滅びて後想うなんて噓だ
滅びて後想うなんて嘘だ
だから
もしも君が崖っぷちにいるのなら
まったくそうでなくても
こころの何処かで落ちてしまいそうな
暗い穴から目が離せなくなっているのなら
今
今なんだ
やわらかさを最初に教えてくれたひとのことを
君の全ての弱さをこめて
ひとつだけのこころで想うこと
煩わしさがあったとしても
生ぬるさがあったとしても
それらは
土壌であるから
今
全ての世界が君を見ている
それは
君が全ての世界を見るように
届くだろうかだとか
手ごたえが欲しいだとか
姿が見えないだとか
本当に誰かを想うとき
そんなことはどうでもよくなって
今
生まれたてに戻って
分厚い暗雲を突き抜いていく叫びとして
想うのだ
そのとき君に真っ白な祈りが降りてくる
全ての願いは叶えられ
全ての思いは受け入れられ
全ての手は握られる
これは理想ではなくて
これは夢想ではなくて
これは悲愴ではなくて
これは空想ではなくて
これは……
引かれ者の小唄ではないんだ!
我らは世界に隷属しないことを誓う!
少なくとも対等であろうとして
小さな小さな灯を信じている
この暗闇でこそ輝きを際立たせるものよ
これこそが
今
今なんだ
つよさを最初に感じさせてくれたひとのことを
君の全ての意地をかけて
頑ななこころで想うこと
口惜しさがあったとしても
傷が痛むとしても
それらは
北風であるから
今
全ての星が君を見ている
それは
君が全ての星を見るように
時を戻したいだとか
やり直したいだとか
もう一度だけもう一度だけだとか
そんなことばかり涙に浮かぶとしても
今
そのままの君として
分厚い岩盤さえ持ち上げる根となって
噴き上げるのだ
そのとき君を眩い光線が射し貫いていく
全ての思いでは意味を取り戻し
全ての悲しみは暖かに浸り
全ての痛みは光に包まれる
これは願望ではなくて
これは虚構ではなくて
これは消失ではなくて
これは郷愁ではなくて
これは……