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木々の夢
モノクロームの時間に
老木は夢を見る
太陽がもっと大きかった時代を
懐かしみ
疎ましみ
梢に眠る小鳥にさえ
聞こえない程のイビキをかいて
深夜
風もなく
梢が揺れるとき
ざわざわと
木から木へと
欠伸のように伝染して
森中が騒めきだす
彼らが
寝返りを打っているのだ
静かであろうとして
華やいでしまうこと
真っすぐであろうとして
広がりを止められないこと
育てば育つほどに
根は最も深くなり
梢の先は最も高くなり
互いが引き裂かれるように
離れて行ってしまうこと
幾千年の眠りを繰り返しても
諦めきれない彼らは
朝には
また終わらない思索を始める
巨大な老木は
しかめっ面のままで
色とりどりの
小鳥たちのからかいも聞かず
遥か西方より渡ってきた
古い馴染みの風の苦言も聞かないが
時折に足元をごそごそする
もぐらのくすぐりには
少々弱いらしい