表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生令嬢姉妹は平穏無事に過ごしたい  作者: のえる
第一章 始まり ~レミリア12歳~
4/153

004.思い出してみるって本当ですか?

今週は投稿開始したばかりなので、可能な限り毎日更新をします。

 マリアーネが私の妹となった翌日、私達は色々と話し合うことにした。

 なんせお互い転生者。となれば色々と確認をしておきたいことも多い。おまけにマリアーネは『リワインド・ダイアリー』の事をほとんど知らない。昨日簡単に説明はしたけど、ある程度先を見越して知識共有をしておいた方がよさそうだと判断したのだ。

 その中でも一番注意しておきたいのは、やはり攻略対象となる男性キャラの事だろう。とはいえ、そんな話をお天道様の下、白昼堂々とできるわけがない。なので姉妹の親睦を深めるためと、マリアーネと二人で私の部屋で一日過ごすことにした。


「……さてと。まずはお互いの事を知りましょうか」

「お互いの? それはどういった事でしょうか?」

「そうね……。まずは転生前の、日本で生活していた時期とか。そうすればお互いの知識や認識が、どのくらい違っているかわかると思うし」

「そうですね。私の生まれたのは──」


 まずはお互いが過ごしていた時期の情報を交換した。それによって両者に認識に齟齬が生じるのが、この場合防ぎたいことだからだ。だが、その懸念はあっさり杞憂となった。それは──


「私もレミリア姉さまも『リワインド・ダイアリー』を知っているのなら、そんなに時期は離れてはいないのでは?」


 というマリアーネの言葉だった。言われてみればそうだよね。よって少なくとも、世紀単位での食い違いはなさそうだという結論に。

 ちなみに私の生前記憶の最後あたりは、多分だが20歳は超えていたと思う。なんせ会社勤めをしていた記憶があるから。そしてマリアーネだが、彼女はどうやら高校生あたりだったらしい。どうやら生前感覚ではいい感じに姉妹っぽい年齢のようだ。


「それじゃあ次は……。そうね、やっぱり攻略対象の話になるかしら」

「了解です。色々な意味で注意しないといけない人たちですね」

「そ、そうね」


 乙女ゲームでヒロイン=マリアーネと攻略対象が結ばれると、悪役令嬢の立場である私が不幸になる──そう説明を受けて依頼、マリアーネは必要以上に攻略対象を警戒するようになった。まだであってもない攻略対象の皆、なんかごめんね。


「まずはやっぱり私達の兄、ケインズ・フォルトラン。……えっと、マリアーネ。流石にお兄様は……」

「はい、大丈夫です。やはり大切な家族ですし、お兄様もレミリア姉さまを大切に想っておられるようなので。なのでちゃんと家族として(・・・・・)親しくお付き合いをします」

「う、うん、よろしくね……」


 まあ、もしどうしてもマリアーネが誰かと結ばれる運命にあるなら、お兄様とが一番平和だろう。最悪でも国外追放だし、もしかしたら現延長の仲良しさで何も起こらないかもしれないし。


「とりあえず、お兄様に関してはおそらく大丈夫。一応頭に入れておくに留めておいてね」

「はい!」

「それじゃあ次は……」


 続いて別の攻略対象の名前を言おうとして……思考が止まる。

 あれ? 出てこない? ……いやいや、そんなハズないでしょ! だって私は『リワインド・ダイアリー』をどれだけクリアしたと……。

 急に言葉を切ってしまった私を見て、マリアーネが不思議そうな顔をする。


「レミリア姉さま、どうかなさいましたか?」

「……えっとね」

「はい」

「その……思い出せないのよ」


 言葉を絞り出しながらマリアーネの方へ顔を向ける。


「思い出せない?」

「ええ。何度も遊んで、何度もクリアしたゲームなのに、お兄様以外の攻略対象の名前が思い出せないのよ」


 そう言いながら、何かひっかかるものを感じた。

 思い出せ。私が前世の記憶を思い出した時のことを。お兄様やマリアーネを思い出した、あの瞬間どうだったのか。確かあの時は……。


「そう……、そうなのね」

「レミリア姉さま?」

「マリアーネ。貴女私が挨拶した時、すでにゲームの悪役令嬢だって認知していたかしら?」

「は、はい。でもレミリア姉さまは決して悪役なんかでは……」


 頬を微かに高揚させて、私擁護の熱弁をする。……うん。それは嬉しいけど、今重要なのはソコじゃないのよ。


「それじゃあ、その記憶を思い出したのはいつかしら? もしかして、私を見た時じゃなかった?」

「あ! はい、そうですっ、その通りです!」


 私の言葉に驚いて肯定するマリアーネ。ふむ、どうやらこれで確定かな。

 ちょっとばかり興奮しているマリアーネを見て、私は自分の中で組み立てた仮説を話しはじめた。


「多分この世界では、その攻略対象を含めた『リワインド・ダイアリー』のキャラクターは、直接本人を見ないと思い出せない仕組みになっていると思うの」

「そうなんですか?」

「ええ、多分ね。私が初めて転生を自覚した時、自分が悪役令嬢の「悪役じゃないです!」……えっと、レミリア・フォルトランというゲームの登場人物だと自覚した時も、お兄様を見るまでその名前も姿も思い出せなかったのよ。そしてマリアーネ、貴女の時も同じ。居間で両親と一緒にいた貴女を見た瞬間、私は貴女をヒロインのマリアーネだと認識したの」


 どういう仕組みかわからないが、私達の前世からもってきた記憶は人物関係が強く封鎖されているような感じだ。これはおそらく、ゲーム展開=未来を知っている事に関しての制限……いわゆる縛りプレイみたいなものか。

 これはよくあるSFモノ設定かも。過去を変えると未来も変わるから、過去を制限するという意味で記憶の一部に規制をかけると。ただそれも、本人に会ってしまえば解除されるレベルで。……もしかすると、その状態遷移を含めて、すでに過去の事象として定着している……? いやいや、うーむ……。

 ともかくここで悩んでいても話はすすまない。未来考察は後回しで、話を戻そう。


「そうなると、他の方々──“攻略対象”と呼ぶのでしたか? その人達はわからないと?」

「……いいえ、決してそうと断言はできないかもしれないわ」


 ここが乙女ゲームという括りに囲まれた世界であるなら、攻略対象となる人物は絞り込める。特にド定番の立場の人物がいるはずだ。


「ここが『リワインド・ダイアリー』……乙女ゲームなら、攻略対象には王子様が含まれている可能性が高いわ」

「ええ!? お、王子様って……王族ですよね?」

「そうよ。この手の乙女ゲームでは、攻略対象のメインに王族……おそらくは王子を据えることが定番なの。そう思い返せば、私は不自然に王子様の情報を得てないわね」


 ならば……と私はドアの前まで歩いて行く。それをポカンとして見ているマリアーネ。


「いきましょうマリアーネ。家にいる誰かに、王族についてを聞きに行くのよ。今までは本人を見た事がきっかけで思い出しているけど、もしかしたら名前とかを聞いても思い出すかもしれないわ」

「あ! はい、お供します!」


 なるほどっと笑みを浮かべ、マリアーネがぱたぱたと近寄ってくる。

 うんうん、なんかじゃれつく仔犬みたいでかわいいのう。




「何? 王子の事が知りたい?」


 そう申し出た私とマリアーネを、怪訝そうな目で見てくるのは私達のお兄様だ。両親は共に今不在だったので、部屋にいたお兄様に聞くことにしたのだ。


「え、ええ。その……私達にはあまり関係ないことかもしれませんが、そういう知識も必要かと思いましたのでその……」


 馬鹿正直に「乙女ゲーの攻略対象の情報を聞きたいのです」とも言えず、どこか煮え切らないそどろもどろな言い訳になってしまった。そんな私と、その後ろで成り行きをみまもっているマリアーネを見て、軽く溜息をつくお兄様。


「今はまだだけど、将来的には無関係って事もないかもしれないかもな」

「え? それは、どういう意味でしょうか……?」


 驚く私にお兄様は少し呆れたような目を向ける。ううっ、私が王族についての知識がないのは、きっと歴史を正しく進めるための強制力ですよ! ……多分。


「本当に知らないんだな。いいか? 第二王子であるアライル殿下は、お前たちと同じ12歳だ。だから将来同じ学園に通うことになるかもしれないのだぞ」

「へ? あ、そう……なんですか……」


 お兄様の言葉を聞きながら、私の脳内に新たな記憶の復帰がなされる。攻略対象であるアライル・フィルムガスト王子だ。ちらりと後ろにいるマリアーネを見るも、彼女はアライル王子の事を覚えなかったのか、改めて思い出すという状況にはなっていないらしい。

 でも私は思い出した。そう、王族の第二王子でこのキャラを攻略すると……するとっ!?


「お、お兄様っ! その、第一王子はどなたでしょうか?」

「本当にお前は……。第一王子といえばアーネスト・フィルムガスト殿下だろう。そんなことも知らなかったのか?」

「あ、いえ、その……オホホ……」


 少し間抜けなごまかし方をしている傍ら、私の脳内データベースはこれでもかと更新されていた。アーネスト・フィルムガスト王子は、ゲームを初めてプレイしたときは攻略対象ではなくただのサブキャラ。だが、弟である第二王子アライルを攻略すると、次のプレイでは攻略対象になって登場するのだ。

 よし! これで一気に二人分も情報を入手できたわ。

 マリアーネに視線を送り頷く。これで今回知りたかった情報は確保できたと。さぁ、戻って先程の話の続きをしましょうか。

 そう思ってお兄様に礼を述べ、部屋を出ようとしたのだが。


「そうだ。レミリア、マリアーネ」

「はい?」

「は、はい!」


 何故か呼びとめられた。私とマリアーネの二人ともが。


「二人とも12歳だな?」

「はい。私はご存じかと思いますが既に12歳を迎えております」

「わ、私はこちらへ来る少し前に12歳となりました」


 何故かお兄様が私達の年齢を確認する。というか、マリアーネの誕生日って少し前だったのね。もしかしたら私と近いかもしれないわね。

 そんな事を考えている私に、お兄様が言った言葉は。


「ならば、そろそろ準備しておかないといけないんじゃないのか?」

「え? 何を……ですか?」


 よく分からずに聞き返す私と、同様に「?」を頭に沢山浮かべているマリアーネ。そんな二人を見てお兄様は、本日ここにきて一番大きなため息をついた。


「あのなぁ……この国では12歳になった貴族の娘は、デビュタントをという決まりがあるだろ」


 かなり呆れた様子で私達を見るお兄様。

 デビュタント。……ああ、デビュタントですわね。そうでした、デビュタントでした。

 ……………………へ?


「デ、デビュタントですかぁ~~~ッ!?」


 思わず私は、淑女にあるまじきはしたなく大きな声で叫んでしまった。いや、しゃーないやん。

 そんな私の後ろにいたマリアーネは、こてんと首をかしげると。


「『でびゅたんと』、ですか?」


 と可愛らしくつぶやいた。

 ……いけません、二重三重に大変な気がしてきました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ