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転生令嬢姉妹は平穏無事に過ごしたい  作者: のえる
第四章 学園生活 ~レミリア15歳~
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077.悪役令嬢と学園視察の話

 いつもと同じ昼休みの生徒会での会食風景。大抵の場合、特に議題もなく食事と雑談で終わるのだが、無論そればかりではなくちゃんと生徒会としての議題があることも。


「皆、食べながらでいいから聞いてくれ。今年もそろそろ学園視察の頃合になった」

「学園視察……ですか?」


 丁度口に物を含んでなかったフレイヤが聞き返す。みればマリアーネとティアナも同じ疑問を抱いているようだ。ちなみに私は、その学園視察というもが何なのか知っている。先日アライル殿下が過去資料をまとめていた際、年間行事の一覧を見ており、その時に教えてもらっていたからだ。


「学園視察というのは……おや? レミリア嬢は知っているのかな?」

「あ、はい。この季節頃になると毎年やっている、外部からの視察です。視察に来られるのは、王宮より宰相様や宮廷魔導師様、他に領主様や有力貴族様も何名かいらっしゃいます」


 ふいにアーネスト殿下に話をふられたが、つい先日みたばかりの資料なのでちゃんと覚えていた。要するに国のお偉いさん方による授業参観豪華版ってコトよね。さすがに国王陛下や女王陛下は来ないけど。

 ……あれ? 領主様?


「あ、あの! もしかしてお父様も来られるのですか?」

「ああ、そうだよ。父上は去年も一昨年も来ていた。俺が入学する前ももちろんね」


 同じ事に気付いたマリアーネが質問をすると、お兄様がそれに答えてくれた。言われてみれば領主なんだから、当たり前といえば当たり前か。

 うーむ……そうなると私やマリアーネにとっては、前世での授業参観と同じってことか。なんだか先生が余計な(・・・)気をつかって当てたりしそうだなぁ。でも、わざわざやらないで下さいって言うと、逆に当てそうだし……。

 そんな事を考えている間にも、アーネスト殿下の話は続く。


「……といっても、基本的には普段と同じ事をしていればいい。いつも通りに授業を受ける、これだけだ。ここにいる皆は、真面目に授業を受けている者ばかりだろう?」


 その言葉に対し、特に誰かを注視するような事もなく。ここで皆が私を見たらショックだったろうに。


「ただ、当日の授業後は来賓の方々と教師、それと生徒会役員で話をする場を設ける。皆はそれに出席して欲しい」


 なるほど、そういう事か。でもまあ一年生の私達は、出席するけど特別何か話したりすることもなさそうね。などと些か安堵していたが、一人だけ不安そうな顔をする人物がいた。……そう、ティアナだ。


「あ、あの……それには、私も参加するのでしょうか?」

「勿論だ。君は常々生徒会役員の一人として、この場にも参加しているではないか」


 自分の立場などを鑑みて、そのような場に出向くのは良しとしないと考えたのだろう。たとえ学園が身分による優越をしない仕組みであっても、王族や高位貴族に対して全く考慮しないのは無理だ。ましてや、今回は外部より貴族の方々がこられるわけで、そこに出てしまうのは……と考えたのだろう。

 ティアナの心情を思えば、ここは欠席してもかまわないと思うところだろう。たとえアーネスト殿下が出席を促しても、ティアナがどうしてもと言えばおそらくは出なくてすむ。

 …………だとしても。


「ティアナ。貴女は学園内では私の専属であり、付き人なのを忘れてませんか?」

「い、いえ。ちゃんと覚えてます」

「そう。それならいいわ。アーネスト殿下、その会には私も出席しますわよね?」

「ああ、もちろんだ。レミリア嬢は生徒会書記であり、フォルトラン領主の娘で、何より聖女のお一人だ。これで君が出席しないとなれば、私やアライルが出席しないのと同じくらいに騒がれてしまうよ」


 苦笑しながら言うアーネスト殿下は、おそらく私が言いたいことがわかったのだろう。だからこそ、私は絶対に出席する人物だと念を入れて説明したのだ。


「……だそうですティアナ」

「え? あ、はい。ええっと……」

「つまり、学園で貴女の雇用主である私が出席する場所ならば、当然貴女も出席すべきだという事です。なのでティアナも出席なさい」

「は、はい。わかりました」


 なんとなく迷っている感のあるティアナを、少し無理やりではあるが強引に同意させる。どうせゴネていても出席することにはかわらないのだろうし。それに平民でありながら魔法学園に入学したティアナは、おそらく既に外の貴族方にも認知されているだろう。ならば、むしろ堂々と私の横にいてもらったほうが、変なことにも巻き込まれたりしないだろう。


 とりあえず本日は、学園視察とその後についての説明だけで報告は終わった。

 ……さてと。当日までにもう少しティアナに、マナー云々を教えておく必要性が上がったわね。






 そして放課後。

 昼休みにうけた説明だが、先立って話をしただけなので今日はまだ実務はないとのこと。それなら折角なので、昨年までの学園視察についての予備知識を得ることにした。おそらく今日もアライル殿下が自主業務をしているはずだ。わからないことがあれば聞きながら、私もティアナ同伴での出席について考察でもしてみることにした。

 そうと決まればと生徒会室へ向かう途中、廊下でディハルト──という呼び方はダメよね。ヴァニエール先生に出会った。


「こんにちはヴァニエール先生」

「ああ、レミリア嬢。こんにちは」


 にこやかに挨拶を返してくれる。自分の推しが、こうして目の前で実在している事にも大分なれてきたが、やはり間近で見えると眩しくもある。ふぅー、ビジュアル系タレントオーラが半端ねぇ。


「レミリア嬢は……ああ、生徒会室ですか? 今何か生徒会業務はありましたか?」

「いいえ。ただもうじき行われる学園視察、それについて過去の記録に目を通しておこうと思いまして」

「ああ、学園視察ですか……」


 私の発した言葉に、あからさまに気落ちするヴァニエール先生。どうみても学園視察に好印象がないような気がするのだが。


「……先生、どうかなさったんですか?」

「あ、あー……、いやなんでも──」


 なんでもないと口にしながら、こちらを見て言葉を切る。そのままじっと見つめてくるので、さすがに照れくさいと感じていると。


「レミリア嬢には隠し事はできそうにないか」


 そうため息をつく。どうやらヴァニエール先生は、私が聖女の力にて相手の心を覗くことができるのではと勘ぐっている節がある。いや、実際はゲームからの知識なんですけど。


「実はゲーリック先生から、学園視察時の参観授業を私がやってみないかと言われていてね」

「えっ! ヴァニエール先生の授業をですか!?」


 教育研修生としてやってきたヴァニエール先生は、時々教壇に立って授業をしている。元々魔法学園の卒業生でもあり、生徒からも教師からも評判がいいので、その授業は皆に好評だ。私もその一人である。年齢が他の先生よりも近いせいか、物事への関心度合いが近いのだろう。不思議と退屈しない授業に思えるのは、先生の技量か人気ゆえか。


「なんでヴァニエール先生が──って、もしかして両殿下の魔法指導をしてるからですか?」

「……レミリア嬢は何でも知っているな。多分その通りだろう」


 いえ、何でも知ってるんじゃなく、ゲームから得たオタ知識です……なんて事はいえない。ただ、これでヴァニエール先生の私に対する認識がより間違った方へ向いたことは否めない。

 にしてもゲーリック先生ってば、まだ教育研修生のヴァニエール先生にそんな大役押し付けて。さすがにどうかと思ったのだが。


「私も最初はそう思ったのだがね……。だが、もしこれがきちんと私の授業を参観して評価してもらえれば、予定より早く準教員としての資格も貰えそうでもあるんだ。それに、私がやることは特別なことじゃない。いつも通りの授業をすればいいんだ。そう思ったら、逆に意欲がわいてきてね」


 そういって笑うヴァニエール先生。そこには自虐的なものはなく、本心から「やったるでー!」という前向きさが感じられた。

 そんな活気ある笑顔を、間近ドアップで見てしまった。そりゃもう大興奮ですよ。ゲームじゃ、いくらモニタを大きくしても、こんな質感のドアップを拝めないもの。ここでスクショが撮れたら、ゲームのCGなんて目じゃないスナップが出来上がったのにっ。


「がんばってください、ヴァニエール先生」

「ああ、もちろんだ。……授業では、君達もよろしくな」


 そういってもう一度にこやかに微笑を向ける。そうね、私達のクラスだから、当然私も授業にいるのだもの。お父様もご覧になるはずだし、しっかりしないといけないわ。

 ……あら。むしろ私の方が、少し緊張してきたかも。






 その後、もう少し話をしてから生徒会室へ行った。案の定、そこにはアライル殿下が自主的に資料をまとめていた。初めて会ったころは、まだ少年特有の腕白さが勝っていたが、今では随分と落ち着いてきて身分相応な立ち居振る舞いをしていると思う。


「アライル殿下、過去数年の学園視察に関する資料ありますか?」

「ああ、それならコレだ。俺も丁度つい先程見直していたばかりだからな」


 返事をしながら横に積んであった資料を指差す。おや、アライル殿下も予習ですか……と、隣に行き資料を手に取る。ふむふむ、確かに学園視察の資料ですな。ご丁寧に付箋まで付けてあって。

 そう思いながら、アライル殿下がまとめている資料をちらりと見る。……あら? さっき“つい先程見直していた”と言ったのに、全然違う事をまとめてらっしゃるわね。

 ……そうか、そういうことね。


「ありがとうね、アライル」

「っ! な、何の事だかわからんな」


 私の言葉にぶっきらぼうに返事するが、その頬が赤く見えるのはそういうことだろう。おそらく私が見るかもと思い、予め資料を用意してくれていたのだろう。

 ありがとうございます、と私はもう一度礼を述べて隣に座り資料を見始めた。資料に夢中になっていた私は気付かなかったが、暫しの間アライル殿下の作業は停滞していたのだった。



気をつけているのですが、相変わらず誤字が多く申し訳ありません。それでも報告して下さる方もいて、本当に感謝しております。ありがとうございます。

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