お嬢様、牢屋にて高笑い
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朝起きたら、監禁されていた。
「なんで?」
事情を飲み込めない。なぜだ? いや、そもそも俺が監禁される理由なくない? 騎士って言っても下っ端よ、俺。
「ようやく目覚めたのね。全く寝坊助な騎士さまだこと」
困惑する俺をそっちのけで、当たり前のように檻の外から声を掛けられた。聞き覚えがあるようなないような声の主は俺のいる牢屋の外で、明らかに部屋とは不釣り合いな立派なソファに悠然と腰掛けていた。
「エリザ・スカーレット様……? なんでこんな所に? というか、どうしてこんなことに?」
「…………」
返答はない。なんで? 泣くよ、俺。
「あのー、もしもし? 聞こえてます?」
「…………」
新手の拷問だろうか。
「私はシキ・トアルと申します。牢屋の中で枷もあり、跪けず申し訳ございません。この状況について説明を頂きたいと思いますが、よろしいでしょうか?」
この状況にしては割と丁寧かつ冷静に状況確認をしようと努力できたと思う。その前の口の利き方は混乱していたということで許してほしい。しかし、エリザ様は一言も喋らず、ただ肩を震わせているだけだった。解せぬ。
エリザ・スカーレット様はこのヤデル王国大公家の娘だ。俺のような下々の民と会話をすること自体がありえないようなお方であり、御付きの方もいないのは理解ができない。確かに過去の護衛任務で関わったこともあったが、あの時も騎士団の一員としてのその他大勢でしかなかった。基本的にお偉いさんと話すことができるのは、団長か隊長位の人たちだけだ。
何よりここは牢屋だ。そんな所にこの方がいらっしゃるのは意味がわからない。そうして、お互いに黙っていると肩を震わせるだけだったエリザ様から声が聞こえてきた。
「……フフフ……アハ……オーホッホッホッホ!!!! ついに! ついに、やりましたわ! これでこの男はわたくしのもの!! 一生この男はわたくしから逃げられませんわぁ!!!」
高笑いだった。物語のお嬢様を絵に描いたような高笑いだった。内容については聞かなかったことにしたいし、記憶から消してしまいたい。わたくしのものってなんで? エリザ様ならもっといい男とかいるでしょ。なんでよりによって下っ端騎士団員なの? しかも一生て。
「オーホッホッホッホッホ!!! アーハッハッハッハッハ!!!!!」
いつまで笑ってんだ、この方は。
「フー…フー…フー。あぁ、一生分くらい笑いましたわ。それにしても、愉快ですわ。あれほどまでわたくしが焦がれた男が今目の前で、枷をつけて囚われているなんて…夢のよう」
エリザ様はそう言いながら、両手を頬に当てて恍惚としていた。
そろそろ状況を説明してもらえないかな、なんて思っている俺を放置して恍惚としている様はもうなんか怖かった。すると、エリザ様はそんな俺に気付いたのか、話しかけてきた。
「そうですわね。シキも困惑していることでしょうし、そろそろ本題に入りましょうか。」
そろそろも本題も何も、一つも理解できていない状況で話を進めるのは勘弁してほしい。
「あなた、わたくしの側付きの騎士になりなさい」
「……………………………………………………マジすか」
思わずタメ口になってしまったのは、ご愛嬌で許していただけないだろうか。
そして、これが全ての始まり。俺とお嬢様の物語のプロローグである。
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