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ヤンデレ悪役お嬢様は騎士さまに夢を見る  作者: ジーニー
お嬢様、長期休暇にて修羅場
35/66

騎士、屋敷にて魔人と成る

よろしくお願いします!

 俺の痴態を再生された後、隊長はすっかり黙ってしまった。お嬢様は勝ち誇ったような笑みを浮かべて、お茶を優雅に飲んでいる。すげぇ悪い顔だ。悪魔かな?


「お嬢様、何故こんな辱めを俺が受けなければいけないんです?」

「こういう輩は口で言っても負けを認めないものよ。だから、徹底的に潰すの」

「これ、オレの1人負けじゃないですか」


 何で隊長が負けたことになるのか、それが分からない。


「まぁ、理解する必要もないわ。些事よ、こんなもの」

「些事で俺を辱めたんですか?」


 なんて酷い人なんだ。やっぱり悪魔だろ。


 そんな俺たちのやり取りも聞こえないのか、隊長は俯いて黙ったままだ。この人はこの人で、何を打ちのめされてるんだ。打ちのめされたの、俺よ?


「アリシアさん、ご理解頂けたかしら? わたくしとシキの絆というものが」

「……………………」


 追い討ちかけやがった。よく分からんけど。

 それはもう重い空気だったので、耐えきれずに思わずお嬢様に話しかけてしまう。話そうとして、すぐに後悔したけど。


「お嬢様、お嬢様が俺をその……慕って……ほら……好意的に見て下さっているのは……うん、知っていますが……はい。隊長は関係ないと思うのですが」


 うわ、これすごい恥ずかしい。何で貴女は俺のことを好きじゃないですか? みたいなこと言わなきゃいかんの。言わなきゃよかった。


「シキ、照れているのも可愛いわね。何してもカッコいいのに、反則だわ」


 この会話、俺しかダメージないと思うんですけど、違うの?


「フフ、それにトドメを刺してくれるなんて、主人想いなのね。聞きました、アリシアさん? 貴女は関係無いんですって」

「…………………………殺してやる、このクソ女ぁ!! シキを誑かしやがって! 魔女が!!!」


 隊長が叫び、大鎌を掴もうとするその手を大剣で抑え込む。


「申し訳ありませんが、隊長といえど、お嬢様に危害を加えるのであれば容赦しません」

「シキ! 何でその女を庇うのよ!! そいつに拉致監禁されて無理矢理契約されたんでしょ!?」


 隊長の言葉と共に、手に力が籠るのを大剣越しに感じる。大鎌を手繰り寄せられないように、俺も更に力を込める。


 それにしてもなるほど、ようやく合点がいった。隊長がここまで怒り狂ってたのは、俺の為か。無理に服従させられて、騎士として護衛をさせられていると勘違いしているんだな。


 隊長、なんだかんだで仲間想いの人だし。頭おかしいけど。


「最初はそうでしたが、今は明確に自分の意思でこの方をお守りしています」

「なんで……? そいつ、シキに酷いことしてる。洗脳でもされたの? 喋り方が違うのも、そのせいなの?」

「いえ、そんなことは全くありませんが?」

「じゃあ、何でなのよ!!!?」


 隊長の顔が悲痛に歪む。その叫びは泣いているようで、胸が痛む。でも、もう決めたことだから、答えは変わらない。


「恥ずかしながら、先程再生された言葉が全てです。この人の我儘に付き合おうと決めたんです」

「それが何でって、聞いてるのが分かんないの!?」

「お嬢様、俺の後ろに!!」


 隊長の力が爆発的に上昇し、抑え込めなくなってくる。ヤバい、魔術を使う気だ。屋敷ごと吹っ飛んじまう!

 何とか思い留まらせようと、仕方なく俺も叫ぶ。


「好きって言ってもらったからだよ!!! だから、俺はこの人に仕えるんだ!」

「………………は? それだけ?」


 急速に力が萎むのを感じ、再び大剣で隊長を抑え込む。

 よく分からんが、正解を引き当てたらしい。よかった。恥ずかしいけど、本音を言うのは大切だね。


「それだけって、俺、女の子に好きって言ってもらったの初めてですし」

「そんなの! ……あたしだって」


 隊長が何かを呟いたようだが、それは俺の耳には届かなかった。


「恥ずかしい理由ですけど、男が女に肩入れする理由は大体それです。下心塗れですし、俺の場合だけかもしれませんが」

「…………じゃあ、あんたは他の女にこれから好きって言われたらどうすんのよ」

「え? 断りますけど?」

「はぁ!? 何でよ!?」


 俺の返答に、隊長が納得できないと言わんばかりに叫ぶ。どうしてだよ、そこは納得してよ。


「決まってるじゃない。シキはもうわたくしのモノだからよ」

「あんたには聞いてないわよ、イカれ女」

「隊長、だから言葉が過ぎますって」


 もう今更感あるけどさぁ。


「まぁ、最初に言ってくれましたし、振りましたけど」

「は!? あんた振ったのに、あんなこと言ったの!?」

「それを言われると弱いですね、ヘヘ」

「何照れてんのよ! 気色悪い!!」

「可愛いじゃない」


 混沌も極まってきた感あるね。













「とにかく、俺はお嬢様の側付きになったことに後悔はありませんよ。怖いですけど、大分慣れましたし」


 面倒になってきたので、強引に話をまとめにかかる。そろそろ疲れてきたよ。


「振ったのに?」

「振っても、嬉しかったかどうかとお守りするかどうかは関係無いですよ」

「そもそも振られてないわ」

「話、ややこしくするのやめてもらえません?」


 降り出しに戻っちゃうだろ。


「それに決定的な理由があるわ」

「はぁ? 何それ?」


 怪訝な顔をする隊長に、お嬢様はそれはもう自信たっぷりに言い放った。


「シキはね、おっぱいが好きなのよ」


 見せつけるように、その豊かなお胸を下から抱えるように腕で支えて。

 もうね、何も言えませんよ、はい。


「シキは時々舐め回すようにわたくしのおっぱいを見てくるわ」

「見てません」


 見てませんよ。いやでも、チラッとはね、チラッとね。


「他の下衆に見られても不快だけど、シキにはむしろフルオープンで見せるのに、バレないように見てくるのよ。バレてるけど」


 気をつけよう。本当に。……バレていたのか。でも、男なら見ちゃわない? すいません。

 お嬢様のおっぱい演説は続く。


「シキはもう他の女のダラシない、もしくは貧相な身体には戻れないのよ。アリシアさんは……強く生きるといいわ」

「このアマァ!!」

「駄目です! 隊長、駄目ですよ! 強く生きてください!」

「そこはあの女の言葉を否定しなさいよ!!」


 掴みかかろうとする隊長を慌てて羽交い締めにする。


 お嬢様はそんなやりとりをする隊長のお可愛い胸部を改めて見る。

 そして、フッとお嬢様は見下すように隊長を嗤った。ひでぇ。悪の女だ。略して悪女だ。


「シキのアホ! おっぱい魔人! もう知らない!!」

「あっ、こら! 何て捨て台詞で出て行こうとしやがる!!」


 隊長はベソかきながら、捨て台詞と共に屋敷を出て行ってしまう。


「わたくしの勝利のようね」


 えぇ、そして隊長とおっぱい魔人の敗北です。


ありがとうございました!

少し下品な回ですいませんでした! でも、楽しかったです。


面白かったり、気に入らなかったりしたら、感想でご指摘ください!

ブクマ・評価もお待ちしております。

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