CB400はなあ……つれえわ
メッセージでこんなものをいただいた。
CB400SF/SBが優等生ではないという理由を細かく是非知りたいという話。
どうせなら書けるだけ書いてみようと思う。
まず、人の好みはそれぞれだがロングツーリング主体の人間が好きなバイクの性質においてある一点が大体同じであるというのはご存知だろうか。
それは「低速が楽しい」ということである。
30km~50kmぐらいがとにかく楽しいバイクほどロングツーリングに向き、またライダーとの関係も長くなる傾向にある。
そして世の中、長い付き合いになるバイクというのは大体「弱点はあるがそこは可愛げというものでカバー出来、そしてそういうバイクは時にライダーの半生を共にすることもある。
CB400は確かに出た当初、そういうバイクだったかもしれない。
ただしそれはNC31と呼ばれる初期型モデル。
ようはハイパーVTECの無いCB400であり、それ以降のVTEC搭載型は正直言って「当時の世相を反映したバイク」という感じでしかなく、現在には合わないとハッキリ言える。
なぜそう断言できるのか。
それはこれからご説明しよう。
CB400というのは、その登場は1990年代初頭である。
当時カワサキのゼファーがネイキッドバイクと呼ばれるブームを巻き起こした。
そのブームの直前に人気だったバイクといえば「3000回転以下でエンジンを回したらろくに面白くないような」「ピーキーすぎてお前にゃ無理だよ」と素人を蔑むようなライダーが乗るスポーツレプリカバイクの全盛期。
実はCB400。エンジン自体はそのスポーツレプリカのCBRのものを流用したものだったりする。
そいつをフラットなトルク特性に調整しなおしたのがCB400だが、こいつもメーターを見てわかるとおり「レブリミット1万3000回転」とどう見ても高回転型エンジンだ。
だからね、乗ってみるとわかるんだが、「もっと回せ」といわんばかりの音とエンジン駆動をする。
ショートツーリング主体の人間はこれでも楽しいのかもしれない。
例えばCB400の乗り手は普段どこまでギアを上げるだろうか。
60kmの法廷速度で4速か5速か6速か。
大体の人は5速というかもしれない。
5速2500回転ぐらい。
でも私は6速2000回転ぐらいで乗りたい。
その時のエンジン音がとにかく余裕があっていい音だ。
5速2500回転だと燃費も悪いし乗りにくい。
しかしである。
6速60km運転は本当にギリギリなのだ。
ちょっとでもスピードが落ちればCBは途端にノッキング気味になり、(補足だが筆者のCBはNC42でインジェクションモデル)
つまらない振動と共に根を上げ「はやくシフトを下げろ!エンストする!」といってくる。
かといって2500回転で5速まで上げようものなら、「もっと回せ!もっと回せ!」とせがんでくるような状態だ。
これがあまり好きになれなかった。
筆者は元々車の代わりにバイクを手に入れた人間。
タイヤ2つを捨てた以上、その特性は筆者が求める車と同じエンジン特性であってほしかった。
つまり、普段は余裕がありすぎて100km巡航時もエンジン回転数がそれなりだが、いざという時の加速がほしい。
CB400は、後者は満たしていた。
正直言って加速は凄まじい。
4秒程度で100kmにいける。
わけのわからないパラレルツインエンジンのスポーツバイクなんか目じゃない。
そこに惚れ込む人は今でも多いし、私もそうだ。
だが、そんな鬼のような加速なんて滅多にしない。
とにかくCBは余裕がなかった。
いや、エンジン性能的には余裕があるがエンジンフィーリングには余裕がない。
ソレはまさしく「こいつ自体は元々スポーツレプリカとかと同じ血脈を持つ」からであって、ロードスポーツバイクってこうなんですよと主張してきた。
今だからはっきり言えるが乗り心地も実はよくない。
スポーツバイクといえども、CBは別段そこまでサスペンションが優秀ではなく、NC700に乗る人が嫌悪感を抱いたような跳ね上げなんかは普通で、両手がそれで痛くなるなんて当たり前だった。
でもそれがあるからこそ復元力の高さを生かして機敏にヒラリヒラリと車体を傾けて峠なんかを走れるわけであり、
「これそういうサーキット向けバイクちゃうん?」と乗ってて本当に思ったものだ。
このサスペンションと合わせてそんなにやわらかくないシートの影響で尻が痛くなり1時間も乗ってられない。
レーサーじゃないんだからさ……
誰かが「CBR400より全領域で速いんじゃないのか」と言ってたが、現行CBR400となら間違いなくCBのが速い。
そういう仕様に仕上がっていた影響で、自然と所有欲が減退していった。
ロングツーリングでは高速併用の1日900kmに挑んでいたが、何しろそれは苦痛だ。
まず、アイツは燃費がよくない。
高速時は特に。
CB400は6速の場合、SPEC2以外は6750以上がVTECが入る領域である。
問題はここから。
100km巡航時には入ったり入らなかったりする。
有名なCB400SB乗りのyoutuberもそう主張していたが、私もそこは断言する。
その状況が「極めて燃費が悪く辛い」
何が辛いかというと東京から名古屋まで走ることが出来ない。
走る場合は6000回転90km前後で残り3Lぐらいの状態かな。
900kmの際の高速を併用してのツーリングというのはようはガソリン補給のためなどでの下道であり、高速をずっと走るということが難しいのだ。
90km巡航でも燃費は良くて20km前後。
航続距離は良くて350といったところ。
だから900km移動にはおおよそ3回以上の給油が必要。
ギリギリまで走ることはないので大体4回ぐらい給油する。
1日に何回給油してんだって感じでレシート見る度にイライラしてくる。
ちなみに断言しておくが、アフリカツインとCBR400Rの1.7倍のガソリン代がかかった。
信じられないと思うかもしれないがCB1000より燃費が悪い。
まあバイクなら割と普通に思えるが、高速主体だと400kmは軽いバイクが昨今では多いので、割と辛いほうだ。
しかも例えばアフリカツインなどは100km巡航だとリッター27kmとか平気で出るんでもっと楽に移動できるが、CBは100km巡航が極めて辛い。
そんなCB400の私の評価は「日本の道路事情に最適化されているバイクという触れ込みだが、実際は性能的限界が日本の道路事情とほぼ同じでそれを押し付けてくるバイク」という印象。
よく評論家は「熟成を重ねた」とかいうんだが疑問符が浮かぶ。
特に某バイク雑誌なんてアップグレード毎に熟成という言葉を用いるがすでに発酵してるんじゃないの?ってぐらいだ。
私が手放した原因はこの一連のエンジンフィールと燃費問題と、硬すぎるシートと、跳ね上がるサスペンション、そして例の品質低下、それとは別に「NC42だけが持つ最悪の弱点」というのがあった。
実はNC42になってインジェクション化された時、CBはとんでもない弱点を2つ抱えたのだった。
1つはオイルがリターン式になりエンジンを循環することによるガソリンタンクの高熱化。
まともなライディングパンツでも夏は火傷しかねず、ガソリンタンクに卵を落とせば冗談抜きで目玉焼きが焼ける(試してみた)ほどに高熱化する。
雨が降ると「ジュワァ」という音がガチで出る。
またタンクだけでなくエンジン冷却面においても排ガス規制によって劣化した。
知らない人は本当に知らないので本当に驚かれるのだが、
通常、車のエンジンはガソリンの気化熱で冷やしている。
燃料噴射時の気化熱を使うのだ。
爆発させるガソリンで冷却?と思う人がいるかもしれないし筆者も始めてその話をきいた小学生のときには驚いたのだが、それはさておき、
廃ガス規制によってこれが難しくなり、空冷型バイクが相次いで姿を消したわけなのだが、CB400も潤沢に燃料を使えなくなった影響でエンジンが高熱化。
冬でもファンが回り、ファンからは尋常じゃない高熱が足元に降りかかってくる。
この2つの熱風攻撃は「暑い」ではなく文字通り「熱い」であり、火傷しかねないものだ。
冗談抜きで半ズボンなんて履いた日には大火傷する。
GTOの1つ前の作品の湘南純愛組など、マガジン関係の不良がそんな乗り方していたが「それが可能なのはNC39まで」と釘を刺しておく。
こういう火傷のエピソードって極一部の限界性能を求めたスーパースポーツだけの話だと思っていただけに残念すぎるポイントである。ネイキッドのイメージが変わってしまう。
バイクでもっとも重要なのはニーグリップといわれる。
エンジンタンクを太ももではさむようにしてバイクにしがみついてバランスをとる方法。
基本中の基本のそれがCB400では状況によっては全くできない。
筆者は真夏に納車され、初日にそれを知らずに乗って冗談抜きで大火傷した。
教習者のCBはNC39とNC31だったのでそれを知らなかったのだ。
だから峠に行っても寒い地域でもない限り逆にカーブが怖いというような状況になり、夜でも熱帯夜だと両足を開いたまま走るような状況になり、なんていうか「これのどこが楽しいの?」という状況になってしまった。
所有欲が減り続け、バイクって我慢大会して乗るものなのか?と迷う日々。
その日々を吹き飛ばしたのがとある大型車との出会いだった。
それまで大型などとる気もなかった筆者はとあるライディングスクールにてゼファーに出会う。
750cc。
つまりナナハンの代名詞ともいえるバイクの1つ。
車格が何気にCBとほぼ同じだったりする隠れた優等生のネイキットバイク。
そいつはとにかく楽しかった。
これが始めて出会った「本物の優等生バイク」の1つであることを知ったのはその後しばらくしてから。
キビキビと繋がるクラッチ。
普段は大人しいが回せばそれなりに出る速度。
そんなこいつの車重は220kgと実はかなり軽量なミドルサイズバイクだったりする。
筆者は「こいつが本当にマガジンの不良連中のご用達だったのか?」と首を傾げるほどだ。
なんていうか、不良に向かない。
むしろ巷で表現される優等生そのものだった。
実際今でも愛用する者が結構いるだけに、こいつは本当に優秀なバイクだったのだ。
それが大型への誘いだった。
ライディングスクールの教官からの「大型の方が余裕あるよ」という言葉を信じた筆者は大型取得を決断。
本当はこいつのライバルであるCB750目的に教習所に向かうも信じられないことに教習車がまたゼファーであり、再びゼファーの良さを再認識する。
一方で教習車のNCは微妙で「なんだこれは?」と思ったものだった。
そんな筆者は大型を取得した後、なぜかネイキッドにこだわり、CB1300などに相次いで乗った。
だがそこで感じたのは「ナニコレ」だったのだ。
CB1300も結局CB400と変わらなかった。
いやこいつはもっと危険だ。
回せ!とせがむエンジンフィールだが、こいつで回したら死ぬ。
バイクだけぶっ飛んでいくか、バイクごとぶっとんで壁とキスすることになる。
おまけに普段の取り回しは重過ぎるし、CBってこんなのなのか?と正直落胆した。
2018年モデルもスリッパークラッチがついただけでどの特性は変わらないどころか排気音がやかましくなって「もっとその気にさせようとする」仕様となった。
その気にさせる仕様は2018年モデルCB400でもそうだ。
まるで社外品マフラーのような音だが、信じられないことに社外品マフラーより音が煩い。
試乗車に乗ったらやかましすぎて「大人しくしろ」と思うぐらいだった。
そんなこんなでCBR400Rや、教習車じゃないNCに触れた筆者は「やっぱ四気筒CBはもう時代遅れなのかな」と思い始めたのだった。
ちなみにアフリカツインについても「もっと回せ」のイメージがある。
低回転時のドコドコ音は「二層式洗濯機がうなってる状態」の音ソックリで酷いもんだ。
Youtubeの勇ましい音の動画は4500回転以上。回しすぎだ。
普段使う領域では高回転の部類だ。
重低音のドコドコ音は3500回転以上だといい音だがこれだと60kmで80km以上出てしまう。
5速3000回転にも出来るが燃費が悪すぎる。
アフリカツインは3000回転以上が極めて燃費が悪い仕様であり、4000回転まで回したくない。
なぜそんな仕様かはわからないが2000回転のエンジン音が微妙だと思う国外の評論家は非常に多く、私の感性は欧州などのバイク評論家と同じなのかもしれない。
だがその一方CBR400Rや400Xはエンジンが低回転で低速が楽しい。
これがやはり今風のチューニングと思われ、とにかく「その気にさせない」バイクである。
NC750もそうだった。
しかしNC750でいえば誰かが言うように「なんかそれを強制されている」感じがする。
回せばそれなりに速いのだが、あえて回させないようにしている感じだ。
ゼファーと何が違うのかわからないがコイツはどうも「回したらアカン」みたいな強迫観念のあるフィーリングである。
レブリミットが低すぎるのにそこまですぐに上がってしまい、かつ4500回転から急激にトルクが落ちていく仕様だからかもしれない。
筆者が好きなのはフラットトルクなんだろうなと思った。
エンジンは低回転でいいがいざという時は回したいのだ。
世界戦略車の1つアフリカツインはフラットトルクだし回せば凄いんだが
回さなくてもいい仕様の一方低回転の音が不快なのが唯一の弱点。
これさえどうにかなれば……などと思っていた矢先のこと。
そんな時に出会ったのがCB1100。
こいつこそ現在における「真の優等生」である。
それはCBというにはあまりにもイメージが違っていた。
それまでの乗ってきたCB400やCB1300を擬人化させるとこんな感じだった。
CB400は教室の窓際でドヤ顔している元気っ娘。
LEDアクセサリーなど最新のお洒落している割になんか言動が古く「死語」を多用してくる。
よく見ると靴下がルーズソックスなど「明らかに周囲と比較すると浮いている」
その癖付き合ってみるとデートに行こうものなら「もっと回して! 8000以上回してほしいのぉ!」みたいな感じ。
「お前よく見たら服とかブランド物じゃなくない?」
「その翼のマークのバッチ、よくみたらただのシールじゃねえか!」とか言いたくなるのがCB400ちゃん。
そんな言葉をぶつけると「げ、限定車は立体エンブレムだし!」と言い返してくるが実は年齢サバ読みの三十路ロリババアという女の子。
周囲にいるNinja400ちゃんなどからは「筆者ってばバカよねえ。四気筒だけが自慢なんだからさー。2017年規制で生産終了するなんていうバイク雑誌のデマに振り回されちゃってッ」なんて言われそう。
実際ホンダも終了するかもしれないとか煽ったんだけどな。
CB1300ちゃんはその姉だが、「回して!」というから回すと死ぬ。
強すぎるトルクに体が置いていかれそうになるような化け物。
見た目も腹が出ているぽっちゃり体系。
体が重い、とにかく重い、今時じゃない。
同じ教室には体重がCB400ちゃんより軽いMT-07さんとその親戚のXSR-700さんとかがいるがそっちに目がいくぐらい重い。
本人は「XJR1300とかがZXR1200とかがライバルなんだから」と言い張るが彼女がライバル視する子はみんな卒業してしまって留年中みたいな状態である。
そんな彼女の今の友達は「メーカー史上初のベルトドライブが自慢」のドゥカティXディアベルちゃんとか。
でも彼女の方が見た目はやぼったいのに30kgぐらい軽かったりする。
そんな中でCB1100ときたら、教室の隅っ子で静かに時を待ちながら読書をしている子だった。
彼女と一緒に出歩いても全く苦じゃない。
唯一体格に対してやけに重く、体格がCB400とさほど変わらないのに体重が40kg以上も多いが、なぜか可愛げがあるのだ。
乗ってみればそんなイメージを払拭させるぐらいいい子だったから。
そんな子はある日突然こう打ち明けるのだった。
「あの……私、実はあの三十路留年組と本当は同い年だったかもしれないです……年齢自体はまだ8なんですが……30年近く母親のお腹の中にいました」などととてつもないカミングアウトをしてくる。
さて……それじゃCB1100を語ることにしようか……