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ヤンデレ悪役お嬢様は騎士さまに夢を見る  作者: ジーニー
お嬢様、長期休暇にて修羅場
32/66

お嬢様、学園にて憂鬱な気分

よろしくお願いします

「もう駄目ね……限界よ」


 過去1番に辛い事態だ。わたくしの身体はもう既に満身創痍だった。このエリザ・スカーレット、自分自身がここまで追い詰められたことはない。ないったらないわ。


「シキに会えないことがこんなにも辛いだなんて……」


 あぁ、イゾン大森林の一件は自責の念で辛かったが、今は自分の環境が耐えられない、辛い。周りにもわたくしにも被害はないというのに、目は霞み、頭痛も酷く、手が震えている。


「わたくし……もうすぐ死ぬのね……」


 シキ、ごめんなさい。あんなにもわたくしに熱烈な愛をぶつけてくれたというのに、わたくしはそろそろ死んでしまうかもしれないわ……。ゾンビになってでも会いに行くから、どうかわたくしを愛しなさい。


「お嬢様、トアルさんと別れて半日も経っておりません。どうか気を確かに」

「時間なんて些末な問題よ。わたくしの感知範囲内にシキがいないことが問題なの」


 具体的には半径5kmくらいね。


「……昔はこんなに頭が沸いていませんでしたのに」


 シアが何か呟いたようだが、シキのいない苦しみに悶えていたわたくしには届かなかったわ。

 あぁ、何て辛い日々なのかしら。
















「お嬢様、トアルさんから御手紙が届いていますよ」

「早く寄越しなさい!」


 シキと別れて2週間が経った。本当、そろそろ死にそうだわ。

 とにかくシアが持ってきた吉報に、かつてない速度で反応する。どうしてシキの手紙は週に1回しか来ないのかしら!? わたくしは毎日手紙を送っていますのに。


「そもそもお嬢様はトアルさんと別れる前から、御手紙をしたためていらっしゃいましたからね……。普通あり得ません……引きます」


 今、この子主人に向かって引くとか言わなかったかしら?


「気のせいです」

「ならいいわ。それより手紙を保存しなくてはならないわね。早く保存魔術の掛けられた箱を用意なさい」


 逸る気持ちを抑え、いえ、抑えられなかったわ。気付くと開封されていた手紙を読む。便箋1枚いっぱいに書いてくれているわ……! この前の手紙より3文字多いし、シキも早くわたくしに会いたいと思っていることが伝わってくるわ!!


「どんな内容でしたか?」

「待ちなさい。今、5回目の読み返しよ。後20回読み返したら話すわ」


 わたくしの用意した箱を持ってきたシアが尋ねてくるが、今はそれどころじゃない。早く暗記しなくてはいけないもの。

 フフ、シキったら便箋の枚数と手紙の頻度を抑えてくれなんて、可愛いわ。きっと照れているのね。それに手紙を返せないのが申し訳ないのよね。分かっているわ。


「ふぅ……覚えましたわ。保存しましょう」

「まだ渡した直後と言って差し支えがないのですが……」


 何故か戦慄した顔をしているシアを見て、仕方なく、本当に仕方なく内容を伝える。


「シキはもう回復したようね。わたくしと会えないのが辛いみたいよ。それから便箋の枚数と頻度が多いからやめて欲しいと伝えてきたわ。どうにも照れているのね、可愛いわ。今度、セバスと執事の修行をまたするらしいわ。わたくしのために健気よね。それに手紙の文字数も3文字増えていたから、早くわたくしに会いたい気持ちが伝わってきたわ。あと書いてはいなかったけど、わたくしのことを愛しているというメッセージも込められていたわね」

「よくそこまで一気に話せますね……というか、手紙の文字数も覚えてらっしゃるんですか」


 どうやらシアはわたくしの愛に感嘆しているようだった。シアもきっと恋をしたら分かるわ。相手の気持ちがまるで手に取るように分かるようになるのよ。

 そう告げた時のシアの微妙そうな表情は、何だか納得いかなかったわ。
















「あ、エリザ様、おはようございます!」

「えぇ、アーシャさんもおはよう」


 シキと離れて3週間、いくら互いに想い合っているとはいえ、そろそろ手の震えも止まらなくなってきた。そんな朝もアーシャさんと登校する。学園に戻ってからは毎朝の光景だ。


「シアさんもおはようございます!」

「はい、ティアベル様。おはようございます」


 シアもアーシャさんも人見知りを全くしないので、2人は会ったその日には馴染んでいた。


「シキさんがスカーレット家のお屋敷に行ってから、3週間経ちましたね! そろそろエリザ様も慣れてきましたか?」

「全然慣れないわ。悪化するばかりね、シキの不味いお茶が恋しくなってきているもの」

「よければ不味くお作りしますが」

「何言ってるのよ、シキが作らないもので不味いことは許さないわ」


 何言ってるのかしらね、全く。


「このお嬢様、面倒臭い……」

「アハハ、私もこの温度差にはビックリします」

「そもそもシアが不味く作っても、シキほど不味くはならないわ」


 シアは仕事ができるもの。毎日の快適さは正直、シキではなくシアになってから段違いね。


「トアルさんのセンスがないだけです。あと空気も少し読めませんし」

「そうね、シキは執事としては微妙ね。特にお茶を入れるのは」

「ボ、ボロボロな評価ですね、トアルさん」


 温度管理とかが下手すぎるわ。他の雑用はそれなりになったものだけれど、料理系に関しては味付けとかも雑過ぎて、食べれれば良いと思ってるのがよく分かるわ。


「そういえば、アーシャさんは長期休暇は実家に帰るのかしら?」

「そうですね! 実家の手伝いとかをする予定ですよ」

「大変ね、もし機会があればウチに誘おうかと思っていたのだけれど」


 イゾン大森林の一件では、大層お世話になったし、何かしらのお礼ができればと思ったのだけど。残念ね。


「お、畏れ多いですよぅ! 少し行ってみたいですけど……」

「そう、また都合が合いそうだったら教えなさい」

「はい、是非お願いします!」


 良いこと聞いたわね、アーシャさんが来る時はとびっきりのご馳走を用意しなくてはいけないわ。


「……お嬢様が御学友と親しげになさるとは……。このシア、感動で涙が出そうでございます」


 シア、結構言うようになったわね。















 授業後の帰り道、ヴェルク・イージスとジェフ・ガレッドと出会った。


「スカーレット嬢、久しいな」

「えぇ、元気そうね。その節は世話になったわ」


 本当に久しぶりね。ヴェルクとはあの件以来は、会うことはほとんどなかった。何でも彼は彼で家の方に報告があるとかで、しばらく学園を留守にしていたのだ。


「王都でコーズとザディスに会ったがな。もう快方に向かっているようだ」

「それは何よりね。わたくしやアーシャさんとしても、あの2人には会っておきたかったのだけれど」

「まぁ、難しいだろうな。また復帰した時にでも声を掛けてやってくれ」


 あの2人が回復できたなら何よりだ。あの一件で、護衛は死なせてしまったとはいえ、グループメンバーが死ななかったのは奇跡だろう。

 改めてその幸運を確認し、胸の中でホッと息を吐く。


「シキも元気になったらしいな。是非また手合わせを頼みたいものだ」

「ボロ雑巾にされる貴方の顔が浮かびますわね」

「容赦ないな、流石スカーレット嬢だ」


 フン、そもそもシキの実力を目の当たりにして、まだ挑む気概あるとは愚かなのか勇敢なのか分からないわね。そういう感性は理解できないわ。


「しかしよぉ、スカーレット様はそんだけシキに会えねぇと鬱憤も溜まってそうですねぇ」

「ヴェルク、以前から思っていたのだけど、この男の品性はどうにかならないのかしら」

「キツく言っておくが、治らんくてな」

「そう、シキに悪影響を与えそうで不安だわ。クビにしたらどうかしら?」


 シキでも相手は選んでるわよ。


「まぁ、腐れ縁もある。申し訳ないが、あの一件を乗り越えた仲間だ。許してやってくれ」

「甘いことね」

「お嬢様も大概にございます」


 シア、わたくしはいいのよ。


「わたくし、鬱憤は溜まっているけれど、今は心にゆとりがあるのよ」

「ほう? シキと何かあったのか?」

「熱烈に愛を叫ばれましたわね」

「へぇ!! あいつもやるじゃねぇか!」


 故に禁断症状が多少出ても耐えられるのだ。何たって、シキはわたくしに何があっても最後まで付き合うと叫んでくれたのだから。もしやこれがプロポーズかしら?


「違います、お嬢様」

「意味は変わらないわよ」

「……スカーレット家は基本的に読心に長けているのか?」

「いえ、口に出さずとも見れば分かることですので、読心などはできません」


 全く使用人が優秀過ぎても困り物ね。


「何にせよ、今後もスカーレット嬢は奴等と事を構える機会があろう。その時は全力で手を貸させてもらうぞ」

「それは心強い限りね、よろしくお願いするわ」


 わたくしにとって、グループメンバーはもう信頼に足る人物たちだ。是非頼らせてもらいましょう。

 そんなことを話して帰路に着く。あぁ、そろそろシキに会えるのね。
















 そして、再会の時は来たわ。


「シキ、会いたかったわ!!」

「げぇっ!! お嬢様!? 早くないですか!?」

ありがとうございました。


ブクマ・評価・感想頂けるとめちゃ嬉しいです。

あとヤンデレヒロイン、愛重い系ヒロイン好き増えろ!! と願って投稿しました。

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