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ヤンデレ悪役お嬢様は騎士さまに夢を見る  作者: ジーニー
お嬢様、愛故の狂想曲
14/66

お嬢様、地下室にてデートに誘われる

よろしくお願いします!

「命乞いなさい」

「どうか五体満足でお願いいたします」

「遺言はそれかしら?」


 お嬢様は以前の話であった地下室にいた。分かった俺すごい。それにしても過去最大のプレッシャーだ。俺の命は今まさに風前の灯過ぎる。


「実はですね……」

「あなたを殺してわたくしも死ぬわ」


 駄目だ。もう会話が死にしか繋がらない。


「で、どうして牝の臭いをプンプンさせているのかしら?」

「えぇ、それがですね……」

「そう、死にましょう?」


 たすけてぇ!!


「わたくしもスカーレット家の者として、仕えてくれる使用人には寛大なつもりなのよ。貴族は傲慢であっても、理不尽ではいけないもの。でも、裏切り者にはそれ相応の報いを与えるわ」

「いえ、私は裏切ってなどいませんよ」

「他の女と歩いたじゃない」

「理不尽の塊では?」


 ふぅ、とお嬢様が溜め息を吐く。何やら考えているらしいが、俺にはもう恐怖で思考が働かない。


「本当は他の女を視界に入れる時点で裏切りといっても過言ではないのよ。それを我慢してあげてるのに、シキはどうしようもないわね」

「お嬢様の器は手の平よりも小さいのですか?」


 水は全て零れ出すよね。


「まぁ、大方の事情は把握しているわ。ティアベルさんとも『お話』をしたもの」


 ティアベルさんは今頃恐怖で漏らしているのではないだろうか。俺、心配。


「それでも納得できないことはあるのよ」

「疚しいことは本当になんもないのですが」

「分からない男ね、腹が立ってきたわ」


 まだ怒れるのか、この人。既に臨界点突破してそうなんだけど。


「そもそもわたくしは別にそんなに怒るつもりはないのよ。これが来週のデート以降だったらね。精々脚をへし折って、わたくしが看病をする程度ですわ」

「それはなぜでしょうか?」


 全然分からん。何故、その前と後で違うんだ。あと、そんな発想が出てくる時点で怒り狂ってない?


「…………………‥‥‥…あなたの初デートはわたくしがよかったのよ」

「え? 俺、デートなら騎士団の頃にしたことありますよ?」


 鬼隊長に拉致されてだけど。

 そんなことを考えていると顎を掴まれて、見上げさせられた。視界はにはお嬢様しか映らない。と思った時には既に唇を奪われていた。は?

 もがくが、外れない。舌が口内を蹂躙してくる。っていやいや待て待って。


「ぷはっ。お嬢様何してるんですか!?」

「キス」

「そうなんだけどさぁ!!」


 躊躇いが無さすぎて怖いわ!!


「ねぇ、本当に分からないの?」

「分かる訳……!」


 ないでしょう、と言いかけてやめた。震えていた、お嬢様が。


「……不安だったのよ。あなたとティアベルさんのことよ。きっと何もないわ、でもそれでも必ずなんてないもの。だから怖くて不安で、たまらなく死にそうだった。わたくし、頑張ったのよ? あのクソ虫と堪え難い時間を過ごしたの。本当に腹立たしい。去勢してやりたい顔を見ても我慢したのよ? でも、こちらに戻ってみれば、シキはわたくし以外の女の臭いをつけているの。ねぇ、本当に分からないの? わたくし、弱いのよ?」

「お嬢様、どうしてそこまで俺を……」

「知る必要はないの。知らなくていいことよ。でも、わたくしの想いだけは知りなさい。あなたが思う以上に、わたくしの頭はあなたでイカれているのよ」


 ……言葉が出てこない。俺の想いとお嬢様の想いが釣り合っていない。そもそも1度振っている。そして、以前の馬車での会話を思い出す。この人は急に儚くなるのだ。理由は分からないし、多分教えてくれない。


「分かりませんよ、そんなの。俺とお嬢様との縁なんて薄過ぎじゃないですか」

「そうね」

「だから、改めて誘いますね。お嬢様、デートをしましょう」

「え?」

「お嬢様が惚れた理由とかは聞きません。でも、そもそもお嬢様のことを俺はそこまで知らないんですよ」


 お嬢様が驚きの顔でこちらを見つめる。知るか。


「お嬢様は俺のことを多分知り尽くしてますよね?」

「えぇ、そうね」

「だから、俺の良さも悪さも分かるわけでしょう?」

「そう……ね」

「なら今度は俺にお嬢様を教えて下さい」

「えぇ、喜んで教えるわ。エスコートは任せるわよ」


 答えた時のお嬢様の顔が蕩けるように幸せそうで、俺が見惚れてしまったのは秘密だ。













 後日のお話だ。

 偶々鍛練で走っているとティアベル様に出会ったので、実際はどうだったのか話を聞いてみた。 


 ティアベル様は幸い失禁をしただけで済んだらしい。嘘だ。普通にお嬢様にティアベル様は事情を話しに行っていたとのことだった。要するに彼女は俺を売ったのだ。ひでぇ、儚い友情だ。

 何でもスカーレット様はきっと気付いているから、隠している方がよっぽど恐ろしい目に遭うと考えたらしい。やりおる。


「実際、スカーレット様はストーカ近辺に着いた瞬間には、トアルさんに女の臭いがするって気付いてたみたいだったよ」


 ウチのお嬢様、人間辞めてない? 大丈夫かな?


「でも、スカーレット様に殺されるかも!? って思ってたのに、優しく聞いてくれてよかったよ」

「そうですね、お嬢様は過激なお方ですからね」

「でもトアルさんも幸せ者だね。あんな美人で、高貴な方に見初められるなんて」

「そうですかね……未だに納得いかないことのが多いんで、よく分かんないですね」


 今度のデートで聞くのだ。それまでは俺に明確な答えなんか出せるはずもない。


「そう? まぁ、現実味がないのは分かるけどね」

「それを今度現実味のあるものにするんですよ……」

「そうだったね! ファイト!」

「ありがとうございます。それではまた」


 ティアベル様に別れを告げ、再び走り始める。

 デート前、最後の夜の出来事だった。まさか緊張して眠れないなんて日が俺にくるとは思わなかったよ……。


 

おやすみなさい!

頑張りました!

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