セッション6 -ギア選び-
ブーツと板を選ぶ話です。
ブーツのフィーリングを確かめて、店内を歩き回っていた歩夢もまた同様だ。
「僕もこれは違うかな。なんか緩過ぎる。」
3人とも一発目は違ったようだ。
その後も皆、何度もフィッティングを試みる。どれも悪く無い代物だ。しかし、なかなかこれと言うのが見つからない。サイズを微妙に変えてみたり、左右で違うサイズを試してみたり。だけどある部分は良くても、別の部分は違和感がある。キツかったり、変に余裕があったりと。
幾度目かのフィッテングを試す、俺と歩夢と由香。そろそろ決めたいなと思っていた。
「あ、これだ!」
突如由香が歓喜にも似た、大きく透き通った甘い声が、店内にこだました。
「あ、あわ…ごめんなさい…。」
いや、良いんだよ由香、そんなに恥ずかしがって頬を染めなくても。中々の一苦労だったもんな。ただ珍しく由香にしては大きな声でびっくりしたけど。
「ねえ、由香ちゃん。良いの見つけたの?」
歩夢は由香の反応に苦笑いを浮かべながら聞いた。
「うん、凄く良いかも。」
由香がフィッティングしている白いクイックレースブーツ。インナーとソールから紫色のラインが見える。タンには小さなつまみ、シャフトにはブーツの色と同じ、白く細長いフックがかけられている。その下にはアルファベット筆記体でPEARLと書かれている紫の刺繍。かかとには四角くSと書かれたシンボルマークが浮き出ている。
由香の履いているブーツはSALOMONのブーツだ。PEARLというのはそのモデル名だ。
SALOMON。言わずと知れたスキーやスノーボードのビッグブランドだ。フランス・アルプス生まれで、スキーでは最も人気あるブランドとして親しまている。スノーボードでもBURTONに負けず劣らずの高品質とシャアを誇る。BURTONがアメリカを代表とするスノーボードブランドなら、SALOMONはヨーロッパを代表するスノーボードブランドと言って良いだろう。
「由香、どんな感じだ?履いてみて。」
俺も由香にフィーリングを訪ねてみる。
「なんかね、足を入れた瞬間、ぴたって包み込むように、フィットするの。今まで履いていたのは、微妙に余裕があり過ぎたり、キツかったりしたんだけど、それが無いの。」
由香が意気揚々と答えた。由香のとってはこのフィット感が衝撃的だったらしい。
「サロモンの一番の良い所だなそこは。インナーのライナー素材が優れているからな。人の足の形と体温に反応して、形を変えられる素材を使用しているんだ。」
由香が履き心地に感動している理由は正にこれだった。
「私、これにします。」
由香は万遍の笑みで購入を決めた。
「よーし、お買い上げありがとう御座いまーす!」
オーナーも由香に笑顔で返した。
「ユーキとあゆむんは、まだ決まらないの〜?」
俺と歩夢に様々なブーツを提案してくれている雅が飽きて来たようだ。どこかけだるそうで、しびれを切らしている。これがバイト中でアカの他人なら、根気強くお客様の動向を見守るだろうが、今はバイトが終了したプライベートタイムだ。そして「接客相手」は自分の部員でしかも後輩。そろそろ決めて欲しいとせがみたくなる気持ちが伝わって来る。
すると先生と一緒にボードやバインディングを眺めていた智香が、俺達に対して話しかけて来た。
「ねぇ、私 DEELUXEのサーモインナー使ってるんだけど、それはどうなの?」
それを聞いた瞬間、雅はハッとした。
「そうだ、それだよともちゃん!それがあるじゃん!ユーキ、あゆむん。良いのが見つからないなら、作っちゃおうよ!」
興奮気味に勧める雅、早く決めろよと言わんばかりだ。
DEELUXE。スノーボードのブーツ専門ブランドとしては、他の追随を許さない超人気ブランドだ。その人気の秘密は智香の言ったサーモインナーだ。直接足に触れるインナーブーツの内側を本人の足の形にぴったり合わせてしまう熱成型技術だ。
「足の形ぴったりに作れるの?」
歩夢は半信半疑だが、雅は強引に事を運ぶ。
「そだよ、マジ凄いよこれ。え〜と、ユーキは硬いのが良いんだよね、それじゃEMPIREね。あゆむんは柔らかいのが良いって言っていたから、ID 6.2かな。」
フィッティングを何度かするうちに、それぞれの硬さをリクエストしていたのもあってか、どれが俺達向きかと言うのをすぐ判断出来てしまう。雅はスタスタと俺達にそれぞれ、お勧めのモデルを棚から取り出し、ストンとベンチの前に置く。
「はい、試着試着〜!」
「雅ちゃん強引だな〜。」
歩夢は苦笑いしながら、黒くシューレースが白いタイプのブーツをフィッティングを始めた。歩夢どうか知らないが、カラーバランスは俺好みだ。
「まぁ、いい加減早く決めないとな。まだ板とウェアも決めていないし。」
俺は仕方ないと思いつつ、目の前に置かれたダークグレーのブーツをフィッテングをする。
何度か様々なブーツをフィッティングするうちに、クイックレースタイプのブーツの良さが身にしみて来る。ボアシステムの場合、部分的な調整が効かず、かかとが浮きやすい物が多かったが、クイックレースは足の甲と足首が別々にホールドされるので、融通が効く。
「雅ちゃん、これ全体的にちょっとキツい気がする。」
歩夢が指摘した通り、確かにややキツい印象がある。つま先は程よく余裕はあるが。
「あ、これで良いんだよ!熱成形する時に形が変わって空間広がるから。だから多少はね?痛いとかそう言うのは無い?」
「うん…痛くは無いかな。」
「2人とも決まりそう?」
既に購入するブーツを決めた由香が俺達の様子を見に来た。
「決まるよ。今から足の形を取って、ぴったりハマるようにするから!」
「お、神楽君と水上君はサーモインナーにするのか?それじゃ、型取りと成型の準備するから。」
オーナーも俺達の様子を見に来たと思ったら、さっそく熱成形の準備を始める。おいおい、なんか話がいつの間にかこのブーツで決まったと進んでいるぞ。まぁ散々迷ったんだ、これでも良いかもな。
オーナーは俺達にフィッテングした時の、細かなフィーリングを聞いて来た。成型前のフィッティングは、まだ形が変形する前なので、選ぶうえで、整合性が取れるかどうか確かめるためだ。俺達のブーツが本当に合っているか、このブーツに決めて成型に入っても良いかなどを。
俺も歩夢もこのブーツに決めた。いよいよ、インナー成型に入る。
先に俺がインナーブーツの成型を行い終了後、今度は歩夢のブーツが成形される。
俺はオーナーに、レジ横にあるミィーティングルームと書かれたドアのある部屋に案内された。部屋には、フィッテングのための椅子と、DEELUXEのロゴマークが描かれた、専用オーブンが用意されている。まるで家庭用電子レンジのような大きさと形だ。工具も様々な物が置いてある。オーナーはまず、俺が履く事になるインナーブーツに熱を入れるべく、オーブンに入れた。その直後、俺を椅子に座らせ、改めて足の採寸だ。縦と横、裸足での採寸と、ソックスを履いたときの採寸、そこから自分のサイズにぴったりのインソールを作成する。
オーブンで温められたインナーブーツ。オーナーは柔らかさや質感をチェックして、素早くインソールをインナーブーツの中に入れ、更にそのインナーブーツをアウターブーツに押し込んだ。
「それじゃ、神楽君だけのブーツ作るよ!冷めないうちに仕上げるぜ!」
オーナーは気合いとも取れる声をあげ、俺のズボンの裾を上げた。
「よし、履いて!」
俺は自分の足を素早くブーツの中にぶち込んだ。なんか熱い。
シューレースで素早く足を固定し、かかとをガンガン打ち付けて足をしっかりはめ込む。席を立ち軽く膝の運動をするなどして、ブーツに馴染ませた。
左右共に、同じ工程を繰り返し、両足履いて感触を確かめる。
だんだんブーツが自分の体に馴染んで行くのが分かる。つま先こそ若干の余裕を持たせているが、それ以外の足全体のほぼ全てが、包み込まれて行く。隙間が無いのに、全くキツくも無い。正に完全な自分専用のブーツが完成した。
「履き心地はどうだ?」
「最高です!」
初めて買ったブーツである、K2の初心者向けボアシステムブーツも決して悪くは無かった。
だが、それとは比べ物にならない。
履いた時の力強さと安心感が半端無い。
「良かった!これで神楽君のブーツは完了だ。次の準備をするから、水上君を呼んで来てくれるかな?」
オーナーは次に歩夢のブーツの成型準備を始めた。俺はミィーティングルームを出て、再びメインフロアに出る。何やら、雅と智香が、歩夢と由香にボードの解説をしているようだ。
「あ、友基君おかえり。ブーツ出来たの?」
由香が手を振りながら俺に顔を向けた。
「出来た。あれ良いわ!マジ凄い!」
俺はざっくりとした感想を述べたが、心のうちでは感激している。
「私も初めて履いたときは衝撃だった。カービングターンする時は、もっと実感出来るよ。」
智香の台詞でゲレンデに出た時の期待感がより一層高まる。
「歩夢、オーナー呼んでるよ。マジ凄く良いのが出来るから。」
「本当?それは楽しみだな〜!」
歩夢は期待に胸を膨らませながら、オーナーのいるミーティングルームに足を運んだ。
「ところで由香と歩夢、ボード選んでいたみたいだけど、決まったの?」
「歩夢君のは、まだなんだけど、私のは2つのうち、どれにしようかなって…」
「えっとね、ゆかちには、これかこれにしようかと思っているんだ。」
雅が由香におすすめする板を2つ取ってみせた。
表となるデッキは、白地に黄色、青、ピンク色のカラースプレーを吹きかけたような色合いの板だ。それらの色が混ざり合い、カラフルな色彩を表現している。青い鳥と、細い線で魔術の紋章のような線が描かれた図が特徴的だ。
ソールは青いスプレーをかけたようなグラデーションにSALOMONとピンク色のスプレーを吹きかけたようなロゴタイプが書かれている。
SALOMON LOTUS。SALOMON製スノーボードのビギナー向けレディースモデルだ。
もう一つは、デッキはエメラルドグリーンの背景に、オレンジ色の大きな花びらを模した模様だ。太陽の光が注いだイメージのグラデーションが、トロピカルな雰囲気を出している。真ん中にはサングラスのイラストが4つ描かれた、おおよそ雪山とはかけ離れたイメージのグラフィックだ。
ソールには水色が眩しい、珊瑚礁の海面をイメージしたイラストをバックに、紫色の細いサンセリフ体で立体文字に似せたロゴタイプでSALOMONと書かれている。
CRESCENT。こちらもLOTUSと同じSALOMON製の板だ。ブーツがSALOMONなので、板もそれに統一させようと言うのか。
「私は、キャンバーボードに乗って、しっかり基本的な乗り方を1から覚えた方が良いと思って、CRESCENTを勧めているんだけど…」
智香が淡々とした口調でCRESCENTに視線を送る。
キャンバーボード。スノーボードで最もスタンダードな形状だ。平らな面に置いた時に、ウエストが弧を描くように浮く形をしている。カービングターンなど、高速でターンする時に、エッジをしっかりと雪面に食い込ませ、スムーズで安定したターンを産み出す。また反りの部分は、高い反発力を産み出し、ジャンプする時に高く弾みを付け、着地も前後2つの接雪面を軸にして、衝撃吸収が優れている。雅が得意とするスロープスタイルやワンメイク。智香が得意とするテクニカル。どちらも優れた威力を発揮する。
「ただ私が思うに、キャンバーて逆エッジが恐いんだよね〜。」
雅が懸念する逆エッジ。体重が斜面下側に間違った状態でかかってしまうと、エッジが引っかかり、その反動で体が投げ出され、転倒してしまう。初心者が陥りやすい失敗のひとつだ。転倒した時の衝撃はマジで泣きたくなる痛さだ。
「だけど、ロッカーだと楽に覚えられるけど、間違って覚える可能性もあるあら、私はちょっとね。」
智香はロッカーボードに対して難色を示した。
ロッカーボードはキャンバーとは逆に、板が船底のように反り上がった形状だ。浮力が優れ、スライドターンやスピンも、力がいらずとも簡単に出来る。歩夢が中学の時に使っていた板は正にこれだ。
デメリットはカービングターンや高速での滑走は、反応が鈍りエッジがかみにくく、不安定にもなりやすい。また智香が言うように、楽にターンが出来ると言う事は、間違った姿勢や体重移動でも出来てしまい、体が変なクセを付けてしまう事だ。緩斜面で遊ぶだけなら、別にそれでも良いだろう。だが、これが中急斜や、更に大会や検定まで意識すると致命的だ。
「キャンバーだと、ゆかちにはいきなりハードル高いかもしれないんだよね。基本をマスターするのは大事だけど、まず楽しく滑れるようになって欲しいから。そうなると私はLOTUSの方が良いかなって。」
雅はLOTUSを勧めている。LOTUSのラベルを見るとロックアウトキャンバーと表示されている。
「けど、これロックアウトキャンバー書いているけど、普通のキャンバーじゃないの?」
俺は雅に聞いた。
「ロックアウトキャンバーて、普通のキャンバーとは違って台形になっているんだよね〜。そんで、体重を真っ直ぐかけるとフラットになるよ。」
雅は板を由香に置いて、両手で真っ直ぐ体重をかけた。
「こっちの方が板が柔らかいし、フラットになれば操作が楽になると思うんだよね。体重移動やプレスが出来れば、キャンバーでもロッカーでも行けるからさ。」
LOTUSは普通のキャンバーでもロッカーとも違う板のようだ。体重移動だけで、形が変わるならかなりの優れ物のように思えるが。
「ただ柔らかい板になると、スピード出せないし、安定性もどうなんだろう?私が思うスノ部としては、技術も上げたい所だし、由香も上手くなってレベルの高い滑りも期待してみたいから、多少ハードル高くてもCRESCENTにするべきだと思う。」
智香は意見を譲らなかった。智香からしてみれば、スノーボードはエンターテイメントというよりは、立派なスポーツとしての扱いだ。そう考えたら、まず遊んで楽しめるLOTUSよりは、例え難しくとも、スキル向上を目当てとしたCRESCENTの方が良いと言うのは頷ける。俺も今度の板選びはスキル向上のためにキャンバーを選ぶつもりだ。
だが、由香はまだ板に足を置いた事すら無い全くの素人だ。やはり、雅の言うように楽しいと思えるようになれる板を選ばせたい所だ。でなければ、技術もへったくれも無い。
しかしこれは由香の問題だ。俺達があーだこーだ言っても、由香が納得出来なければ意味が無い。
「由香はどっちが好みのタイプ?」
俺は由香の意見を聞いてみた。
「うん…絵柄はどっちも可愛いかなて思うし、楽しく滑りたいし、上手にもなりたいし、…分からない。どうしよう…。」
まぁ仕方ないだろう。俺もブーツ選び、ひたすら迷ったし、由香もいきなりどれが良いて言われても決められないよな。
「あ、あの、動画で見た事あるんだけど、平均台みたいなのに乗って滑るのはどっちが良いの?」
レールのことか。由香がパークに興味を示した。
「お、ゆかちパークやりたいの?」
「あ、いえ…。急斜面恐そうだから、平均台…えっとパーク?なだらかな所でも出来そうかなて思って…。」
確かに、ジブパークのアイテムなら緩斜面に設置している物がほとんどだし、急斜面が苦手な歩夢もそれは得意だ。
「なるほどね〜。それなら断然LOTUSだわ。さっきも言ったように、これフラットにもなるじゃん。ボックスとかならそっちの方が安定するし、スピンもしやすいよ。もちろんレールに乗るのもね。」
雅が自慢げに解説する。ボックスとかレールとかの違いは、今の由香にはまだ分からなさそうだが、大分興味を示している。
智香は少しばかり複雑な表情を浮かべた。
「でも、キャンバーでも充分パーク出来そうだけど…それにスピードを出すとなると…」
「ともちゃん、ゆかちはまだ未経験だよ〜?!まず、普通に滑れるようにならないと。取りあえずスピード出すのは二の次で良いんじゃない〜?」
雅は智香の意見を論破した。智香は少しばかり悔しそうな表情を浮かべたが、それもそうかと納得した。どうやら答えは決まったようだ。
「うん、それじゃLOTUSにする。」
決まりだ。
バインディングは既に決めているようで、ピンクのRHYTHMというSALOMONの初心者向けのバインディングだ。大きめで肉抜きされたハイバックが、足の伝達に力強いサポートをしてくれそうだ。
由香のギア3点はすべてSALOMONで統一された。
「んじゃ、次はユーキの板かな?」
「友基はどんな板が良いの?」
「俺はキャンバーにしようかと思っている。今持っているの、K2のSTANDARDなんだけど、あれはフラットロッカーだから。」
フラットロッカーはテールとノーズにロッカー、つまり反りを入れた物で、足元は前から後ろまで全て平だ。安定性はあるが、反発力はあまりない。
「ユーキと初めて会った時に履いていた板だよね?その板でよくあんなスピード出せたよね。まぁ私が何度も追い越していたんだけどさ〜。」
雅は俺の履いていた板の事もちゃんと覚えていてくれたらしい。そして俺自身、やはりスピードを出していたのか。追い越されまくって実感沸かないけど。
ともあれ俺の候補はスピードが出せるキャンバーボードだ。
「ユーキにおすすめのキャンバーはね、BURTON Customかな〜。」
雅は由香が購入を決めたLOTUSをレジの横に置き、CRESCENTをSLOMONと書かれたポップが掲示されているスタンドに戻した。そして、BURTONと書かれたポップのあるスタンドから、木目調のカラフルな色彩をまとった板を取り出して来た。
「私、これのレディース版になるFeelgoodに乗ってるんだけど、スピードも出せるし、キレもあるから、ユーキにぴったりだと思うよ〜。」
BURTON Custom。BURTONのベストセラーモデルだ。数々のプロライダーが愛用し、実績を上げた世界王者のような地位に上り詰めた板だ。日本でも当時15歳で、ハーフパイプのオリンピックメダリストになった選手が、この板を使用していたこともあり、注目が集まったモデルでもある。
「でもこれって、どっちかと言うとトリック向けじゃない?スピード出すなら、私が使っている板と同じモデルはどう?」
「ともちゃん、そう言えば何に乗ってるの?」
「OGASAKAのFC」
今度は智香が勧めた板を雅は持って来る。
「ともちゃんが使っている板、これか。」
雅は今度はOGSAKAと書かれているポップの所からその板を取り出す。
黒をベースにして、真ん中にはダイヤモンドが光ったような白と青の光が輝いたイメージのコントラスト。
ノーズには小さくFCとタイプされ、テールにはOGASAKAのシンボルマークがさりげなく描かれている。ソールはノーズ部分こそデッキと同じくダイヤの光がほどこされ、シンボルマークが浮き上がっているが、それ以外は真っ黒だ。
OGASAKAは日本製スノーボードを代表する国産ブランドだ。テクニカルやレース競技に強いボードの制作を得意としていて、智香が持っていると言うこのFCは、その代表モデルだ。智香のようなテクニカル競技を行うボーダーに人気のモデルでもある。
CustomもFCも、どちらも捨てがたい魅力あるモデルだ。だけど、俺は他のもいくつかは気になっている。
「雅も智香も、自分の板が1番て言いたそうだな。やっぱりそれぞれ気に入っているんだな、自分の板。」
「そら、勿論そうでしょ!」
「…まぁ…ね。」
雅は当然と言わんばかりのドヤ顔を向け、智香は照れ隠しをして顔を背けた。
2人が俺に勧めてくれる理由も分かるし、そうやって俺の板選びに付き合ってくれているのは当然嬉しいし、楽しい。
ただ、俺も実のところ気になっていた板があった。
筆者のブーツはサロモンなので、モデルは違えど、由香の感想は自分の感想でもあります。ただし、ディーラックスは履いた事が無いので、友基が持った印象は実物と相違が無いか分かりませんm(__)m