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真の優等生の実年齢は8歳だが本当の年齢はアラサー。

 CB1100の開発はなんと1980年代後半。

 BIG-1プロジェクトと呼ばれる、新たなCBシリーズ創造の時だった。

 当時、メーカーの開発部においては「CBとはなんぞや?」ということで意見が分かれる。


 その頃、おやっさんは入退院を繰り返しており、ホンダとしては厳しい状況に立たされていた。

 BIG-1プロジェクトはそんなおやっさんが亡くなってから動きが本格化し、そしてCB1000とCB400が誕生し、その後にCB750が追随する。


 彼らは当時としては「優等生」だと思われていたが、一部では「CB750」が最も優等生だったといわれている。

 筆者はそんなCB750に乗ってみたいのだが未だに機会がないのが残念だ。


 さて、この時のCBはみんな水冷だったが、一部の人間は「CBといったらドリームCB750だろ。空冷だろ」と主張していた。


 ドリームCB750four。

 おやっさんが「こんなもん誰が乗るんだ!」と怒ったことが有名なホンダのフラッグシップバイクであり、別名「ナナハン」と呼ばれるホンダの夢と技術の結晶。


 これが国産バイク業界に与えた影響が大きく、当時のCB1100開発チームはこいつを目指して今風のバイクを作ろうと必死にもがいていた。


 だから1990年代初頭にはCB1100のプロトタイプが写真などで出回っており、「空冷CB」という存在は30年近く前から認知されていたのだ。


「CBとはなんぞや?」に複数の答えを用意する。

 それこそがホンダの考えであった。


 だが問題は日に日に強化される規制に空冷では厳しいこと。

 空冷は空気での冷却以外はガソリンの気化熱を使わねばならないが、気化熱をそんなにうまく活用できないならば冷却は厳しくなる。


 だったら発熱量の低いエンジンにすればいいということになるがそれは四気筒では厳しい話。


 最終的に作っても作っても量産化の目処がたたず苦労していたが、2000年代初頭にチームは1からCB1100を作り直すことにするのだった。


 その時考え出されたのは「F1の技術をフィードバックする」ことだった。

 それまで純粋な空冷に拘っていた開発チームはそれをやめた。


 本田宗一郎が存命だった時期のF1において「空冷」と言い張ったマシンがホンダにある。


 それは「エンジンオイルをまるで血液のようにエンジンその他で循環させる」という「く、空冷?」なる代物だったが「ルール違反にならなかった」ということでホンダは空冷と言い張った機構だった。


 だからホンダは同じ機構をCBに搭載し「空冷」と言い張ったのだ。

 スズキなどの油冷バイクに乗った人間は「空冷ちゃうやろ」というのだが、実はCB1100には「逆流防止用のタービン的なファン」しか無く、エンジンオイルの循環に特殊な機構はないので「空油冷」の方が正解に近い。


 それをホンダはF1を盾に空冷と言っているが、空冷でも間違いないといえば間違いない。


 これは余談だが、F1のエンジンをフィードバックしたという例ならアフリカツインもそうである。


 あの信じられないぐらい小型のエンジンはつい最近までマクラーレンホンダで活躍しようとして大失敗した技術のフィードバックで、その基本的な小型化の仕組みは設計思想をそのまま流用したものだ。


「1000ccだがエンジンの大きさは500cc並み」といわれるが、F1のホンダエンジンもパワーこそ低かったが信じられないぐらい小さかった。

 あっちでは失敗したのだがバイクでは成功したわけである。


 そんなF1フィードバックを受けたCB1100は、同時期に開発中のNC700などで培った「フリクションロスの低減」や「熱量の低い4気筒エンジン」にもする事が出来、非常に高い完成度で世に出回ることになった。


 特に販売年にはCB400より売れたといわれるCB1100だが、実は下手すると2017年もCB400より売れた可能性がある。

 最近はCB400の売れ行きは右肩下がりだが、CB1100は持ち前の特性が今のニーズに合っている優等生なので人気があるのも頷ける。


 まずエンジン特性だが、こいつはとにかく「回さないことがこれほど楽しいのか」と思わせるフィールだ。

 開発者をして「回すと回るが不快になるようセッティングした」とのことだ。


 理由は空冷らしいイメージのため、何とバルブの点火時期が意図的にズラされているから。

 だから回転が高回転になればなるほど不快な振動になっていくというCB1300やCB400とは真逆の特性がある。


 しかしこれは空冷やキャブレター仕様エンジンの特性にそっくりであり、乗ってみると「あれ?ゼファー750に似ている!」と思わせるような仕様だった。


 ゼファー750が好きな筆者には信じられないことにあの面影が蘇る。ホンダなのにである。

 30kgぐらい重くなったが、こいつはインジェクションやらABSやら最新の装備が満載で別物のはずなのに。


 乗ってみるとわかるが、こいつほど低速が楽しい大型四気筒ネイキットバイクはない。

「回さなくていいよ。好きなだけ回せば?」と言ってくるようで、とにかく心に余裕がある。


 まさしくその特性はロングツーリング向けであり、乗ってて飽きないしどこまでも行きたくなる。


 そして信じられないのはそのトルク。

 こいつのトルクのヤバさは、アイドリング付近までノッキングしないレベルである。

 800回転以下になってはじめてノッキング。

 アイドリングが1300回転ぐらいだが、1500回転ぐらいで普通に走ってしまう。


 レブリミットは8000回転とエンジンとしては中回転ぐらいの仕様だが、常用領域は1500~2500ぐらい。

 4000以上回さなくもていい。


 特に1500回転は最高だ。

 6速1500回転で60km。

 余裕のありすぎるエンジン音だがスルスルと加速していき、1500~2000回転でのっていける。

 この状況での燃費は30km近くにもなり、とにかく楽しい。


 そして2800回転で時速100kmだが、この時も燃費は20kmを超える。

 だが楽しいので80km~90kmだけでいいなと思わせてくるし、この時の燃費がヤバい。

 タンク容量16.7Lというやや少ない容量でありながらそのイメージを払拭させるのは燃費が非常に優れているからだろう。


 とはいえ、いざ回せば鬼の加速。

 CB1300には劣るが、四気筒らしい加速をみせ、圧倒的なパワーでこちらを振り落としかねない加速をしてくれる。

 でもそれも不快な強烈すぎるパワーではない。


 開発者はこいつを「ライダーが主役であり、バイクは道具である。昨今のバイクはなぜ自分たちが主人公になりたがり、ライダーはおざなりにされるのか。そんなバイクは求めていないライダーも多いはずだ」と言い切っていたが、まさにそんな味付けは「優等生」そのものだ。


 CB400と違い無理しておらず、停車時もドルドルドルドルと静かにアイドリングするのみ。

 そりゃそうだ。


 水冷じゃないからファンなんて付いていない。

 だから静かに回り続けるだけなのだ。


 CB400なんて赤信号の時には「ヴィィィィ」と不快な音を鳴らす

 アフリカツインやCB400R、NC750は「フィィーン」だがそれでも音が出る。

 CB1300は「ヒュゴォォォ」でありこれまた不快。


 しかしCB1100は只管にライダーがスロットルを開くのを待つのみだった。

 そんな姿がクールな大和なでしこのイメージを彷彿とさせる。


 ドリームCB750というのも実はそんな存在だったらしく、おやっさんが生み出したナナハンに乗った熟練ライダーほどCB1100の虜になるのだという。


 若手を排除する仕様だというが、私はオッサンではなく若手ライダーに入る方だ。

 少し前までは20代だった程度の年齢。

 まだオッサンに向けて歩みだしたばかりの年齢である。


 そんな私はたまらなくCB1100が好きになった。

 ツーリングを考えた場合、こいつの唯一の弱点は重さ。

 それもその重さはエンジンをかけるまでの重さでそれ以外では重さを微塵も感じさせない。


 確かに曲がらないし傾かないし、無理に傾けると危険な挙動は示すが、バイクってそんな攻め込むものじゃないと思ってる私にとってCB1100の方がしっくりきた。


 とあるバイク屋のライダーは自身のブログでCB1100を「苦労するのがバイクの醍醐味というが、CB1100の苦労は本当に少なく愛着が沸く弱点ばかりである」と言った。


 彼にとっての「バイク」とは、某漫画で「バカにしか乗れん」というようなもっと弱点の多いバイクだというが、CB1100は弱点が少ない一方でそれでも愛着が沸くバイクらしいバイクだと主張する。


 私もそこに同意だ。

 CB1100の弱点はというと、


「航続距離」

「重い」

「対策なしの場合はネイキッドなので風などに悩まされる」


 特に最後は夏場は酷い。

 ムシムシムッシー略してムムムの攻撃によって精神的なものも含めて大ダメージを受ける。

 かといってCB1100にはなんかあんまりカウルとか付けたくないんだよなあ。


 そこで「虫に耐える」のが正しいバイクの乗り方なんだろうか。


 ちなみに風についてだが、これは100kmまで飛ばさない乗り方が基本になるだろうから却って飛ばさないための精神的防波堤になっている部分がある。

 それでも80kmぐらいで強風吹き荒れると辛いのはネイキッドの宿命だろうか。

 ちなみに本気を出せばリミッターまでは軽い。


 250kgオーバーとはいえ排気量1140ccの90馬力なので当然である。


 航続距離は正直どうにかしてほしいとは思うが、こいつの場合はすぐそこのガソリンスタンドに入って給油したくなるような感覚に陥るのでCB400やCB1300みたいに旅先で右往左往することは逆になかった。


 なぜだかわからんが余裕があって「あ、スタンドだ。入ろッ」ってなるのである。


 CB400では「スタンドとかどうでもいいよ!とにかく停止したくねえ!ノロノロ運転したくねえ!」ってなった。

 CB1300もそう。


 前者は停車時などにイライラし、一度降りると再び乗るのが辛くなるからだ。

 正直CB400の時が一番運転が荒かった気がする。

 後者のCB1300は重いからだ。


 スタンドで停車するだけでその重さにウンザリする。


 CB1100は重いのに再びそのままどこかへ行こうと思える性格だった。


 なぜそう思うのか?

 それにはクラッチもといシフトペダルに理由があると思う。

 私が乗ったCB1100は新しいスリッパークラッチ搭載車だ。


 CB400といえば、ガチャコンガチャコン。安っぽい音がする。

 上手くできるとスコンスコンといくが、その時のオイル状況で音が変わるのでどうも違和感を感じる。

 オイルが劣化すると音が酷く、ある意味で「交換時期がわかりやすい」のではあるが……


 Nから1速に入れるのも「ガチャコ」みたいな音がしてなんかなという感じだった。

 CB1300は新型とその1つ前に乗ったが、1つ前はCB1300とさほど変わらず、ちょっと重い音になったぐらいだ。


 CB1300の新型についての話をする前にCB1100の話をするが、こいつはNから1速に入れた瞬間違いを味わえる。

「ズダン」という重低音と共に、ちょっとの力であとはスプリングの力で1速に入るのだ。


 この高級感たるやなんとも言いがたい。

 ハーレーやドゥカティのソレそっくりである。

 実は新型のCB1300の新型もスリッパークラッチになって似たような感じになったが、「スタン」となぜかCB1300の方が静か。


 なんかCB1100の方が重低音でいい音なのである。


 そして通常走行の時においてもこのシフトチェンジフィールは変わらず、スタンスタンと即座にチェンジできる。

 CB400なんてツイッターでも嘆きがあるぐらい1→N→2が上手く入らないのだが、CB1100にそんなことはなかった。


 この影響で思ったのだが、CB400もリチウムイオン電池にして軽量化しつつその分をスリッパークラッチにしてみたらもっと化ける気がした。

 それでもCB1100の方が優等生だが、なんかクラッチ酷くない?


 特に最近はものすごく品質低下してきているらしく、5→6が上手くつながらなかったり、N→2が上手くつながらないとのことだが、私も5→6は何度かギアが上手く繋がらず苦労した。


 ちなみにこの「楽しいクラッチ」CB400FやCBR400Rなどのグローバルモデルなどでも似たよう挙動だ。


 なんでCB400とこんなに差があるのか知らないが、私がCBR400Rもまた好きな理由はシフトチェンジにあった。

 CB1100についてはシフトダウンもとにかく楽しく、MTバイクも悪くないなと思わせてくれる存在だ。


 そこにはやはり、1000回転以下までの余裕なども関係しており殆どの場面でエンストすることなんて無い。

 CB400は1500回転以下は危険領域。

 1000はエンストしても仕方ない回転数。


 でもCB1100もCB400もどちらも同じような感覚でエンジン回転数は落ちる。

 そうするとカーブなどで露骨に差が出る。

 左折でも4速でいける1100と左折時には2速でないとエンストしてしまうこともあるCBの違いだ。


 横断歩道があるような確認が必要な大通りの交差点、例えば国道から県道に入るような大きく長い横断歩道があるよいうな場所が非常に怖い。


 そういったことがあり、結論として現在における優等生の称号はCB1100に与えるべきだと筆者は思う。

 巷では「原付より加速が鈍い」だとか「つまらない」だとかいう話があるのだが、つまらないというのは一旦普段どういうバイクに乗ってどういうことをしているのか予測がつく。


 貴方に似合うのはCB250ホーネットのように「1万2000以上ブン回せ!」みたいな代物だろう。

 そんな余裕の無いエンジンで低速でエンストやらかすような真似が好きじゃない筆者はCB1100のほうをオススメする。

 回して何ぼのエンジンは気を抜くとエンストから立ちコケするから私みたいなヘボにはダメだ。


 じゃあCB1100を愛車にするのかと言われれば答えはNOであるが。

 筆者はどうしても不整地走行をする人間。

 そうなるとCB1100はどんなに楽しくともついてこられないのだ。


 CB1100は結局「舗装路の優等生」であり「万能バイク」ではなかった。

 トラコンなどがないCB1100は道路の状態が少しでも悪いとすぐさまトラクションを失いかけてずっこけそうになる。

 例えば「大きなヒビ割れや隙間などが多い道路だとカーブが怖い」


 トラコンが無いだけでなくあまりカーブを攻めるような仕様でないためにそういう感覚になるのだろう。


 つまり、不整地などもっての他でスクランブラー仕様にしようにもあまりにも重量がありすぎるしスクランブラー仕様にできるような代物でもなかった。


 どこまで行っても四気筒ロードスポーツは現状の私にとって厳しいものなのだ。

 2台所有が許されるならCB1100とオフローダーの二刀流にするんだろうが、残念ながらそんなお金は無い。


 なのでCB1100とは残念ながら付き合えなかった。

 でもいつか不整地走行をしなくなった時、あいつはそこにいて待っていてくれるのだろうか。

 そしたら迷わず愛車にするだろうなという魅力がCB1100にはある。

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