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beauty princes

作者: 久野陽子

 どこかの国のとあるお城に、それはもうオシャレが大好きなお姫様が住んでいました。

「ねえ鏡、この国で一番美しいのはだれ?」

「はい、それはお姫様です」

 真実しか言わない魔法の鏡の答えにお姫様は大喜び。今日も部屋の中で一人楽しくファッションショーを開いていました。

「美しいって罪よねえ。国中の憧れを手に入れちゃうなんて、とてもいい気分だわ」

 うっとりと自分の顔を見つめながら呟いた独り言に鏡が答えます。

「ブッブー、国中で憧れの的になっている人はお姫様ではありません」

「え! それは一体誰なの?」

「街の花屋の娘です」

「花屋の娘? 国民はその娘のほうが私よりも美しいと思っているの?」

「はい、そうです」

 鏡の答えが気に入らないお姫様はその娘を国外追放にしました。そして次の日、念入りに化粧をすると再び鏡に訪ねます。

「鏡よ鏡、国民が一番美しいと思っているのはだあれ?」

「はい、それは街のパン屋の娘です」

 今度はその娘を国外追放にしました。

「鏡よ鏡、今度こそ国民が一番美しいと思っているのはだれなのかしら?」

 鏡が答えるのはいつも街の娘でした。そのつど娘達を国外追放にしてもお姫様の名前が出てくる気配は一向にありません。変わらぬ答えに怒りを抑えられなくなったお姫様はついに鏡に問いただします。

「この国で一番美しいのは私なのに、どうして誰も私を美しいと思えないの!」

「誰にも会わないからですよ」

「は?」

「いいですか? 人は『直接見たもの』にしか感想を持てないのです」

「だから何?」

「『誰も見たことがないお姫様』では美しい以前に誰も何とも思えないのです」

「じゃあ、どうすればいいの?」

「簡単ですよ。この城から外へ出て、国民にそのお顔をお見せすればいいだけの話です」

 するとその時、トントンと扉をノックする音が聞こえてきました。

「姫や、この部屋に引きこもってもう三年。せめて顔だけでも見せてはくれないか」

 扉の外ではお妃様が心配そうに声をかけています。でも、そんなお妃様の気づかいはお姫様には余計なお世話にしか感じられません。

「や~よ! 外に出て面倒な思いをするよりも部屋の中で独り気楽に過ごしたいの!!」

 元々人付き合いが嫌で引きこもったのですから、城から出ようとか国民に顔を出そうなんて思えるわけがありません。

 『誰にも会いたくない、けど、誰からも想われたい』こんなわがままなお姫様の願いが叶う日は果たしてやって来るのでしょうか?

 それは魔法の鏡にも分からない答えです。


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