122.至る──冬と休みの訪れ
秋の日は釣瓶落としとでも言うが如く、日々の流れもどこか忙しなく感じる今日この頃。気づけばすっかり風も肌寒く感じ、上着を重ねてないと登下校も心もとないという状況になっている。
気が付けばもう二学期もあとわずか。もういくつ寝れば、冬休みを迎えて年を越して正月を迎えて新年だ。
この辺りの気候は、偶然なのかゲーム補正なのか日本とよく似た四季を感じる。紅葉に彩られる山や、適度に降る雪を見るに緯度が同じくらいなのかしらって思う。
「……レミリア、何を考えてるの?」
「あ、フレイヤ。えっとね、冬休みどうしようかなーって感じ?」
それがメインではないが、少しばかりは脳裏をよぎったのでそう返答する。
ちなみにここは寮の大浴場。相変わらず遅い時間は、私達四人の貸し切りみたいになるのよね。といっても、以前に比べたらサニエラさんとかが入りにくるので、独占しっぱなしという感じは薄れてきている。
「冬休みって、夏休みと同じような感じなのかな」
「ティアナの家って、冬とかだと農作業がお休みだったりする?」
「う、家ですか?」
ちょうど湯舟でふにゃーとしていたティアナは、私に呼ばれあわててこっちを見る。あー、なんかリラックスタイムを邪魔しちゃったわねゴメン。
でも農家だっていうティアナの家の事は純粋に興味あるわね。
「いえ、普通に農作業をしてます。ええっと……夏とはまた違った作物を育てて、冬でも収穫できる野菜などを対象にしてます」
「へぇ~……てっきり冬は、もう何もしてないくらいなのかと思ってた」
「全然そんなことないです。それに農作業とは少し違いますが、積雪とかあると家だけじゃなく道も畑も雪かきしないといけませんから」
そう言って苦笑いを浮かべるティアナ。正直その大変さは実感したことないけど、おおよそどれほど酷なのかは十分想像できる。
そんな他愛ない会話をしていた時、フレイアが何かに気付いたように「あ」と声をあげた。
「どうかしたフレイア?」
「あ、はい。えっと……冬休みが始まるのは、丁度クリスマスではないですか?」
「「「あぁー……」」」
その指摘に、私とマリアーネとティアナは思わず声をあげる。
……そうか、クリスマスか。
元々は誕生祭であるところのクリスマスだが、この世界にも同じ意味合いでのクリスマスが存在する。とはいえ過ごし方はヨーロッパ風で、クリスマス当日の朝はミサに参加し、ディナーで七面鳥を楽しむといったものだ。こちらに転生してからのクリスマスは、家族とそうやって過ごしてきた。前世の日本みたいに『恋人と過ごす日』ではないのだ。
「今年も、ミサに行ってからは教会のお手伝いでもしましょうかね」
「そうですね」
「孤児院の皆もお手伝いだろうね」
私の言葉にフレイヤとマリアーネも同意する。ミサ当日は、ひっきりなしに訪れる参拝者のため、普段からお手伝いをしているユミナちゃんだけじゃなく、他の子たちも全員教会のお手伝いをする。そして、私達も知り合ってからはお手伝いをするようになった。
「それにまあ、私達はこれでも“聖女”だから、教会へのお手伝いはなおさら当然の事になるのかもしれないわね」
「これでもって……レミリア姉さま、自分で言いますか」
多少は慣れたものの、やはりまだクリスマスと聞いて連想するのは、恋人と過ごす二人だけの時間……ってイメージよね。
と言っても、私には前世も今世も恋人なんていないけど。恋人はいないけど……んー……一番仲がいい異性って、やっぱりアライルなのかしらね。
そう思うと、少しだけ頬が熱くなるのを感じた。これって意識しちゃってるってコトなのかしら。……ふぅ、あまり考えすぎないほうがいいかもしれないわね。
この後もしばらく話していたが、思いのほか盛り上がってのぼせそうになった。やはり冬休みを前に浮かれてしまっているようね。これ以上入っていると逆に健康に良くないかもと、話は尽きないけど私達はお風呂を上がったのだった。
──そして数日が経過し、冬休みになった。
感覚としては夏休みの時とよく似ているが、この冬休みの間に起こる出来事は、夏休みとはまた一味も二味も違うものになるのだった。
これにて第六章は終了です。
次回からは第七章で冬休みとなります。
現在仕事が忙しく土日でも時間が取れないことが多くなっております。執筆にも影響が出ており申し訳ありません。この状況はもうしばらく続きそうです。