絶叫
とどけ 凍えより逃れられぬものに
とどけ 小声の囁きを押し込めるものに
とどけ 等しき空を仰ぐものに
この痛みはなんだ
われわれは何故こんなに行き違うのだ
この手触りはなんだ
われわれは何故こんなに近しいのだ
この決別はなんだ
そして何故これほどまでに遠ざかるのだ
こころの奥まで透けていく
なに一つ隠すことなく
なに一つ飾ることなく
なに一つ語ることなく
この拒絶はなんだ
指先でスパークする静電気
この灼熱はなんだ
今更に襲う雷鳴の遅延
この嘆息はなんだ
背を貫く後悔の眷属
こころは決してからだを超えはしない
なに一つ今を捉える術はなく
なに一つ後ろを確かめる術はなく
なに一つ終着に永遠はなく
こんなことは現代では周知だ
喚き散らすことも歌詞となり
啜り泣きは水銀灯の影になり
本気になれない手首の傷となり
こんな時代だから
本能だけが本当だって
それだけが信じられるんだって
そう言って
かなしくかなしくかなしくかなしく……
いつか取り戻すんだって
くりかえしくりかえしくりかえしくりかえし……
こころは分かり合う故に行き違う
近しいゆえ痛み
遠ざかるほどに痛み
触れ合えば時が痺れるように
息を詰め耐えても耐えても
別れは連続してしまうから
皆
連続する意思を我先に争う故に
置き去りにされる
からだと
こころたちの
くりかえす痛みよ
肉薄する絶叫よ
おまえたちの熱が
厳冬の曙に揺らめいている
凍えるばかりの野に
曙光の眩さを透過している
真白の樹氷林となり立ち尽くす
捨てきれないお前たちの無垢から
冬空に無音の絶叫が立ち昇っていく