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転生令嬢姉妹は平穏無事に過ごしたい  作者: のえる
第八章 三学期 ~レミリア15歳~
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147.令嬢姉妹と築いてきた仲間

 ティアナが侯爵令嬢となり、クライム様との仲が学園中に広まった日から幾日か過ぎ去った。既にその頃になれば、その事に関して話題にする者はほとんどいなかった。

 というよりも、この時期は学生にとって──とくに三年生にとっては、最後の大切な行事があるから。

 ……そう、『卒業式』だ。


 この卒業式というのは、三年生にとっては学園最後の行事となる。その後の夜に控えた卒業パーティーは、学園内で行う行事ではあるが三年生──もとい、卒業生は主役であり主賓だ。

 三年生であるアーネスト殿下とお兄様は、卒業パーティーにおいては完全にノータッチであり、指揮をとる生徒会役員はクライム様を筆頭とした、私達後輩役員である。


 卒業パーティーも卒業式同様、一応学園の正式な行事ではあるのだが……やはり正式に卒業された先輩方と最後の懇親会みたいな場であり、それゆえにお堅い学園行事とは随分と趣が異なる場でもある。

 会場自体は卒業式をおこなったホールを使用するのだが、昼間の卒業式と違いテーブルもあればビュッフェなどの食事場も設けることになる。もちろんホール中央はダンスをする場が設けられ、会場には演奏者の席も用意される。

 三年生にとっては学園を去る最後の思い出、一二年生は卒業生を気持ちよく送り出すための大切な場である。


 そして、その卒業パーティーを執り行う上で、実はひそかに生徒会の新役職が発表もされてしまう。卒業式で三年生が卒業するので、その後に控えた行事は当然後輩の生徒会役員なのだが、そこでの来年度の生徒会役員のポジション的なものが見えてしまうから。

 ちなみにその役職だが、会長は誰もが予想するとおりクライム様だ。そして副会長なのだが……これがなんと、アライルと私である。生徒会で話し合った当初は、今の立場を順当にスライドさせればいいのでは……という案もあっ。

 だがそれに意見を出したのはマリアーネだった。


「副会長はアライル殿下とレミリア姉さまにしましょう! 男女の副会長がいたほうがいいと思います!」


 と言い放ち、生徒会室にいる人物全員に「ムフー!」と聞こえるほど鼻息をあらくして宣言した。……何がそこまで貴女をかりたてるのよ?

 一瞬あっけにとられたものの、私もアライルがこの一年とても真剣に学園や生徒会の事を考え、これまでの行事などもしっかり調べていたことを知っている。なので、彼を副会長にすることに大いに賛成意見を出した。

 その結果、まあ流れというか必然というか……もう一人の副会長は私となった。ならばマリアーネは書記か、それとも又会計系をするのかと思ったのだが。


「……という訳で、来年度は今年庶務だったお二人に書記と会計をしてもらいます!」

「「ええ~~~っ!?」」


 フレイヤとティアナの声が綺麗にハモる。当然その心境もハモっているのよね。

 そんな二人に対して笑みを浮かべるマリアーネが言うには。


「フレイヤって昔から本を読んでるせいなのかわからないけど……字がすごく綺麗よねぇ~?」

「えっ!? な、何を……」


 何故か字が綺麗という発言に、どこか挙動不審な感じを見せるフレイヤ。何故そんな態度をとるのかしら……と思っていると、マリアーネの次の言葉で表情が激変する。


「そういえばフレイヤってば、よく部屋で何か書いてるわよね。最初は日記でも書いてるのかと思ったけど、それにしては──」

「わあああっ!? マ、マリアーネ! そのね、あのね!」


 なんだか滅多にみないフレイヤの挙動に、当人とマリアーネ以外がポカンとしているが、私はなんとなく状況が見えてきた。

 これはアレよね。マリアーネはいわゆるロマンス小説……恋愛物語を書いてると。言われてみれば本好きの彼女だが、恋愛モノを読むときは少し違った気迫を見せてることがあるような覚えがある。

 普通ならば『こんな恋愛してみたい』という乙女心の表れなのだが、この場合は物語として注目していたのだろう。

 そんな事を考えているうちに、フレイヤが観念したのか。


「……わかりました。次の書記は私が勤めさせて頂きます」


 そう自身の口で宣言すると、周りからは「おおー」というどこか感心した声があがった。その横でマリアーネだけ、ちょっと笑いをこらえているように見えるのは気のせいではないだろう。

 さて、そうなると後は会計なのだが。


「ティアナって計算強いし、多分私より優秀な会計になると思うわよ?」

「ええっ? そ、それは……」

「おっと。マリアーネより計算強いってトコは否定しないのね」

「ちょっ、レミリア~ッ!」


 慌てるティアナを見て皆が笑みを浮かべる。実際のところ、農家である家で役立てたいという事かティアナは成績優秀だ。こう言ってしまうのはアレだが、マリアーネ以上に優秀な会計になるとは私も思う。


「……なので来年度、私は庶務になりますね」


 という感じで新しい生徒会の役職は決まった。マリアーネに至っても、別に庶務が楽だから……というつもりは毛頭ないのだろう。むしろ、すべての仕事を兼任するぐらいの気概が見て取れる。きっと、今年のアライルがやってきた事、それとアーネスト殿下の隣に立っても恥ずかしくない存在になろうとしているのだろう。


「……あんまり無茶をしないでね」

「大丈夫! 本当に困ったときはレミリア姉さまがなんとかしてくれるから!」


 私の言葉に「頼りにしてる」と返事をするが、これは別に私達二人に限ったことじゃない。生徒会役員の誰もが頼りにするし、されている。

 …………うんうん。きっと来年もいい生徒会になるわよ。






 卒業式の当日。


 確かに感慨深い事ではあるが、ぶっちゃけその後の卒業パーティーとかの事を考えるとそこまでおセンチ気分に浸れないのが現状だ。ちなみにその事をマリアーネに話したら、


「……おセンチって。せめてナーバスって言ってよ」


 と言われてしまった。いいのよ、どうせ貴女にしか言わないんだから……。

 それにアレよね、私ってば前世で学校関係の卒業式ならば、小中高と短大の計4回経験してるし。

 その中でも短大の卒業は、向こうでは定番ともいえる袴姿だった。なのでこっちでもどうかなーとは思ったが、用意するのも中々大変だし、仮に出来たとしてもそれを着たらすごく目立つと思うのよね。そもそも、私が卒業するわけじゃないし。

 というわけで、私達の卒業式は袴姿はどうだろうかという話を四人でしたり。まだまだ二年も先の話だけどね。


 ともあれ、今日は卒業式。既に準備は終わり、後は時間が来るのを待つのみ……みたいな感じだ。

 そんな私達に、声をかけてくる人がいた。


「あ、いたいた。レミリアさん、皆さん」

「はい? あ、サニエラさんにリミエさん」


 笑顔でやってくるのは、2-Bのサニエラさんとリミエさんだ。途中色々あったけど、いまやこの方たちや2-Bの方たちは、学園の仲間とも言うべき人達だ。

 そんな人達だが、今日……というか、今夜の卒業パーティーでは色々と手伝ってもらう事になっている。


「お疲れ様です。今日の卒業パーティーはよろしくお願いします」

「ふふ、任せて頂戴。私もクラスの皆も、レミリアさん達の役に立てるって大いに張り切ってるから」


 私がお二人と話していると、同じように今度はティアナに声をかけてくる人物が。


「おはようございます、ティアナさん」

「カリーナさん、おはようございます」


 声をかけてきたのは学園祭にてティアナと仲良くなったカリーナさんだった。彼女がいる2-Aは、もともとクライム様のクラスということもあるが、学園祭からずっとティアナとは良好な関係を築いている。彼女達も卒業パーティーで色々手伝ってくれる事になっている。


 なんせ卒業パーティーは、本来運営の中心となる生徒会役員のうち、アライルと私とマリアーネはちょっとばかり用事があるのだから。

 まぁ、その抜けを考慮しなくても役員だけじゃ到底まわせないけれどね。なので二年生の先輩方に手伝ってもらうというのも、卒業パーティー運営としては伝統らしい。


 その後も、何人かと挨拶を交わしていく。気付けばすべての準備が終わり、後は卒業式の主役──卒業生達を迎えるだけとなる。




 そして────卒業式が始まった。





卒業式はごく普通の式典で、特別な描写等はありません。

次回はすぐに卒業パーティーの話になり、この『転生令嬢姉妹は平穏無事に過ごしたい』として最後の部分となります。その後のエピローグを含めあと少しですが、どうぞ最後までご覧いただけたら幸いかと存じます。

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