騎士、大森林にて襲撃を受ける
よろしくおねがいします
調理実習から1日経って、ついに俺たちはイゾン大森林に足を踏み入れていた。
「いよいよですね……。僕としては何も起こらないといいんですが」
「誰もがそう思ってますよ。危険なんてないに越したことはありません」
本当だよ。危険なんてないに越したことはない。まぁ、お嬢様は迎え撃つ気満々だけど。
大森林を抜けるルートは単純だ。イゾン大森林の内部を少しだけ歩くコースで、歩いておよそ3時間程度で抜けられる距離だ。その道中で出て来る魔物の対処を基本的には戦闘参加する者たちでする。護衛は4人。俺たちを先導するのに2人と殿を2人担当してくれている。イゾン大森林の奥地には化け物みたいな魔物もいるらしいが、浅い地点の散策では遭遇することはない。
「それにしても各グループ毎で出発ということは、他のグループに追いつく可能性もないですか?」
「ティアベルさんの言う通り、そういうことはあるみたいよ。その時は一緒に行動をすることもあると聞いたわ」
「そうだな。それは気を付けるべきだ。混乱した者たちを落ち着けることも必要になってくる」
魔物の群れとか引き付けて来られたら、最悪だ。そのまま乱戦になったら、はぐれる者も出て来る可能性がある。
そんなことを考えていると何か声がした。それは俺たちが先に進むべき道から聞こえてきて、だんだんと近づいている。
「す、すまない!! 助けてくれないか!?」
最悪だよ、ちくしょう。
生徒たちの後ろに見える魔物の群れを見て、思わず舌打ちをしながら大剣を抜き放った。
魔物の群れは、犬型の魔物コボルトが多数、それに混じってゴブリンの姿も見える。どいつもこいつも大して強くはないが、群れることで危険度を上げる連中だ。ざっと見て数は40程度、多いな!!
さっき迄は出現しても5体程度だった。明らかに多過ぎる。護衛の人たちが応戦しているので、俺は脚を強化して逃げていた生徒たちの元へ駆け付ける。
「大丈夫ですか? どうぞ、護衛の方々の後ろへ。失礼致します」
返事を待たずに腕力を強化し、ヴェルク様たちのいる方へ投げ飛ばす。
「ジェフ!! 受け止めろ!」
「あいよ!」
俺の指示を聞く前から察していたのか、既に受け止める準備を終えていた。話が早くて助かる。
「シキ、お前はそのまま護衛と協力して魔物を殲滅しろ! ティアベル嬢はすぐに治癒魔術だ!」
ヴェルク様の指示が飛ぶ。了解!
全身に強化魔術をかけて、護衛の方の背後から襲い掛かろうとしていたコボルトを斬り飛ばす。
「すまん、助かる!」
「協力致します!」
この程度なら問題ないが、何故先程のグループの護衛が居ない? この程度の奴らを蹴散らせないような護衛はいなかった筈だ。
違和感が残るが、他事を考えている余裕はない。まずはこいつらを殲滅しなくては。
「おいおい、若旦那。俺は行っちゃ駄目か?」
「駄目だな。どう考えても無理に決まっているだろう」
「まぁ、そうだわな」
シキと随分離れてしまったわ。わたくしはそんなことを考えながら、この逃げて来た臆病者どもを見る。
「あら? ベックマン様ですわね。貴方は土魔術の使い手なのだから、あの程度どうにでもできたのではなくて?」
「……す、すまない。急なことで僕も混乱してしまったんだ」
「それはいい。それより護衛はどうした? あの程度の数を倒し切れない程、護衛も無能ではあるまい」
その通りだわ。既にシキたちも半分程は始末しているし、この程度のハプニングに対応できないような無能を付けたとは思えないのだけど。
……警戒しておくに越したことはないわね。
「そこの2人、周囲に気を張り巡らしなさい」
「は、はい!」
「まさかこんなトラブルが起きてしまうとは……」
ティアベルさんの治癒魔術もそろそろ完了する。撤退すべきね。嫌な感じがするわ、まさか魔物の発生まであの男の策の内なのかしら。
「護衛はもういない……。全滅してしまったんだ」
「どういうことだ、そりゃ? そんな馬鹿なことが……。ッ!? 若旦那下がれ!!」
瞬間、気絶し沈黙していた他のメンバーが眼を見開き、ヴェルク様に切り掛かってきた。
ヴェルク様は咄嗟にティアベル様を抱えて、距離を取った。
「きゃぁっ!? イ、イージス様!?」
「どういうつもりだ!?」
ベックマンを中心に、全員が起き上がる。
「恨みはない。ただ死ね」
奴が指を鳴らす。
その音と同時にシキたちが相手していた魔物たちが屍体も含めて光り、爆発した。
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