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ヤンデレ悪役お嬢様は騎士さまに夢を見る  作者: ジーニー
お嬢様、愛故の狂想曲
13/66

騎士、図書館にて奇妙な本に出会う

よろしくお願いします!

頑張りました!

朝の7時にも投稿されます!


 一体何がそんなにいけなかったのか、それが分からない。


「ティアベル様、私はファッションというものが初めてでして、初心者ということで勘弁していただけませんか?」

「そういう問題じゃないの! あれはもう暴力だよ! バイオレンスだよ!」

「そうでございます! お客様、大変申し訳ございませんが、あれはありえません。合体事故でももう少しマシでございます!」

「無難なタキシードスタイルをチョイスしたのですが……」

「だからより酷いっていうかね……ピエロでも意識してたの?」


 ひでぇ言われようだ。というか、店員さんって基本的にお客様を褒めるもんじゃない?


「ウチの店には確かに奇抜なものもございますが、あれは着こなすのが難しいのです。1つでも難しいのに、まさかその全てを着用されるとは……。素材の味を鏖殺するご趣味でもあるのでしょうか?」


 そんな難易度の高い服を店におくんじゃないよ。


「そうだよ! 一番許し難いのは、トアルさんの良さを全否定するその愚行だよ!」

「……私のよさでございますか?」


 もしかして匂いとかだろうか。お嬢様、俺のパンツしょっちゅう持ってくし。そんな馬鹿なことを考えていると、冷静になったであろう店員さんが優しく諭してきた。それ、一番傷付くやつだよ。


「お客様は精悍な顔立ちに、体格もしっかりしておられます。そのような方はシンプルな服装でこそ、良さが際立つものにございます。あのようなキワモ……失礼致しました。派手な服装をせずとも良いと思われます」

「そうだよ。別にゲテモ……ごめんね。派手にすることがお洒落の全てではないんだよ?」


 そろそろ泣いてもいいですか?


「なるほど、先程のは派手すぎましたか……」


 キワモノ・ゲテモノは聞かなかったことにしよう。

 しかし、そんなに変だろうか。改めて自分が先ほど試着した服装を見直してみる。金色のジャケットに銀のレザーパンツ、シャツはショッキングピンクで、真っ赤な蝶ネクタイだ。ベルトはゴテゴテの飾りが付いていて輝きがすごい。

 目立っているし、どれもカッコよさげだし、オリジナリティがありそうなのだが……。


「では、次は地味さを意識していけば良いのですね?」

「え、まだ自分で選ぶ気あるの? 次は私が選ぶよ?」

「そうでございます、お客様。彼女好みの服装を選んでいただいた方がいいのではないでしょうか?」


 瞬間、時が凍った。やばい。


「か、彼女じゃないですよー! や、やだなぁ、ねぇ? トアルさん」

「えぇ、私たちは学園の友人でして! はい!」


 全力で否定しながら周りを見回す。大丈夫かな? 大丈夫だよね? 俺もティアベル様も冷や汗で凄いことになっている。

 お嬢様、聞いてないよね!? 後ろから刺されないよね!?


「そ、そうでございましたか……申し訳ございません、お似合いでしたので私はてっきり学園のカップルか何かだと」

「いやいや、トアルさんに私なんか釣り合いませんよぅ! トアルさんは大公家辺りの高貴な方がお似合いですよ!」

「私如きではティアベル様には釣り合いませんよ! ティアベルさんは学園の貴公子的な方がいいと思いますよ!」


 余りにも勢い良く互いに否定するので、店員さんはかなり引き気味だ。しかし、俺たちの想いが通じたのか店員さんも頷いてくれた。よし、ッセーフ!


「や、やっぱりトアルさんにはアドバイスだけにしとくね! ほ、ほら、私が選んじゃうとまた店員さんを勘違いさせちゃうしさ!?」

「そ、そうですね! たまたま出会っただけですし、そこまでして頂くと私も気が引けてしまうというか、そんな感じで!」

「は、はぁ……」


 結局、シンプルな白のシャツと黒のズボン、あとは身嗜みとして必要なものを数点購入しました。











 あれから何店か店を周り、着回せるように同じような服を買い揃えた。そして、買い物に付き合ってくれたお礼として、休憩がてらティアベル様にカフェで奢ることにした。

 

「それにしても付き合わせて申し訳ございませんでした。私1人ではいつまでも勝手が分からず、途方に暮れていましたよ」

「いいよ、別に気にしないで。いや、あそこまで知らないとは思わなかったけどね」

「いやぁ、悪くないと思ったのですが」

「次からはスカーレット様に仕立ててもらいなよ。絶対そっちの方がいいって」


 そうかもしれないが、それは怖いというか不敬のラインを踏み越えすぎな気がする。服選びに主人を付き合わせる使用人って何様だろう。


「それはまぁ、置いておきましょう。ところでこの後私は寮に戻るつもりですので、良ければ送って行きますよ?」

「あー、気にしなくてもいいよ? 私、この後こっちの図書館で本を借りに行くつもりだったし」

「では、それに付き合いますよ。荷物持ちくらいでしたらできますし」


 魔導具の発展で、製版技術は革新的な進歩を遂げたが、本はまだまだ庶民にはお高いものだ。それに伴い、本を手軽に読めるようにと図書館が設立されたのだ。もちろん、借りるには貴族学園の学生証や身分を保証するものが必要となるが、それでも庶民が身分を明らかにすれば本を借りることができるというのは未だに凄まじいと思う。


 まぁ、貴族学園のあるストーカと王都くらいにしかない上に、延滞したり他所に売り払ったりしようとすれば呪いが飛んでくるのだが。そんなもんだろう。

 改めて思い返すと、何で女子寮に図書室があるんです? お金の力ってすげぇ。


「うーん、悪いよ。私、こっちきてから休みは図書館入り浸ってるからさ。かなり時間かかっちゃうよ?」

「それは構いませんよ。どちらにせよ今日は鍛練をする気もありませんでしたから」


 昨日は練武場でジェフとかなり遅くまで鍛練をしてしまったので、元から休養日ではあったのだ。


「そういうことなら、お言葉に甘えようかな?」

「えぇ、そうしてください。本を借りるとなれば、荷物もかなりの重さになるでしょう」


 そうして代金を支払い、図書館へ向かうのだった。











「これは、無学な私でも圧倒されてしまいますね……」

「でしょ? 私、今年から学園生として利用できるようになったから、最初は興味本位で来たんだけど物凄くたくさん本があるから夢中になっちゃって」


 あぁ、確かに小料理屋の娘という身分では図書館の利用は厳しいだろう。どれほどの才があろうと、そういうところは身分という信用が大事になってくる。


「私も適当に本を読んでみますので、ティアベル様も御自由にお過ごし下さい。荷物の方は私が見ておきますので」

「ありがとう。本当はこの荷物じゃ今日は無理かなって思ってたから、本当に助かるよ」


 ティアベル様と別れて、俺も物語の本が読めるスペースへと移動をした。ティアベル様は以前来た時に目を付けていた学術書があるか確認に行くらしい。俺にはまるで理解できない世界だ。

 そうして物語、というか読んでいて意味が分かりそうな本を探して歩いた。何か武術に関する技術書でもあればいいのだが。そうして自分なりに過ごしていると、奇妙な本を見つけた。


「この本だけ背表紙にタイトルがないな。……表紙にもないぞ?」


 気になって本を手に取りパラパラとページを捲ってみたが、その文字を読むことはできない。


「なんだこりゃ? 昔の言葉とかか?」


 ティアベル様だったら何か分かるのだろうか。それとも司書の方に渡した方がいいのだろうか。そんなことを悩んだのだが、分からないことがあった。それは俺の気持ちだ。

 俺は、この本を手放したくないと思っているのだ。なんでだ? 俺には全く関係のない本、それも得体の知れない本だ。それなのにこの本を手放したくない。手に入れたい。


「薄気味悪いな……」


 この不可思議な気持ちを抱かせる本に気分が悪くなる。いや、安心する。何だこれ?


「仕方ねぇな……」


 本を抱えて歩き始める。とりあえず借りてみよう。そう思うと気分が軽くなった。もしやこれは呪いの装備ではないか、なんて下らないことを考えた。

 そうして受付カウンターに向かうと、ティアベル様も丁度本を選び終えたのか本を借りているところだった。


「良い本は見つかりましたか?」

「うん、目を付けてた本があってよかったよ。トアルさんも良い本があったの?」

「いえ、ただ気になる本がありまして」


 そうなんだ、と楽しそうに笑うティアベル様を横目に司書の方に話し掛ける。


「すいません、此方の本をお借りしたいのですが」

「はい、畏まりました。……おや、この本はうちの蔵書ではありませんね」

「そうなのですか? 確かに奇妙な本だとは思いましたが」

「タイトルもありませんし、中身も……」


 そうして司書の方が中身を検閲し始めるといきなり目が据わった。


「あぁ、私の勘違いだったようです。申し訳ございません、問題なくお借りできますよ」

「……そうですか、ありがとうございます」


 本を借り、ティアベル様と図書館を後にする。


(どうなっている?……あの時の司書の様子、あれは間違いなく)


 魔術だ。それもかなり高度な技術による暗示魔術だ。あんなものは宮廷魔導師の中でもトップクラスが扱うレベルだ。どうなっている? 何故俺の時は発動しなかったんだ。それに俺の奇妙な感情はなんだ?


「面倒事の予感がするな……」

「えっ! もしかしてスカーレット様が!?」

「それを面倒事とする辺り、ティアベル様も肝が太いですね。本当に」


 まぁ、考えても仕方ない。頭脳労働は苦手なんだよ。そのうちなんとかなるだろう、そんな楽観的な思考回路がいけなかったのだろう。まさかあんなことになるとは。


 そう、ティアベル様の予感は当たっていたのだ。

 ティアベル様を送り届け、寮に帰った俺は1枚の紙切れがドアに挟まっていることに気がついた。


『今すぐわたくしの元へ来なさい』


 刹那、本のことなど即座に遠い記憶の彼方へと消えていった。







ありがとうございました!


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※すいません、次話と分割した部分があったので、そこは削除しました

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