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ヤンデレ悪役お嬢様は騎士さまに夢を見る  作者: ジーニー
騎士にとってのプロローグ
3/66

騎士、お嬢様の部屋にて禁忌を知る

よろしくお願いします!

 おかしい、なんで俺はまた投獄された感じになってるんだ? あのお嬢様、俺を引き抜くみたいなこと言ってたけど……ウチの隊長がそんなこと知ったら、殺される未来しか見えない。

 あれ? これは逃げるべきでは?

 

 どちらにせよお先真っ暗だ。あのお嬢様はなんか怖い。隊長は鬼で怖い。もう契約しちゃったから考えても意味ないんだけどね!

 何にせよ、お嬢様がある程度まともな人間だと思いたい。今回の件はちょっとお茶目な暴走だと思いたい。幸い、今回は縛り付けられているわけではないから、部屋を見て回ることができる。逃げ出すとかはもう無理だけど、お嬢様について調べることくらいはできるはずだ。

 

 そう考えて、部屋の中を物色していると一冊の日記を見つけた。というか机の上に『シキ日記』とかいう恐ろしいネーミングで堂々と存在していた。こわいよぅ。

 他に奇妙なものは見当たらない。昔俺が失くした下着と似た生地のハンカチとかあるが、奇妙なものは見当たらないったら、見当たらない。


「さて、手掛かりになりそうなのは、この日記だけか‥‥‥‥‥‥だけったらだけだ、俺」


 薄々感づいてはいたが、あのお嬢様はどうやら俺に執着しているらしい。どうしてなのかは心当たりがまるでない。そして、この日記にはその根幹が記されていそうな気がする。


 同時に俺の騎士としての本能は、絶対に開けるなと叫んでいる。なんてでかい心の叫びだ。諦めて震えて眠りたい。そもそも、人の日記を盗み見るなんてね。人としてどうかなっていうか、胸が痛むしね。あ、心が折れかけて見ないための言い訳を始めてるな。


「ええい! お嬢様のことを知らなきゃ、現状確認なぞできてたまるかぁ!」


 負けかける心を押し殺し、目をつぶって日記を開く。そして、おそるおそる目を開けてみると。


『すきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすき』

『愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる』


「い……いぃぃやぁぁぁあああああああ!!!!」


 怖いわ! 予想が付いていても怖いわ! なんでわざわざ赤のインクを使って掠れさせてんの!? 血で書いているみたいで恐怖しかないよ!!!


 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥……お、落ち着け。これは多分罠だ。あんなに堂々と机の上に自分の名前にちなんだ日記があれば、誰だって見るに決まっている。お嬢様はそれを利用してあえて狂気的なことをして見せて、俺の心を折ろうとしているに違いない。そうだよね?

 

 だとしても、手掛かりがないとは限らない。もしかしたら何かしらの記述があるかもしれないんだ。心を落ち着けて、いや、心をしっかりともって読み進めていこう。

 

 ページを震える手でめくっていく。その度に見える「好き」「愛してる」「離さない」といった情熱的な文字の数々に頭がクラクラした。


「まだ大丈夫。まだ大丈夫だぞ……俺」


 何が大丈夫なのかは分からないが、とにかく身体が寒かった。まだ、冬の季節ではないのにね。


 そうしてページをめくり続け、ついに今までとは毛色の違う文章を見付けた。これが恐らくお嬢様の本当に見せたかったページだ。


『○月×日 晴れ

 とうとうあの計画を実行する時がきた。シキをわたくしのものにする。その身も心も全てだ。最近、自分がおかしくなっていっていることには気が付いている。しかし、止められないのだ。倫理観とか常識とか全てどうでもいいと心底思っている。大公家の人間としての責務などとうに私の中では、腐り落ちている。あの日、あの時、あの場所で、彼と出会うことができたのが、全ての終わりであり、全ての始まりだ。彼を見つめていると幸せな気持ちになる。彼の髪の毛を見つけると、うっとりしてしまう。彼が歩いているだけで生きていることを全肯定できてしまう。同時に、彼が騎士団でしごかれているのを見ると、隊長とやらを殺したくなる。彼を顎で使う団長とやらも気に食わない。侍女如きが彼に話しかけるな。話しかけられるな。あぁ、もう我慢の限界だ。時期にわたくしは彼を愛するだけの存在になる。それが心地いい。あぁ、全てはシキのため。わたくしの愛し方は独特なので、それをあなたに知ってもらうためにもこの文は読んでもらわねばならなかったのよ。余計な手間を掛けさせてしまい、申し訳ございませんわ』


 ‥‥‥‥‥‥あれ? これ段々と手紙になってない? しかも書き方も話し言葉になっている気がする。


『でも、これで分かってもらえたでしょう? わたくしが本当に心の底からあなたを気に入って、傍に置きたいのだということが。ここまで遡ってきたんだもの。当然、わたくしの愛も見てくれましたわよね。わたくし、いつもあなたを見守ってきたのですわよ。過去も未来もあらゆる時で、当然今もですわ。』


 最後の文を見た瞬間に振り返る。










 俺のぴったり真後ろには、お嬢様が立っていた。





1話が短くてすいません!


ありがとうございました

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