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転生令嬢姉妹は平穏無事に過ごしたい  作者: のえる
第六章 二学期 ~レミリア15歳~
113/153

113.開園──賑やかで穏やかな集い

2/17更新予定分は2/18に投稿致します

 学園祭当日──いつもとは明らかに違う活気に包まれた魔法学園。

 今日ここは、魔法を学ぶ紳士淑女の為の場所ではなく、広く大勢の者達と交流をするための場所となる。

 私もまずは自分のクラスへ顔を出す。もっとも指揮はマリアーネがとってくれるので、クラスの出し物であるカフェについての不安は一切ない。というか、私よりもマリアーネの方が適任なので感謝している。

 そのカフェだが、当日ということもあって内装もしっかり完成し、普段は教室だというのがわからないほどに装いを新たにしている。


「レミリアさん、おはよう」

「おはよう、皆やる気になってるわね」

「もちろんです! 楽しみ~」


 既に大半のクラスメイトが登校しており、本日のコスチュームである給仕用の服装に着替えている人も多い。基本女子がウェイトレス、男子がスーツでの接待をし、調理担当は調理に合った服装となっている。

 教室の中央にマリアーネはいた。皆に本番直前のアドバイスや指示をしている。


「おはようマリアーネ。どう?」

「あ、レミリア姉さま、おはようございます。ふふ、バッチリですよ」


 その言葉に皆も頷く。どうやらマリアーネの望むカフェが出来上がったようだ。


「ごめんなさいね、本当ならもっとクラスの方にも参加すべきなのに」

「仕方ありませんわ、生徒会は実行委員の仕事がありますもの。それを言うなら私なんて、無理を言ってクラスを優先させてもらってますし」


 マリアーネにはカフェの陣頭指揮のため生徒会としての仕事の多くをはずしてもらっている。その分私がまかなえば済むことだ。他にも2-Aの劇に関して、主演のクライム様も同様だったが、学園祭に関する資料まとめを事前に済ませ準備段階での功績により当日作業を免除してもらっているとの事。

 あと特異なケースがティアナだ。昨日、急遽2-Aの劇にヘルプとして組み込まれたのだが、これは色々な意味で“仕方ない”と思っている。なので本来彼女が行うべきだった私との見回りも、私がちょっとだけ頑張ればいい事だ、うん。


 その他フレイヤやお兄様、両殿下は当初の予定とおり生徒会として実行委員の主たる役割を行っている。そう思って教室内をみるも、フレイヤは既に担当作業へ向かってしまった後らしい。今日の彼女はほとんどの時間をお兄様と共に過ごす予定だ。……ええ、もちろんお仕事ですわよ。まぁ、ちょーっとくらいは私達の仕込みもあるけど。


「よしっ。それじゃあ私はもう行くわね」

「はい。いってらっしゃいレミリア姉さま」


 マリアーネをはじめとするクラスメイトから「いってらっしゃい」の声を受けて、私は教室を後にする。そろそろ外来の方々も入ってこられる時間だ。少しばかり気合を入れなおして、私は見回りへと向かった。




 まずは各教室の様子を、廊下を進みながら大まかに確認する。さすがに当日ということもあり、皆気合が入っている様子だ。客呼び込み用の係り員やA看板なんかが廊下に並ぶ。所々通行の妨げにならないようにと注意するくらいで、特に問題が発生している様子はない。

 見回り中は贔屓目を出してはいけないが、やはり知人のクラスは気になる。特にそのまま参加している2-Aは、ティアナも含めてちょっと……いや、かなり気になる。なのでちょっとだけ覗いてみると、クライム様とティアナ意外に、カリーナさんの姿も見えた。どうやら体調は戻ったようだ。劇自体には参加できないが、協力したいと言っていたその言葉を守ったのだろう。じっと見ていたら目が合ってしまったので、軽く会釈をしてその場を立ち去った。あまりジロジロ見てるのも失礼よね。


 ざっと教室を見て周り、一度中庭に出る。そこには幾つかの屋台と休憩ベンチが設置されていた。さすがにまだベンチで休む人はいない……と思ったのだが、どうやら早速飲食の為に腰を下ろしている人がチラホラと。

 でもわかるわー。こういう何か浮かれる雰囲気だと、つい屋台とかで買い物しちゃうものね。何を買ったのかしら……と、近くにいる男性の手元を見る。あら、うふふ。うちのクラスのお手軽メニューのフランクフルトですわね。

 メニュー考案時、ホットドックとしてでなくフランクフルトとして単体での販売も意見が出たのだ。その時の私は、よくある串をさしたフランクフルトを想像したのだが、マリアーネが「紙で包むタイプにしたらどうかな?」と言って採用となった。

 二つ折りの紙ではさむ様にして販売する形式は、お手軽だということで屋台側での採用となった。それを今目の前の男性は食しているのだが……うんうん、美味しそうに食べてるわね。なんだか幸先いい感じ。


 そんな光景を見て気分良くなった所で、ふと時刻を見てみると学園祭の入場開始から1時間ほどが経過していた。そろそろ来る頃かなと思い、私は校門の方へ向かう。

 そこで来客対応をしている係員に話しかけようとした時。


「聖女さまーっ」

「わ……って、エリサちゃん! いらしゃい」

「はいっ!」


 屈みこんだ私にぎゅーっと抱きついてくるのは、孤児院でお世話になっているエリサちゃんだ。見れば他の子達も、司祭様とシスターエミリーと一緒にこちらにくる。


「皆様、ようこそおこし下さいました」

「本日はご招待ありがとうございますレミリア様」

「その、私まで……ありがとうございます」

「そんな……こちらこそ、わがままを受けていただきありがとうございます」


 司祭様とエミリーさんが丁寧に頭を下げてくる。元々は私が好きで招待したのだから、こちらがお礼を言うべきなのに。

 今回の学園祭、身分に関係なく全ての民が足を運べると知り、私は孤児院の皆を招待したのだ。なので孤児の皆や司祭様たちは、家の大きな馬車に乗ってきてもらった。招待だけして「勝手に来なさい」なって出来ないものね。

 他の子たちもキョロキョロしながら、私のほうへやってくる。


「おはようございますレミリア様。その……本日はありがとうございます」

「「「ありがとうございます」」」


 孤児の中でもリーダー格の女の子、ルッカが私に礼を述べると、他の子も一斉にお礼を口にする。その顔は漏れなく笑顔だったのがすごく嬉しい。


「それじゃあ皆、行きましょうか」

「えっと、どこに行くのですか?」

「ふふ。きっと子供が喜びますわよ」


 エミリーさんの質問に、意味ありげに返答してみる。なんかこういうのって、焦らして応えるの好きなのよね。

 エリサちゃんに手をつながれた私を先頭に、向かった先は我がクラス1-A。カフェになった教室を見て、つれてきた子たちはそろって驚きを見せる。


「あっ! マリアーネ様!」

「えっ!? あっ、ルッカちゃん、いらっしゃい!」


 思わず声をあげて駆け寄ってしまったルッカ。そういえば彼女、マリアーネにあこがれていたわね。突然やってきた子供達に、クラスの皆もなんだろうと注目する。

 なので私は二回ほど手を打ち鳴らして注目を集める。


「はいっ、この子達は私とマリアーネの招待客ですわ。というわけで皆さん、よろしくお願いしますわね」

「「「「はいっ」」」」


 クラスメイトから心地よい返事が返ってくる。


「皆、よろしくね。さぁ、こちらへどうぞ~」

「司祭様もシスターさんも、ささどうぞ」

「ふふ、ありがとうございます」

「す、すみません……」


 案内されて皆がテーブルにつく。エリサちゃんは私の手を握ったままなので、仕方なくそのまま私も一緒のテーブルへ。

 座った私にエミリーさんが、少し申し訳なさそうな声で聞いてくる。


「あのレミリア様、ここはその……飲食のお店ですか?」

「はい。あ、大丈夫ですよ。皆さんの分は私がお支払いいたしますので」

「いえ、そういう訳には……」

「ふふ、そうさせて下さい。私がご招待したのですから……ね?」


 そう言ってエリサちゃんお頭をなでる。嬉しそうに見上げたエリサちゃんは、


「ありがとう聖女さまっ」

「ええ、どういたしまして」

「……わかりました。ありがとうございます」


 その様子を見て司祭様が折れてくれた。他の子たちも「ありがとう」とお礼を述べてくれる。そんなタイミングで、みなの前に飲み物とホットドッグが置かれる。司祭様とエミリーさんの分は切ってあり、孤児の皆の分はそのままだ。飲み物は全員ミルク多目のミルクティーとなっている。

 私が「どうぞ」と言うと、皆祈りを捧げてホットドッグに手を伸ばす。そしてガブリとかじりついて。


「!! 美味しい!」

「おいしいです……」


 気に入っていただけたのか、美味しい美味しいと夢中でほおばり始めた。司祭様やエミリーさんからも美味しいとの言葉をいただけた。横にいるエリサちゃんも、少しだけ口の周りにケチャップとかと付けながらも、とても楽しそうにホットドッグを食べていた。

 そんな皆をクラスメイトが微笑ましい顔で見守っている。ふふふ、招待して大正解だったわねぇ。そんな事を思っていたその時。


「あっ、聖女さまーっ」

「へっ!? ……っとと、ノルアちゃん!」

「はい、こんにちは!」


 座っている私にどーんとタックル抱き突きをかもしてきたのは……ノルアちゃんだ。ティアナの妹で、4人兄弟姉妹の末っ子。見れば入り口にティアナの両親と、弟のタリックくんとフーリオくんもいた。

 座っている私のかわりに、マリアーネがすばやくそちらに向かう。


「ようこそお越しくださいました。さぁ、どうぞ」


 そういってティアナの家族を案内する。


「ノルアちゃん、ご両親があちらに……ノルアちゃん?」

「聖女さまの隣はわたし!」

「ちがうもん、わたし!」


 気付けば私を、エリサちゃんとノルアちゃんが取り合っていた。


「くすっ、レミリア姉さまモテモテですね」

「いやいや、モテモテってあなたねぇ……」


 周囲のこれでもかという暖かな視線をうけ、私はどうしましょう……と途方にくれるのだった。



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