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白く吐く息  作者: につき
7/10

とびらのことば

木とは

この世の全ての生きている

あるいは枯れてしまったが

その姿を留めている木たちである


空とは

この世の全ての生きている

誰かの上にあるいは記憶の中に

その広がりを留めている空である


夜とは

この世の全てに生きている

誰かを包むあるいは後悔の眠りに

安らぎをもたらしている夜である


水音とは

この世の全ての生きている

誰かの求めているあるいは暗渠より

聞こえる死者の気配としての水音である


突き詰めるまでもなく

言葉は担保される


目に見える全てを

わたしたちは言葉に置き換えようと

知る言葉の数だけの世界を切り取る

つまりは

それぞれの言葉の範囲に

それぞれの世界は限定されている


かつて

われわれを包んでいた

無限の非言語化世界は

今や消えてしまったのだろうか


伝えようとする気配は

斜陽に最も濃く

開かれた窓から

音もなく訪れる


言葉は函ではなく

それは扉

開けば開く程に

末端へと向かいながら

すべての部屋に壁はなく

全ての言葉は何処へでも行ける


木の扉を開けば

緑濃き果てし無い記憶が

いつもそこには空が広がり

逞しき根に耳を当てれば

こんこんと汲み上げる水音


空の扉を開けば

雲たちの奔放な群れが

夜に目覚める星たちを隠し

赤光に輝く広葉樹たちを

ひんやりと安らがせる


夜の扉を開けば

死者が落とす涙の水音が

木々は眠りの中で

寂しい月の裏側の夢を見る

燃え上がる炎に憧れている


水音の扉を開けば

虚しさを押し殺している太陽が

煌く氷柱を溶かしている

大きく口を開けた赤子が

母の乳房に吸い付いている


新しさの扉を開けば

そこにはまだ何もなく

ただ

明滅するように

何かが現れ

そして消えるとき

何処かで

新しい扉になっていく

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