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終末と戦車 1

►▶目が、錯覚したんだ、私の。


 誰もいない。何もいない。窓ガラスの無いビルが立ち並ぶ都会。いろいろあるのに、何にもいない街。

 私以外の人は、たぶんいる。これから、出会うことはないだろうけれど。きっと人はいる。生き物もいる。やっぱり、出会うことはないだろうけれ…。

 見上げると、小さい鳥が。いや、とても高いところを飛んでいるから小さく見えてるだけかも知れないけれど、鳥が青い空を飛んでいる。


 鳥だ…。なんだ、動物には会えるんだ。




 旅を始めて間もない頃、私はそれを鳥と思っていたけれど、今思えばあれは鳥じゃなくて。これだったのかも知れない。

 目の前には酷く損傷した無人偵察機があった。状況からして、墜落したというのは明らかなものだった。


 人にも動物にも出会うことはない。


 おそらく今、私が屋上にいるこのビルは、この街で一、二を争うほど高い。たった、十三階だけど。

 ここから、街を眺めてみる。

 私のそばを通り抜けていく風は乾燥していて冷たい。なんだかどうして、不思議と嫌な風じゃない。 でも、あんまり強いから帽子が飛ばされそうになった。

 ここで、帽子が飛ばされたりなんかしたら、二度と回収できないだろうから気を付けよう。っと思ったそばから。

 帽子は風が持ち去っていった。まったく、イタズラ好きな風だこと。

 そんなイタズラ好きの風が持ち去っていった帽子を目で追ったけれど、どうもそこまでは私の足じゃ取りに行けそうにない。

 いつ見ても変わらないな。窓ガラスの無いビルやコンクリートでできた建物、墜落した無人偵察機に動かなくなった戦車や飛行機の残骸、この街はそんなのばかり。いったい、どこまでこの街は続いてるんだろう。

 さ、いつまでも止まってても仕方がない。行こう。えっと、あっちから来たから。こんどはこっちに行ってみよう。




►▶地下での、怖いを知った、出来事は。


 いけない。迷っちゃった。面白半分で地下に入ってみたけど、出れなくなっちゃった。どうやら空気はあるみたいだけど。来た道が分からないし、どうしよう。食料には限りがあるし、早く出口が見つかることを祈ろう。

 でも、ここはなんだろう?こんなに広い地下なんて作る意味あったのかな。あ。

 ライトで照らしたところになにか横たわっている。壁に寄りかかるように座っている白骨化した人だった。

 何か持ってないかな。うわ。服がボロボロだ。 軽く引っ張っただけで切れちゃう。なんにも持ってないか。せめて、ここがなんなのか知りたいんだけどな。

 再び歩き、出口を模索するけれど、見つからない。ここがなんなのかも分からない。

 すると。


 ゴゴゴゴゴゴゴ


 なんだろうこの地響きみたいの。地震っぽくもない。これは、上っ!?

 突然、天井が崩れ落ちた。なんとかギリギリのところで避けることができたけど、膝をちょっと擦りむいた。イテテ。

 あ、ライトが壊れてる。これじゃあ真っ暗でって、なんか明るい。

 崩れ落ちた天井から地上の光が差し込んできていることに気がついた。雲の隙間から光が落ちてくるあの光景によく似てる。

 あ、無人偵察機。またどこからか墜落してきたんだ。よかった。これのお陰で外に出れそう。

 あらためて、明るくなった地下を見回してみると、ここがどこなのか分かった気がする。

 防空壕。あたりはうずくまる人で埋め尽くされていた。他の人と寄り添うようにしている人、祈りを捧げている人、片手に酒の瓶を握りしめている人、ただ一人で座っている人。いろんな人が、ここにいる。ここに、いた。

 …出よう。

 瓦礫を登り、地上に出た。大きく深呼吸をしてみたら、なんだか少し、怖くなった。理由は分からないけど、怖くなった。

 これからは、地下に行かないようにしよう。




►▶雨音を、眠くなる、聞くと。


 日が落ち、夜になった。高いビルの屋上から明かりがついている場所がないか探してみたけれど、見つからない。双眼鏡で見ても肉眼で見ても、見つからない。基本、あるはずもないものだから、見つからなくて当然なんだけど。

 ま、それは置いといて、今日の夜ご飯の時間。本日のメニューは戦車で見つけたクラッカーが五枚と同じく戦車で見つけたスープ缶を温めたもの。

 だいたいいつも食事はこんな感じ、温かいものが食べられるだけ今日は豪華だ。あー、おいし。

 あ、流れ星。今日は雲が無くて、星空が綺麗だな。


 って、昨日までは思ってたのに、まさか、雨になるなんて。

 ただの雨じゃない。かなり強いもので、バケツをひっくり返したかのような大雨が降った。

 やっぱり、今日は動かない方が良かったかな?いや、でも食料が少ないから止まってられないし、何か見つかればいいな。

 それから、ずっと歩き続けた。雨の中、一歩一歩前に歩き続けた。辺りを見回しても何にもない。あるのは窓ガラスの無いビルばかりで、役立ちそうなものは一切なかった。


 ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 やっぱり、雨が強すぎるから、屋根のあるところで雨宿りをすることにした。

 雨、止みそうにないな。これは、1日中降りそうな予感がする。


 ピトッ


 コンクリートでできた天井の小さなひびから私の髪の毛に大粒の滴が一滴、降ってきた。

 ん? なんだ、ここ雨漏りしてるんだ。わっ、また降ってきた。

 頭上のひびだけからじゃなく、いろんなところから滴が落ちてきていた。

 なんだか、ちょっと、眠いかも。

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