騎士、回想し決意する
よろしくお願いします。
あれから1週間が過ぎた。怒涛の1週間だった。
お嬢様は相変わらず俺に熱烈なアプローチをしてくださる。やめて。
この前、部屋を整理していたところで盗聴、盗撮用の魔導具がざっと見積もって、30個ほど見つかった。その情熱に敬服します。でも、俺に向けないで。
他にも下着が新品に変わっていた。いや、前履いてたのも新品に近いんだけどね。いつだって俺の下半身は清潔に保たれている。
クラスの雰囲気も良好だ。お嬢様はつまらなさそうにしているが。他のウーサー様やヴェルク様がいらっしゃるクラスは女性の黄色い悲鳴が止まずに大変らしいとティアベル様やジェフから聞いた。よかった、巻き込まれなくて。
お嬢様のクラスも最初は喧しかった。お嬢様はストーカーで頭がおかしくても大公家の人間だ。繋がりを持ちたいと考える貴族階級の方々は多かった。しかし、お嬢様はこれらを華麗にスルーした。流石です。
更に驚いたのは、お嬢様に言い寄った方がいたことである。節穴だね。お嬢様は第二王子の婚約者である。これは周知の事実であり、近づく男なんていないだろうとタカを括っていた俺は驚愕というより呆れてしまった。まさかそんなことも知らない男が貴族の跡取り息子などとは、呆れて乾いた笑いが出たのは初めてだったかもしれない。
兎にも角にも言い寄られたお嬢様は更にこれをスルーした。しかし、敵はお嬢様の想像を更に下回る下衆であった。なんとお嬢様を襲おうとしたのである!
雑魚だったので、早々にお帰りいただこうとしたのだが、地獄はその後からだった。お嬢様はそれはもうおキレあそばせだった。怒髪天だ。曰く、わたくしの視界に入るなと忠告を遠回しにしていたらしい。それなのに入ってきたから許せないとのことだった。それ、頭が悪くて伝わらなかったのでは?
俺が捕らえた奴らは気絶していた。お嬢様はそれを地下室に運ぶように命令してきたのだ。地下室って何?まだ学園生活始まって1週間で、なぜ知っているのです?あと素直に学園に突き出しましょうよ。
何でも地下室は昔の懲罰房みたいなもので、新入生歓迎お茶会で聞いたらしい。貴族令嬢ってみんなお嬢様みたいな人なのかな?
何をするつもりなのか聞くと、百倍に希釈しても大人が一晩中発情する媚薬を原液で打ち込んで、地下室に全員放置するとのことだった。やばい。
何故そんな物騒なものを知っているのかはさておいて(俺はさておいてはいけない気もするが)、ここは穏便に行こうと襲ってきた雑魚はどうでもいいが、もしもこんなことを実行するとなる場合の実行犯は俺だ。そんなことはしたくないし、現場を見たらトラウマを背負ってしまう。ということで、俺はお嬢様と次の休日にデートを約束し、その代わりにこいつらを突き出すことが決定したのである。
そして、俺とお嬢様の貞操をかけた命懸けのデートが2週間後に幕を上げることになったのである。
「デートは2週間後……。なんとかそれまでに穏便に楽しくデートをする予定を立てねばならないんだ」
「なんでだよ? いや、そもそも自分の仕える主人とデートな時点で意味がわからんのだけどな?」
俺がジェフに悩みを打ち明けると、あいつは身も蓋もない疑問を俺にぶつけてきた。
「そうなんだが、ちょっとウチは事情が特殊なんだよ」
「そうか、分かった」
「納得早過ぎるだろ」
グダグタとこの話が続くのは望むところではないが、いくらなんでも早過ぎる。
「1週間だけしか見てなくても分かるからな。お前らの関係が普通じゃねえの」
「よく分かるな」
「そりゃあもうな。あの距離感の近さは主従の仲が良いじゃ足りんだろ」
確かにそうかもしれない。
俺は確かにお嬢様を振ったが、お嬢様のことは嫌いではないのだ。熱烈な好意も満更ではないのだ。ただいくら何でも怖すぎるというだけで。
「それは認めるんだがな…」
「使用人が気安いのは割とないことはないぜ? 俺もその部類だしな。……だが、主人があからさまにお前に固執してんだろ」
返答に困り、押し黙る俺にジェフは言葉を続ける。
「そもそもあのお嬢様はお前以外に笑いかけねえじゃん。お前以外の男と話す時は心底つまらなさそうにしてるぜ」
「……そうかな?」
「そりゃそうだろ」
まぁ、そうだよね。そして、俺はそのお嬢様の気持ちに悪い気はしていないという宙ぶらりんだ。
振ったはずなんだがなぁ。
結局、俺はお嬢様がなんで惚れてるのかもよく分からんのだ。それなのに振った理由は、あのお嬢様の奇行が怖かったからだ。
……知ろうとすべきなんだろうな。
あれ程までの狂気的な愛を俺に捧げる理由を。
今度のデートで知ろうとすべきだと思う。
「まぁ、頑張ってみるよ」
「おう」
改めて思えば、俺はお嬢様を知ろうとはしてこなかったから。本当に頑張ってみようと思う。
頑張ります!
できるだけ更新していきたい!です!





