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転生令嬢姉妹は平穏無事に過ごしたい  作者: のえる
第八章 三学期 ~レミリア15歳~
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137.令嬢姉妹と指輪の想い

 冬休み最終日、私とマリアーネは学園寮に戻った。

 部屋へ戻ると、既にティアナが自分のベッドでぐでーっとしていた。入ってきた私を見ると慌てて居住まいを正すが、そんなことを気にする私じゃないので「そのまま寝てなさい」と言っておいた。……ちなみに私も疲れたので、同じようにぐでーっと寝転んだけどね。

 そのまま二人でだらけていると、夕食の頃にミシェッタに呼び起こされた。やれやれ……と部屋を出ると、丁度隣の部屋から出てくるマリアーネとフレイヤに出くわした。最後にリメッタが出てきて施錠していたのを見て、隣で同じ事をしてたんだなぁと気付く。


「「「「…………」」」」


 何とも気恥ずかしい沈黙が四つ流れる中、久しぶりに寮での食事を味わった。






 明けて翌日。久しぶりの登校だ。

 夏休みに比べて冬休みは期間も短く、いわゆる“休み明けデビュー”的な子は少ない……と思っていたが、よくよく考えると年末年始があったりするのよね。でも、流石にここは魔法を学ぶ園ということでか、前世での休み明けの劇的ビフォーアフターは特に見当たらない。

 そんな話をマリアーネにしてみると、


「それだと、私達が一番そういう対象になりません?」


 とのお言葉を頂いてしまった。なるほど、そうかー……。

 やれやれねぇ……という感想を自身に抱きながら教室へと入る。久しぶりに見る景色に、何かあるわけじゃないのにちょっとだけ気持ちが弾む。


 クラスメイトとおはようの挨拶を交わしながら自分の席へ。そして傍にいたアライルと目が合う。


「……おはようアライル」

「……おはようレミリア」


 ごく普通に挨拶をしたはずなのだが、なんだか妙な()があったような気がした。どこか気持ちが落ち着かないので、それっきりすぐ席に座った。

 んー……何だろうコレ。一般的な考察なら、告白して付き合い始めて、それがどこか恥ずかしくて……みたいなシチュエーションなんだろうけど、私とアライルはもうそういう段階ではないハズだ。もしそんな初心(うぶ)いハートの持ち主なら、先日聖地へ赴いた時とか終始耐えられなかっただろうに。

 ……もしかして、クラスメイトが沢山いるから? あの時はマリアーネとアーネスト殿下もいたけど、言ってしまえばあっちも私達と同じ境遇だった。だから、恥ずかしいとかいう前に『同士!』みたいな気持ちだったのかも。

 そんな事を考えながら、そっと視線をアライルに向けてみる。


「「……!」」


 するとこちらに視線を向けたアライルと目があった。一瞬何も考えられずに視線をはずしてしまう。そして、なんとなくアライルも同じようにした気がした。

 一拍して、今度はクラスメイト達の方を見てみる。すると──あぁっ……なんだか皆静かにこちらをみていたようで、私が視線を送るとあからさまに泳いだりはずしたりする人が後を絶えない。

 いけない……なんだか、無性に恥ずかしいかも。


「レミリア姉さま」

「ふへっ!? ま、マリアーネ…………ふぅ。どうしたのかしら?」


 ふいに呼ばれ、空気が抜けたような声が出てしまう。気恥ずかしさも手伝って、思わず背筋を伸ばして返事をしてしまう。……今の私って、客観的に見てるとものすごくこっけいよね。


「ふふっ、なんだか妙にソワソワしてて……今のレミリア姉さま、とっても可愛らしいですわ」

「はっ!? わ、私が可愛いとか何を──」


 前世でも今世でも聞きなれない『可愛い』という言葉に、無意識に視線はアライルの方を見てしまう。


「「!?」」


 するとまたしても視線がぶつかる。そして先程のリプレイのように、二人してぷいっと視線をはずす。んー……ベタすぎるコントじゃないのよぉ~!

 そんな私を見て、マリアーネはふんわりと笑みを浮かべる。


「くすっ……レミリア姉さまってば、そんなに緊張することないですよ。だって──」


 マリアーネは私にだけ見えるように、自分の首にかかる鎖をそっと引き出す。その先には、アーネスト殿下から頂いた指輪が輝きを放っている。


「私にとってこれは、大切な証ですもの。そしてそれは──」

「──ええ、そうね」


 同じようにそっと首にかけた鎖を手繰り、そこに通した指輪を出す。私の指輪の赤い宝石はアライルの瞳を思わせるように赤く、マリアーネの指輪の宝石はアーネスト殿下の瞳と同じ青い宝石。

 アライル曰く、これは『いつでも私の傍に居させて欲しい』という、優しい我侭が詰まっているらしい。おそらくマリアーネの指輪にも同じ想いが込められているのだろう。

 そう思って、もう一度……今度はゆっくりと落ち着いてアライルを見る。そして、またしても向こうもちちらを見るが……うん、大丈夫。三度目の正直、というわけではないけど、今度はお互いしっかりと相手を見て……少しはにかむように微笑を交わした。

 そして、そっと視線をはずしてマリアーネに「ありがとう」と礼を述べる。それをどこか照れくさそうにしながら、「あ、そうそう!」と口を開くマリアーネ。


「そういえばこの指輪の宝石って知ってます?」

「これ? えっと……私の方がルビーで、マリアーネのほうがサファイア、かしら?」


 特に宝石に詳しいわけじゃないけど、赤ならルビー、青ならサファイアっていう感じなだけだ。つまり緑ならエメラルド……とか。


「正解~。それでですね、実はルビーとサファイアって同じ鉱石からできてるって知ってました?」

「えっ、そうなの? へぇ~……」


 そういわれたので、指輪をより近くに並べてみる。異なる宝石がはめられたよく似た指輪が二つ。


「この指輪も姉妹なのね」

「そうですねっ、うふふ」


 とても嬉しげに笑うマリアーネを見て、私も嬉しくなる。そんな事をしていると、先生が教室に入ってきた。

 ……よし! 今日から三学期だ、がんばるぞー!



遅くなりました。

次回更新は今週末の土日どちらかを予定しております。

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