかったなーって」
こういうのって1人をみんなで埋めるとかじゃないんだ。俺も殆ど海で遊んだ経験も無いから知らないんだけどね。それにしても、どうしてシアさんとセバスさんはもうスコップを持ってるんです? 埋める気満々じゃないですか。
「やはり海は少し人を大胆にしますな」
「はい、私も舞い上がっているみたいです」
「できるだけわたくしとシキを密着させなさい」
改めてスカーレット家って話が通じねぇなぁと思ったね。言われるがまま埋められてる俺もアレだけどね。
そして、綺麗なオブジェが完成しました!
あったかくて、お嬢様と距離が近い……。何でこんなにお嬢様が近いの。貞操観念ぶっ壊れ過ぎじゃない? あと身動き一つできないんだけど、砂の密度やばいって。
誰かー! 助けてくださーい!
「仕方ないわね」
あんたじゃねぇよ! むしろあんたが脅威なんですけどね!
ありがとうございました!





