グルメGメン -料理店ガイドブック 公正調査班-
なろうラジオ大賞の応募作品です。
世界中の人達が料理店の品評を参考にするM社の料理店ガイドブック。歴史あるガイドブックに掲載されることは、料理店にとって大変名誉なことであり、優良店に与えられる星は勲章に値する。そして料理店はより多くの星を獲得しようと、日々切磋琢磨し新しい味を追求していた。
そんなある日、M社に一通の封筒が届いた。その封筒の中には、ガイドブックの存在意義を揺るがす一切れのメモが入っていた。
『ガイドブックの星を買っている店がある』
封筒の中には、メモの他に星を不正取得した店、取引した金額や日時等の一覧表が入っていた。店の情報が載っていることから、店の関係者からの密告と推測される。封筒はすぐにM社が極秘で運営するガイドブック公正調査班、通称グルメGメンの元に転送された。
グルメGメンは、一覧表の中から最も取引回数の多い店に潜入捜査員の派遣と、店の審査を担当した審査員の身辺調査を行った。内定調査から半年後、審査員の代理人A氏が泊まるホテルの一室で、店の代理人B氏がA氏に賄賂を贈るとの極秘情報をグルメGメンは掴んだ。
グルメGメンは地元警察の協力を仰ぎ、A氏が外出している間に部屋に監視カメラを仕掛け、A氏が泊まる部屋の両隣を抑え張り込みを行った。
張り込みから二日目の夜、B氏がA氏の部屋を訪れた。警察とグルメGメンは、監視カメラのモニターの前で釘付けになり、賄賂の取引現場を注視する。
B氏はA氏の部屋に入るなり、持ち込んだ鞄をリビングの机に置いた。鞄を開けると札束がぎっしりと詰まっており、「例の件、お願いしますよ」とB氏は言った。
「そろそろ踏み込むぞ」とグルメGメンの班長は無線を取り、二つ先の部屋で待機している班員に告げた。
「分かりました」と班員は応答し一同に緊張が走る。
「……これは星三つ分ですね?」とA氏が言った。
「ええ。ですが直接的な言葉は慎んでもらいたい。誰かが……」とB氏の言葉を合図に、班長は無線で強硬突入を指示した。待機していた警察とグルメGメンの面々は、一斉に部屋へ突入し二人を現行犯で逮捕した。
それから数日後、警察からグルメGメンの元にA氏の調書が届いた。班長は思案顔で調書を読んでいると、班員の一人が声をかけた。
「どうかしましたか? 班長」
「これを見ろ」と班長は調書を班員に手渡し、班員はA氏の自供欄に目を通した。
『偽りの評価に群がる群衆。実に愉快、愉快』
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