喫茶店にて、あなたと、
やあ、待ったかい?
……待ってない?
ああ、それなら良かった。
君を待たせるなんて、知性を持った生物のすることじゃないからね。
それより、いい香りの紅茶だね。
君にとても似合うよ。私も貰おうかなーーすみません、こちらと同じものを。
さて、今日は何をしていたんだい? 休みだったんだろう?
……街をブラブラしてた?君らしくないね? このお店に一人で入ってることもだけれど。
ああ、馬鹿にしてるんじゃないよ。内気なところも君の魅力の一つだ。
いつも俯いて、人と目を合わすこともなかったのに……今では真っ直ぐ私を見てる。君の瞳はこんなに綺麗だったんだね。
私はいつも変わらないって?
そりゃあそうさ。可愛い恋人が居るんだ。毎日ハッピーに決まっているだろう。
……うん? 君と二人きりで話なんかしていたら恋人が誤解するかもしれない?
ああ、心配しなくて良いよ。
恋人とは心が繋がってる。ラブラブなんだ。
ふふ。せっかく恋人の話が出たから、少し惚気るとね……私の恋人は、記憶喪失になったんだ。
ああ、そんな顔しなくていいよ。心が繋がってるって言っただろう?
記憶喪失になったけど、私のことを全て忘れた訳じゃないんだよ。
確かに、私と過ごした記憶は思い出せないようだ。
でも、気持ちは覚えているみたいでね?
私が側に居ると緊張して震えちゃうんだ。
初々しくて可愛いだろう?
だから記憶が無いことを、私は気にしていない。
もう一度可愛い恋人を口説けるなんて最高だ!
ふぅ。この紅茶美味しいね。家でも飲めるように茶葉を買って帰ろう。
君ももう一杯頼んだら? 身体が温まるかもしれない。
……何故って、君、さっきから小刻みに震えているよ?
この店、冷房が効きすぎているね。やっぱり早く出ようか。
私の家で紅茶を飲めばいい。