雨の中の炎
その風は止まりたくないといった
だから吹いているのだと
連続しない時間が
あたかも連続するように
野池にさざ波が渡り
鴨たちが不意に羽ばたく
冬の空に喜びはなく
何かを待つように静かだった
そして
降り出した雨の中で
燃え上がる炎を見たのだ
大とんどの豪炎は
古い杜の梢を焦がさんばかりに燃え盛る
ぼおん
ぼおん
次々に竹が爆ぜて鳴るたびに
辺りに散らばる火照った頬の人々は口々に
我知らない歓声を上げる
様々に
連続し
断絶し
連綿と
明滅し
常に
歓声が
悲嘆が
嬌声が
絶叫が
満ちる
そのとき
土は黒く焦げたが
どれほどの深さまで
死んだのか
そして
その死こそが
無数の種たちの叡智となるだろう
やがて時が満ち
直ぐな樹木となれば
彼らの知性があたりに林立するのだ
冷たい雨が
ずいぶんと降ってきた
わたしは逃げるように走る
そのとき道は黒く濡れ
通り過ぎるものを選ばない
寛容な硬質さでわたしを運んだ
やがて
夕陽は隠れるだろう
消し炭のような闇が包む
よじよじと
天空へ蠍が登っていく
その黒き鋏をバンザイして
雨を喜べ
その猛毒の針で
夜空の綻びを指し示せ
とてもしずかな
月の女神は
鋭利なる鎌を持て
地上から伸びる
星々の光の新芽をせっせと刈り取る
明日のサラダを大盛りにしたいのだろう