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お嬢様、授業にて真面目に過ごす

よろしくお願いします。

短めです

 あれから学園になんやかんやで戻り、再び無事に学園生活をスタートして数日が過ぎた。

 よかった……本当によかったよぅ。


「おはよう、シキ。いい朝ね」

「それいっつも言ってません? というか今日は雨ですし、別にいい朝って感じでもないんですが」

「あなたに会えれば、それはいい朝なのよ」


 随分幸せ指数が高そうな思考回路をしていらっしゃることで。


「お嬢様のいい朝の基準緩すぎますね」

「代わりにいい1日だったで終わることは少ないわ」

「へぇ? どうしてですか?」

「あなたの身に付けたものを手に入れられない日はダメね」

「そんな毎日ポンポンあげませんよ、アホですか」

「昨日はいい日だったわ」

「どれだ!? 一体何を手に入れたんですか!?」


 いつの間に盗られたのか気付かないどころか、何が盗られたのかも分からんとは思わなかった。

 そんないつもの会話をしながら、学園に向かう途中で視線を感じた。お嬢様への視線はいつものことだが、今回は粘つくような気色の悪い視線だ。ここ最近、お嬢様とデートをしてからは殆ど毎日感じている視線である。その視線の方向を睨み付けると、たちどころに視線も気配も消える。


 どうやら、旦那様の仰る通りに面倒事もいよいよ始まりそうである。先程のような視線が、ウーサー様絡みなのかどうかは分からないが何にしても俺のやることは変わらない。

 お嬢様を守る、それだけだ。こんな主人だけどね……。

















 そう心の中で高潔な決意をしたところで、シドゥーレ王立学園の授業中の使用人たちはぶっちゃけ暇だ。その理由は簡単で、授業中の俺たちは基本的にカカシだ。木偶人形と言ってもいいかもしれない。それはどれだけ有能な執事やメイドであっても同じ、どころか有能であればあるほど木偶人形である。この理由は実に単純で、授業中に俺たちは存在する意味がないためだ。当たり前である。授業の内容を代わりに使用人が答えてもまるで意味などない。そういう訳で皆暇なのである。


「ねむてぇ……」


 聞いていてもさっぱり内容が分からん。魔術の構造とか知らんでも魔術って使えるのに、何でそんな勉強してんだろう。


「術理を知っていても、その本質を知らなければ発展をさせられないからよ」


 お嬢様、授業中まで思考を読んで答えるのはやめていただきたい。まぁ、ありがたいけど。確かにどうしてそうなるか知らんと、新しい理論とか活用方法とか考えられんよな。俺は皆が使う身体強化くらいしか使わないから、発想とかはあんまりいらんし、あってもあくまで魔術を上手く使うだけだからなぁ。新しい魔術とかを生み出す奴は頭が良過ぎて頭おかしいんだろうな。


「魔術の源泉は己の身体を巡る魔力である。だからこそ、身体強化は誰もが使う魔術であり、基礎である」


 それは流石に知ってるな。


「では、属性魔術とは何なのか。分かるものはいるかね? ベックマン」


 それも知ってる。マジで退屈だな……何でお嬢様たちはクソ真面目にこの話を聞いていられるんだ。もう俺は今にも夢の世界に旅立ちそうだ。


「それは自然の事象に基づいた魔術のことです」

「その通りだ、ベックマン。属性魔術は自然の事象を人の手で再現できる素晴らしい魔術だ。火を起こし、水を操り、風を吹かせ、雷を落とす……どれも魔術でなければなし得ないものだ。そして、そんな魔術を使える者は体内に属性魔力が流れている者のみだ。これは何故か。それは長年の研究でも明らかにされておらん……」


 講師の先生は、恍惚とまるで自分語りのように属性魔術について語っている。それを聞き流しながら、先程発言していたベックマン様を見る。ベックマン様はお嬢様と同じようにグラシア大公家の御子息である。実直で生真面目な性格とその性格を反映したかのような外見で、お嬢様やウーサー様のように派手に人目を引かない方である。もちろん、大公家なので話題にはなるのだが、いかんせんお嬢様たちが強過ぎた。ベックマン様はその影に埋れてしまったのだ。本人はまるで気にしていなさそうだが。


 俺がそんな彼を見ているのは、グラシア家が第1王子の派閥だったからである。第1王子とウーサー様は関係は悪くないと聞くが、陣営としては険悪だ。まぁ、そりゃそうだよね。

 そんな訳で何らかの形でそういった話を聞いてみたいと思ったのである。思っただけだが。


(そんな話をしたところで何かわかる訳でもあるまいしな)


 結局、考えても俺は馬鹿なので分からないため、お嬢様が身に付けてくださっているイヤリングをボンヤリと眺めることにした。やっぱよく似合ってんな。













 授業後、昼食を取りに食堂へ移動しているとお嬢様が自慢げに話しかけてきた。


「シキ、授業中にわたくしに見惚れていたわね?」

「えぇ、良くお似合いですよ。そのイヤリング」


 否定しても仕方がないので、大人しく認める。


「シキ、授業中にわたくしに欲情していたわね?」

「いえ、全く」


 肯定しても仕方がないので、大人しく否定する。


「フフ、けだものの如く盛っていたことを認めるなんて、熱烈ね」

「お嬢様、どうして突然会話ができなくなるんです?」


 とってもめんどくせぇ。

 そんな風にお嬢様に絡まれていると、急にお嬢様の顔が険しくなった。一体どうしてと思ったが、その理由はすぐに分かった。食堂の入り口近くで俺に声を掛けてくる物好きがいたせいである。


「貴様がジェフの言っていた元中央騎士団の使用人か」


 近衛騎士団団長の息子、ヴェルク・イージス様だった。あいつ、いらんこと言いやがって。

 暇も嫌だが、こんな面倒ごとはもっと嫌だね。

 ほら、お嬢様が真顔で「去勢してやろうかしら」とか小声で呟くもんだから、俺の股間もヒュンってなったよ。逃げ出してぇ、お嬢様から。










ありがとうございました!


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