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ヤンデレ悪役お嬢様は騎士さまに夢を見る  作者: ジーニー
お嬢様、長期休暇にて修羅場
52/66

騎士とお嬢様、海辺にて夏満喫

お久しぶりです、よろしくお願いします!

分割したので、またすぐに投稿します!

 隊長と別れて数日後、俺はスカーレット家の屋敷にて仕事を終えて修行に励んでいた。先日の戦闘では、第二王子に手も足も出なかったという事実が俺を焦らせる。このままの俺では勝てない。そうした厳然たる事実は俺の心に重いプレッシャーとなっていた。

 お嬢様もあれから魔術の勉強に一層精を出している。そう思っていた矢先にお嬢様の思いつきが飛んできた。


「シキ、海へ行くわよ」

「えー」


 俺、修行したいんですけど。


「ダメね、それより休みらしいことをするべきよ」

「結構遊んだ気がするんですけど、気のせいですかね」


 俺としては第二王子のこともあるし、修行だのなんだのをしておきたいところなんだけど。お嬢様もそうでしょ。


「遊んだといっても、山に行って川ではしゃいだり、王都でショッピングしたり、祭りに出掛けたりした位じゃない」

「割と遊んでますよね?」


 意味の分かんない撮影会とかもしたし。それで良くない? 何であんな事があって、この休みが終わる間際まで遊び尽くす気満々なの、このお嬢様。


「イチャイチャが足りないわ」

「した覚えもありませんしね」

「あら? わたくし、一回もシキとなんて言ってないわよ?」


 ぐう。

 ぐうの音が出るくらい正論である。クソ、俺もいよいよヤキが回ってきてんな。酒とか呑んだ覚えはないんだけど。ニヤニヤ笑っているお嬢様の顔がムカつく。ようやく染まってきたわねとか言いそう。


「ようやく染まってきたわね。もちろん、わたくしとシキのことよ」


 ほら、言ったよ。しかも当たってんのかよ。


「それよりもやっぱり身体を鍛えたり、情報収集したりする方が大切なんじゃないんですか?」

「それも正論だわ。だけど思うのよ」


 憂いを帯びた顔でお嬢様は神妙に話す。まさかお嬢様は最近思い詰めつつある俺の様子を心配して、息抜きをしようと言い出したのではないか。だとしたら、主人に心配を掛けてしまった俺は騎士失格だ。こうなれば、俺もお嬢様の提案に乗ってあげるべきか……。


「わたくしはそれよりも欲望に正直でありたいと」

「俺のモノローグを返せ」


 そんな訳で、海に遊びに行く事になりました! なんでだよ!!













 結局、海に来た。細かい道中については語ることを控えさせて頂きたい。そうして、1日かけて訪れたのはスカーレット家の保有するプライベートビーチである。無論、プライベートビーチなので人気はない。無いのだが、それにしたってこれは酷いと思うんだ。


「シキ、どうかしらこのわたくしの美しき裸体は? 興奮した?」

「頼むから水着を着て下さい」


 何で裸なの? 本当に頭おかしい露出狂だよ。お願いだから恥じらいをもって。さっきから終始、目を瞑ってるんだけど、俺はどうしたらいいの。


「あら、どうしたのかしら? 鼻血が出てるわよ」

「そんな訳ないじゃ無いですか、俺は一切目も開けずにいるのに、何を見て興奮するんです?」

「最初に別荘から出てきたわたくしを見たでしょ?」


 チラッとね。目に入っちゃたら仕方なく無い? ズルい、ボンッ、キュッ、ボンはズルい。初心な俺の気持ちをもう少し分かって。刺激が……刺激が強すぎる……! 青い海、青い空、白い雲、そんな最高のロケーションで俺の視界はずっと真っ暗闇である。目を開けたい。何ならお嬢様の裸もちょっと見たい。ごめんなさい。最近、謝ってばっかなんですけど。


「きゃっ、バランスを崩してしまったわ」(棒読み)

「グアァァァァ!」(迫真)


 や、やめろぉ!! 俺の心を惑わせるんじゃない、この魔女め! やったー! 絶対屈してやるもんか、紳士的に受け流してやる! やったー! ここはしっかりとお嬢様を立たせて、優しく服を着せてやるんだ! やったー! さっきから心の声がうるせぇ!!

 煩悩まみれだよ! 弱いな……俺。でも、どうか男なら分かって欲しい。俺だって思春期の男の子なんだよぅ。


「……お、お嬢様、まずは距離をとって服を着ましょう。可愛い従者からのお願いです」

「わたくし、最近気付いたのだけど、結構意地悪なのよね」


 常識的な提案を拒否すんな。あと結構じゃなくて物凄く意地悪な人だと思います。しかも、最近気付いたって嘘でしょ。


「鍛えてる身体って良いわね。安心感があるわ」

「胸を撫でないでください」


 やらしいですよ。どこ触ってんですか。


「わたくし、煩悩が多いの」

「知ってますが?」

「シキも触る?」


 わーい! 負けんな、俺。でも……わーい! 負けそう。

 最近はお嬢様の意味不明さにも慣れてきちゃったから、普通に容姿が美しくて困る。前は綺麗とか可愛いとか思う前に怖いだったのに、最近は意味不明な怖さよりもそっちに目が行くんだよなぁ……。

 しかし、ここで負ける訳にはいかない。普通に海を楽しむんだ! こんなこともあろうかと、事前に話は通してあるんだ。


「シアさーん! セバスさーん! 助けてくださーい!!」

「無理です」

「無理ですな」


 あの2人、割とあっさり俺を諦めるよね。


「お嬢様、あの2人も居ますし、こんな所で裸はやはり不味いのでは……」

「あのね、シキ」


 何とか説得を試みようと、正論を投げ掛ける。目は瞑ったままだ。いつになったら開眼できるんですかね。どうせビーチに来たのなら、早く俺泳ぎたいです。


「あの2人に裸を見られるとか今更なのよ」


 終わった。そりゃそうだわ。着替えとかそこら辺の世話とかもシアさんならするだろうし、セバスさんはセバスさんだし。


「さて、そろそろ目を開けなさい。そして、目に焼きつけなさい。あとわたくしに日焼け止めを塗りたくりなさい」


 無理無理無理、気絶しちゃうわ。どうしよう、どうしたら、どうすればいいんだ……! 思考がグルグルと回る、ダメだ、何考えてんのかも訳分かんなくなってきた。


「……お、俺!」

「何かしら?」

「お嬢様の水着姿を見たいです!!!」


 着替えてくれました。
















「シキ、シキが見たがっていた水着姿よ。感想を述べなさい」

「大変良く似合っております」

「もっと具体的に褒めなさい」


 要求のハードルが高い。

 それ絶対難しいやつだろ。それより泳ぎましょうよ。


「まぁ、やっぱりお嬢様は赤が良く似合いますよね……髪色とか雰囲気と合ってて、綺麗です」

「そうね」


 どうやら俺の答えは正解だったらしく、お嬢様は得意げに微笑んでいた。よし、じゃあ泳ぐか!


「早速ですがお嬢様、あの島まで泳ぎましょう!」

「嫌よ、どれだけ距離があると思っているのかしら」


 分かんないけど、凄く有意義だと思うんです。遠そうだしね。


「じゃあ、セバスさん達も入れて何かしますか」

「そうね、適当に遊びましょ」


 4人で遊ぶ事になって、ホッとする。まぁ、これで惨劇が起きることもないだろう。砂遊びとかかな?


「シキとわたくしを砂で埋めるわ」

「その発想はちょっとなかったなーって」


 こういうのって1人をみんなで埋めるとかじゃないんだ。俺も殆ど海で遊んだ経験も無いから知らないんだけどね。それにしても、どうしてシアさんとセバスさんはもうスコップを持ってるんです? 埋める気満々じゃないですか。


「やはり海は少し人を大胆にしますな」

「はい、私も舞い上がっているみたいです」

「できるだけわたくしとシキを密着させなさい」


 改めてスカーレット家って話が通じねぇなぁと思ったね。言われるがまま埋められてる俺もアレだけどね。

 そして、綺麗なオブジェが完成しました! 

 あったかくて、お嬢様と距離が近い……。何でこんなにお嬢様が近いの。貞操観念ぶっ壊れ過ぎじゃない? あと身動き一つできないんだけど、砂の密度やばいって。

 誰かー! 助けてくださーい!


「仕方ないわね」


 あんたじゃねぇよ! むしろあんたが脅威なんですけどね!

ありがとうございました!

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